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相続人を確定する方法とは?法定相続人の調査手順を弁護士が解説

 

相続人を確定する方法とは?法定相続人の調査手順を弁護士が解説

相続手続きを進める際は、まず「誰が相続人になるのか」を正確に確定することが必要です。相続人の確認が不十分なまま遺産分割協議を進めると、後から別の相続人が判明し、協議をやり直さなければならない場合もあります。

相続人を確定するには、被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどり、法定相続人を調査することが重要です。この記事では、相続人を確定する方法や戸籍調査の流れ、弁護士など専門家に相談するメリットについて解説します。

相続人確定とは?手続き前に必要な理由

亡くなった方(被相続人)の戸籍を調査し、誰が相続人になるのかを確認・確定する作業が「相続人確定」です。銀行口座の解約や不動産の相続登記など、多くの相続手続きで避けて通れない、最初の作業となります。なぜ手続きをする前にこの作業が必要なのか、具体的な理由を整理して確認していきましょう。

銀行や法務局で戸籍一式が必要になる理由

銀行口座の解約や不動産の相続登記を行う際は、手続きをする人が「本当に相続人なのか」を証明する必要があります。そのため、亡くなったことが分かる戸籍を1通出すだけでは不十分なことが多く、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍一式を求められるのが一般的です。

戸籍をたどることで、次のような相続人がいないか、確認できます。

このように、相続人を見落とさないためには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を確認することが大切です。

相続人が確定しないと遺産分割協議を進められない

遺産分割協議は、法律上、相続人全員の参加と合意が必要です。万が一、一部の相続人を欠いた状態で話し合いを進めても、その遺産分割協議は無効になる可能性が高いです。途中で新たな相続人が判明した場合、一から話し合いをやり直さなければならない、というリスクがあります。

戸籍調査が不十分な場合に見落としやすい相続人とは、親族も存在を知らされていない別の家庭との間に生まれた子や、生前に認知していた子、本来の相続人である子がすでに亡くなっており権利を引き継いだ孫(代襲相続人)などです。

遺産分割協議が無効になると、協議の長期化による精神的負担が増えるだけでなく、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに分割がまとまらない可能性もあります。未分割でも相続税申告は必要であり、状況によっては一部の特例が使えないこともあるため、話し合いを始める前に戸籍調査で相続人を確定させることが、後々のトラブルを防ぐ土台になります。

相続関係説明図を作ると手続きの全体像が分かる

集めた戸籍情報を基に「誰が・どのように相続に関わるか」を一つの図にまとめることで、手続きの全体像が明確になります。相続関係説明図とは、亡くなった方と相続人の関係性を家系図のように整理した一覧表のことです。戸籍収集のゴールを視覚的に確認できるため、複雑な関係性でも漏れや間違いに気付きやすくなります。

また、作成した相続関係説明図は、法務局での相続登記時に提出して戸籍原本の還付(返却)を受けたり、銀行窓口での預金解約時に相続関係をスムーズに伝えたりする場面で役立ちます。なお、相続手続きでは、法務局で発行される「法定相続情報一覧図の写し」を利用できる場合もあります。

完成イメージとしては、亡くなった方を中心に配偶者や子を線で結び、それぞれの生年月日や続柄などを記載します。戸籍をすべて集め終わったら、まずはこの図を作成して情報を整理することをおすすめします。

法定相続人の範囲と順位を確認する基本ルール

戸籍調査を始める前に、まずは誰が「法定相続人」になる可能性があるのか、基本ルールを理解しておくことが重要です。法定相続人とは、民法で定められた「相続人となる人」を指します。配偶者とその他の親族ではルールが異なるため、誰がどの立場で相続権を持つのかを正確に把握しておきましょう。

配偶者は常に相続人になる

被相続人に配偶者がいる場合、その配偶者は常に法定相続人となります。遺産分割において配偶者の立場は重要であり、他の親族の有無にかかわらず相続人になります。ただし、相続人として認められるためには、戸籍上の婚姻関係があることが必要です。

婚姻届を提出していない事実婚のパートナーや、長年生活を共にしていた内縁関係の相手、すでに離婚が成立している元配偶者は、どんなに生前の関係が深くても法定相続人には含まれません。逆に、長期間別居状態であっても、戸籍上で夫婦であれば法的な相続人として扱われます。死亡時点の戸籍謄本を取得し、法的な婚姻関係の有無を正確に確認することが不可欠です。

子・親・兄弟姉妹の順番で相続人が決まる

配偶者以外の親族については、民法によって相続できる順位が明確に定められています。上の順位に該当する人が1人でもいる場合、下の順位の人には原則として相続権が発生しません。

たとえば、被相続人に妻と子がいる場合、法定相続人は「妻と子」です。この事例では、先順位の子がいるため、被相続人の親や兄弟姉妹は遺産分割協議に参加しません。離婚した前妻との間に生まれた子も、現在の家族構成にかかわらず第1順位の相続人となります。

代襲相続がある場合は孫や甥姪も相続人になる

相続開始時点で、本来相続人となるはずだった親族がすでに死亡しているケースもあります。この場合、その方の子などが代わりに相続人になります。この仕組みを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」と呼び、相続人を確定するうえで非常に重要です。

第1順位の子が死亡している場合は被相続人の孫が、第3順位の兄弟姉妹が死亡している場合は被相続人の甥や姪が代わりに相続人となります。ただし、兄弟姉妹についての代襲相続は甥姪までで、甥姪の子には原則として再代襲しません。

代襲相続が発生すると、亡くなっている本来の相続人の「出生から死亡までの戸籍謄本等」が追加で必要になるため、戸籍調査の難易度が上がります。さらに、代襲相続人(孫や甥姪など)の「現在の戸籍謄本」も漏れなく集めなければなりません。

戸籍調査で相続人を確定する手順

相続人を漏れなく確定するためには、正しい順番で戸籍を集める必要があります。まずは被相続人の死亡時の戸籍を取得し、出生時まで順にさかのぼって確認する流れを押さえておきましょう。

まず死亡時の戸籍から取得する

戸籍調査は、被相続人の死亡記載がある戸籍から始めるのが一般的です。死亡時の本籍地がある市区町村役場で「戸籍謄本」や「除籍謄本」を取得します。取得の際は、相続手続きに使うため、死亡記載のある戸籍が必要である旨を伝えるとよいでしょう。

死亡時の本籍地が分からない場合は、被相続人の「住民票の除票(本籍地入り)」を取得したり、親族が保管している古い戸籍謄本を確認したりして、本籍地を調べます。死亡の事実と本籍地が判明すれば、過去の戸籍へさかのぼるための出発点を確認できます。

被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める

死亡時の戸籍を取得したら、次に出生時まで途切れることなく連続してさかのぼります。過去へさかのぼるためには「除籍謄本」や「改製原戸籍(法改正などで作り直される前の古い戸籍)」を順にたどる必要があります。これらの古い戸籍を読み解き、以下の記載から相続人候補を漏れなく洗い出しましょう。

現在の戸籍の「従前戸籍」欄などを確認し、そこに記載された本籍地の役所へ順次請求を繰り返します。

相続人全員の現在戸籍を確認する

被相続人の出生から死亡までの戸籍が揃ったら、次は相続人側の調査に移ります。判明した法定相続人が現在も生存しているか、相続開始時点で相続人としての資格があったかを確認しなければなりません。これらの事実を客観的に証明するために、相続人全員の「現在戸籍」を取得します。

相続手続きでは、被相続人の死亡日より後に発行された戸籍謄本を用意し、すでに死亡している相続人がいる場合は代襲相続人の有無を確認します。相続放棄をした人がいても戸籍には記載されないため、必要に応じて家庭裁判所への照会や申述受理証明書の確認を行います。相続人の現在戸籍が揃うことで、誰が遺産分割協議に参加すべきかを確認できます。

本籍地が遠い場合は郵送請求を活用する

本籍地の市区町村役場が遠方にある場合は、郵送で戸籍を請求できます。転籍を繰り返している被相続人の場合、複数の役所へ郵送請求を行うこともあります。郵送請求時に一般的に必要となる書類と準備物を以下の表に整理しました。

必要書類

概要と準備方法

戸籍謄本等の交付請求書

各市区町村のホームページから指定の用紙をダウンロードして記入する。

本人確認書類のコピー

請求者の運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書の写しを用意する。

手数料(定額小為替)

郵便局で購入する。一般的に戸籍謄本は450円、除籍・改製原戸籍は750円。

返信用封筒

請求者の現住所と氏名を宛名として記入し、必要な金額の切手を貼っておく。

相続関係が分かる戸籍

請求者と被相続人の関係を証明するため、取得済みの戸籍のコピーを同封する。

役所によっては独自のルールを設け、追加の資料を求められるケースもあります。発送前に、該当する市区町村役場のホームページで最新の手続き方法を確認してください。

広域交付制度の使い方と注意点

2024年に開始された「戸籍証明書等の広域交付制度」は、相続手続きにおける戸籍収集の負担を軽減できる便利な仕組みです。しかし、すべての戸籍が無条件で揃うわけではなく、制度特有の制限もあります。郵送請求との正しい使い分けを理解しておくことが大切です。

最寄りの市区町村窓口で戸籍を取得できる

本籍地がどこにあっても、最寄りの市区町村窓口で戸籍謄本などを取得できる仕組みが、2024年3月から始まった「戸籍証明書等の広域交付制度」です。被相続人の戸籍が複数の本籍地にまたがる場合でも、1か所の窓口でまとめて請求できる点が大きなメリットです。

本籍地が遠方にある場合でも、現地へ行く交通費や郵送にかかる日数を省ける可能性があります。複数の本籍地にまたがる戸籍であっても、広域交付で取得できる範囲であれば一か所の窓口で効率よく集められるため、相続人確定の手続きを始める際に活用したい方法です。窓口へ行く前に、必要な本人確認書類や手数料などを各市区町村の公式ページで確認しておきましょう。

兄弟姉妹や甥姪の戸籍は取得できない場合がある

広域交付制度を利用して戸籍を請求できる親族の範囲は法律で定められており、窓口で請求できるのは、本人、配偶者、直系尊属(父母・祖父母)、直系卑属(子・孫)です。そのため、被相続人の兄弟姉妹や甥姪、おじ・おばなどの戸籍は、原則として広域交付では取得できません。

子がいない被相続人の場合や、兄弟姉妹の代襲相続が問題になる場合には、兄弟姉妹や甥姪の戸籍が必要になることがあります。このようなケースでは、従来どおり該当する本籍地の役場へ直接請求するか、郵送請求を行う必要があります。対象外の戸籍が多い場合、窓口へ行っても相続人確定の調査が完結しないことがあるため注意が必要です。

郵送請求や代理人請求では利用できない

広域交付制度を利用するには、請求できる本人が市区町村の戸籍担当窓口へ直接出向く必要があります。郵送による広域交付の請求は認められておらず、委任状を持参した代理人による請求もできません。

平日の日中に役場の窓口へ行く時間が取れない人にとっては、制度を利用しにくい点がネックとなるでしょう。また、複数の戸籍をさかのぼって確認する場合は、窓口での待ち時間が長くなったり、後日交付となったりすることもあります。平日の来庁が難しい場合や、広域交付の対象外となる戸籍が多い場合は、従来の郵送請求を中心に進めるか、専門家への手続き代行依頼を検討してみてください。

古い戸籍や一部の除籍は対象外になることがある

広域交付制度で取得できるのは、主にコンピュータ化された戸籍証明書等です。コンピュータ化されていない一部の戸籍や除籍については、広域交付の対象外となり、窓口で発行できない場合があります。

明治や大正時代から続く古い相続の調査では、対象外の戸籍が含まれる可能性があります。また、住所変更の履歴がわかる「戸籍の附票」や身分証明書も、広域交付制度の対象外です。広域交付で取得できなかった古い戸籍については、最終的に該当する本籍地の役場へ個別に請求する必要があります。

古い戸籍の読み解き方と見落としやすいポイント

古い戸籍を正確に読み解くことは、相続人を確定するうえで非常に重要です。ここでは、改製原戸籍や除籍謄本といった古い戸籍の読み解き方と、見落としやすいポイントについて解説します。

改製原戸籍や除籍謄本が必要になる理由

過去の身分関係を漏れなく確認するためには、現在の戸籍だけでなく「改製原戸籍(戸籍の様式変更などで作り直される前の古い戸籍)」や「除籍謄本(誰も在籍しなくなった戸籍)」が必要になるのが一般的です。新しい戸籍が編成される際、過去の離婚や認知などの履歴がすべて引き継がれるとは限らないからです。

現在の戸籍には、離婚した元配偶者との婚姻歴や、前婚の際に生まれ別戸籍となった子どもの存在、過去に行った養子縁組、認知の記録などが記載されていないことがあります。これらの古い戸籍を取得して出生時まで遡ることで、被相続人の身分関係をより正確に把握できます。

転籍・婚姻・養子縁組・認知の記載を確認する

古い戸籍を読み解く際は、身分関係の変動を示す「転籍・婚姻・養子縁組・認知」の記載を確認することが重要です。これらの記載を見落とすと、本来の相続人が漏れてしまい、その後の遺産分割協議に影響が出るおそれがあるからです。

別の自治体へ本籍を移した「転籍」の記録は前の本籍地を追う手がかりとなり、結婚や離婚の履歴からは前配偶者との間に子どもがいないかを確認できます。特に「認知」や「前婚の子ども」は、家族も知らなかった事実として後から判明するケースがあります。相続人の範囲が大きく変わる可能性があるため、戸籍の記載内容は一行ずつ丁寧に読み進めてください。

家督相続や隠居など古い戸籍特有の記載に注意する

明治から昭和初期にかけて作られた古い戸籍には、「家督相続」や「隠居」といった現在とは異なる制度の記載が含まれることがあります。当時の民法に基づく旧法制度下の戸籍であるため、現代の感覚だけで読み解くと親族関係を誤認しやすいでしょう。

家督相続は戸主の地位や財産を長男などが承継する制度であり、隠居は生前に戸主の地位を次の世代へ譲ることを指します。これらの制度により、戸主が死亡していなくても新しい戸籍が編成されることがあります。戸籍の切り替わりが複雑になるため、前後の戸籍を照らし合わせて同一人物であるかどうかを確認することが必要です。

読めない戸籍は役所や専門家に確認する

古い戸籍で解読できない文字や地名が出てきた場合は、自己判断せず役所や専門家に確認してください。少しの読み間違いや読み飛ばしが、重大な相続人漏れにつながる可能性があるからです。

手書き文字の書き癖が強かったり、現代では使われていない旧字体や異体字が使われていたり、市町村合併で旧地名が現在の地名と一致しなかったりすることがあります。読めない箇所がある場合は、発行元の市区町村役場の戸籍担当窓口へ問い合わせて記載内容を確認するか、不動産の相続登記と併せて司法書士へ相談することをおすすめします。

相続人確定の不備が招くトラブル

相続人の調査に漏れがあると、遺産に関する多くの手続きに支障が出る原因となります。ここでは、戸籍調査の不備が引き起こす具体的なトラブルやリスクについて詳しく解説しましょう。

相続人を欠いた遺産分割協議は無効になる可能性がある

遺産分割協議は、相続人全員の参加と合意が必要です。そのため、1人でも相続人が欠けた状態で進めた遺産分割協議は、原則として無効になる可能性があります。前妻や前夫との間に子どもがいたことや、亡くなったと聞いていた兄弟姉妹に代襲相続人が存在したことなどが後から判明した場合、すでに合意した協議内容を見直し、話し合いをやり直す必要が生じます。

その上で、面識のない相続人に事情を説明し、一から遺産分割協議をやり直すことになれば、話し合いが長期化するリスクが高まります。無用なトラブルを防ぐためにも、協議を行う前の正確な戸籍調査による相続人確定が欠かせません。

預貯金解約や不動産登記の手続きが止まる

相続人が確定しない限り、金融機関での預貯金解約や法務局での不動産登記手続きは進めにくくなります。銀行や法務局は、提出された戸籍一式から「他に相続人がいないか」を確認する必要があるからです。被相続人の出生から死亡までの戸籍のつながりに途切れている期間があったり、転籍前の除籍謄本や改製原戸籍が抜け落ちていたりすると、窓口で不備を指摘されることがあります。

不足している戸籍を特定し、再度集め直すために遠方の役場への郵送請求が重なると、数週間から数か月のタイムロスが生じるかもしれません。預貯金が引き出せず葬儀費用や生活費の支払いに困ったり、不動産の売却予定に影響が出たりする恐れもあります。

相続税申告や期限付き手続きに影響する

相続人調査の遅れは、期限が決められている税制面や法的な手続きにも影響します。法定相続人の正確な人数が確定しないと、税額計算や手続きの判断が難しくなるためです。相続放棄の申述は原則として自己のために相続があったことを知った時から3か月以内、相続税の申告と納付は相続開始を知った日の翌日から10か月以内とされており、期限付きの手続きに遅れが生じる可能性があります。

特に相続税の計算においては、法定相続人の人数が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)に関係するため注意が必要です。戸籍調査の漏れで相続人の人数が変われば、基礎控除額にも影響します。期限間近で慌てないよう、相続発生後は速やかに戸籍収集に着手することが重要です。

相続税が発生する可能性がある場合は、必要に応じて税理士にご相談されることをおすすめします。

相続登記と戸籍調査の期限目安

相続登記には期限があり、戸籍調査にも一定の時間がかかります。ここでは、相続登記の期限と、期限に間に合わない場合の対処法について解説します。

相続登記は不動産取得を知った日から3年以内に申請が必要

不動産を相続した場合、法務局での相続登記(名義変更)の手続きが必要です。法律の改正により、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続によって不動産を取得した相続人は、相続開始を知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。過去の相続で登記が未了の場合も、義務化の対象に含まれます。

正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になる可能性があるため注意が必要です。手続きを放置すると過料のリスクだけでなく、次の相続が発生して権利関係が複雑化する恐れもあります。戸籍の収集や遺産分割協議には時間がかかるため、早めの準備と対策が重要です。

戸籍収集には1〜3か月以上かかることがある

相続登記を期限内に終えるには、手続き全体のスケジュールを把握しておくことが大切です。中でも特に時間と手間がかかるのが、相続人を確定するための戸籍収集です。戸籍収集にかかる期間は、転籍の回数や相続人の人数によって大きく変動します。

本籍地の移動が少ないシンプルなケースでも1か月程度、転籍が多く郵送請求が必要なケースでは2〜3か月程度、代襲相続が発生して調査範囲が広いケースでは3か月以上かかることもあります。古い戸籍を読み解きながら出生まで遡る作業は想像以上に時間がかかるため、登記の申請期限から逆算し、ゆとりを持って最初の戸籍請求を始めましょう。

期限に間に合わない場合は相続人申告登記も検討する

どうしても3年の期限内に相続登記が終わらない場合は、法務局へ「相続人申告登記」を行うことも検討しましょう。遺産分割協議がまとまらない場合や、戸籍の収集に想定以上の時間がかかり期限が目前に迫っている場合に利用できる制度です。

この申告を行えば、ひとまず相続登記の申請義務を履行したものとして扱われます。申出をする本人が「登記名義人の相続人であること」を申し出る手続きであり、通常の相続登記に比べて簡単に利用できます。ただし、これは正式な名義変更とは異なる措置です。遺産分割が成立した場合には、その内容に基づく相続登記が改めて必要になる点に注意してください。

弁護士・司法書士に依頼するメリットと費用の目安

戸籍収集は複雑で時間のかかる作業です。ここでは、専門家に依頼するメリットと費用目安について解説します。

自分で戸籍収集できるケースと難しいケース

戸籍収集は、状況によって自力で進められる場合と、専門家のサポートが必要な場合に分かれます。配偶者と子のみなど法定相続人の人数が少なく関係性が明確なケースや、広域交付制度を利用して最寄りの窓口で戸籍を取得しやすい状況であれば、自力で進めやすいでしょう。

一方で、兄弟姉妹や甥姪が相続人となるケースや、代襲相続が発生しているケース、転籍が複数回あり郵送請求を繰り返す必要がある状況では、手続きが複雑になることが予想されます。明治や大正時代の古い戸籍が含まれ手書きの旧字体が読めない場合や、不動産の相続登記が控えている場合も、早い段階で専門家のサポートを検討することが大切です。

司法書士・弁護士に依頼すると戸籍収集から書類作成まで任せられる

複雑な戸籍収集に不安がある場合は、司法書士や弁護士に依頼することで、相続手続きを進めやすくなるはずです。職務上の請求により必要な戸籍を収集できるだけでなく、古い戸籍の内容を読み解き、相続人の見落としを防ぐこともできます。また、銀行や法務局への提出に必要な「相続関係説明図」の作成も依頼できます。

一般的な費用目安としては、相続人調査・戸籍収集・図作成で4万〜8万円程度、相続登記手続き一式で6万〜10万円程です。費用は、取得する戸籍の通数、不動産の数、遺産分割協議書の作成有無などによって変動するため、事前に見積もりを取ると安心です。

不動産登記や相続トラブルがある場合は早めに相談する

相続財産に土地や建物などの不動産が含まれる場合は、相続登記を扱う司法書士への相談をおすすめします。2024年4月から相続登記が義務化され、不動産の取得を知った日から3年以内の申請が必要になりました。戸籍収集の段階から相談しておくことで、必要書類の不足や手続きの遅れを防ぎやすくなります。

一方で、相続人同士で意見が対立している場合や、遺産分割協議がまとまらない場合は、弁護士への相談が適しています。不動産登記の有無だけでなく、相続人間のトラブルの有無も踏まえて、相談先を選びましょう。

まとめ

相続手続きを進める際は、まず「誰が相続人になるのか」を正確に確定する必要があります。相続人が一人でも漏れていると、遺産分割協議が無効になる可能性があり、銀行口座の解約や不動産の相続登記などの手続きにも支障が出るかもしれません。

相続人を確定するには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集め、婚姻・離婚・養子縁組・認知・転籍などの記録を確認します。これにより、前婚の子や認知した子、代襲相続人など、家族が把握していなかった相続人がいないかを調査することができます。

法定相続人は、配偶者が常に相続人となり、配偶者以外は子、親などの直系尊属、兄弟姉妹の順に決まります。ただし、子がすでに亡くなっている場合は孫が、兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥姪が相続人になることもあります。

戸籍調査は自分で進めることもできますが、古い戸籍の読み解きや本籍地への郵送請求が必要になると、時間と手間がかかります。相続人同士で意見が対立している場合や、遺産分割協議が進まない場合は、弁護士に相談することで、相続人調査から今後の対応までスムーズに進めることができるかもしれません。

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この記事の執筆者

弁護士 伴 広樹

経歴

神奈川県厚木市出身。1997年司法試験合格後、2000年に司法修習を修了(52期)し、弁護士登録。横浜市内の法律事務所に勤務後、2004年に伴法律事務所を開設。年間280件の相続の法律相談に対応している。
弁護士業務では①お客様の期待に沿う徹底した調査,②お客様が納得できる提案力,③お客様が安心して任せられる確実かつ迅速な処理の3つを心がけており、実際に業務に対しての評価も高い。

活動・公務など

・神奈川大学非常勤講師(2009年9月~2016年3月)
・明治大学リバティアカデミー(市民講座)講師(2015年~2016年)
・横浜弁護士会(現神奈川県弁護士会)常議員(2009年4月~2010年3月)
・一般社団法人神奈川健康生きがいづくりアドバイザー協議会神奈川健生成年後見センター運営委員会委員(2015年8月~)
・セミナー講師としての活動 川崎市役所,東京地方税理士会保土ヶ谷支部,神奈川県宅地建物取引業協会横浜中央支部,神奈川青年司法書士協議会など各種団体におけるセミナー講師を担当

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