預金を使い込まれてしまった方へ

1 生前の預金使い込み

 
被相続人の生前に、被相続人の近くにいた相続人が、無断で預金を引き出してしまうことはよくあることです。
 
高齢の親が施設に入所している場合や自宅で生活していても判断能力が低下してきた場合など、本人による金銭の管理が難しくなってきたとき、子供の一人が親に代わって預貯金を管理するということは珍しくありません。
 
金銭の管理を任された子が、親のためだけに金銭使っていればよいのですが、時には無断で金銭を消費したり、着服して金銭を隠してしまうケースがあります。
 
このような不正な金銭の引き出しは窃盗や横領にあたる場合もあり、警察に相談なさる方も多いのですが、家族間の問題であることや、親子間の窃盗や横領は刑が免除されることになっているので(刑法244条、刑法255条など)、なかなか警察は捜査をしないのが実情です。
 
そこで、使い込みをされてしまった他の相続人は、使い込みをした相続人に対し、不当に引き出された金銭の返還を請求していくことになります。
 
子(相続人)による親(被相続人)の金銭の使い込みがあった場合、親は、使い込みをした子に対して、金銭の返還請求権(「不当利得返還請求権」または「不法行為に基づく損害賠償請求権」、以下では「不当利得返還請求権」として説明します)を持つことになり、親(被相続人)が亡くなることでこの不当利得返還請求権が法定相続分に従って、相続人に承継されます。 
 
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上の図で説明すると、長男が預金の使い込みをした時点で、母は長男に対する不当利得返還請求権を持つことになり、母が亡くなり相続が開始すると、この不当利得返還請求権が長女と次男に法定相続分の割合で承継されることになります。
 
そこで、長女と次男は、それぞれ長男に対し、金銭請求をしていくことになります。
 
この金銭返還請求権(不当利得返還請求権)については、他の財産の遺産分割協議と一緒に話し合いで解決することがあります。
 
しかし、長男が預金の使い込みを否定して話し合いに応じず、遺産分割調停の中で解決することも拒絶する場合、長女と次男は民事訴訟を起こして、長男に対して金銭返還請求をすることになります。そして、この民事訴訟は、他の財産について行われる家庭裁判所での遺産分割調停とは別に、地方裁判所(訴額が一定額以下の場合は簡易裁判所)で行わなければなりません。

 
 

2 死後の預金の引き出し

 
相続人の一人が被相続人の死後に、勝手に預金から金銭を引き出すケースもよくあります。
被相続人が死亡すれば、被相続人の預金口座は凍結されるのが原則ですが、金融機関が死亡の事実を知る前に、相続人の一人がキャッシュカードなどで金銭を引き出してしまうことがあります。
 
被相続人の預金は、被相続人が死亡したあとは、たとえ名義は被相続人のままであったとしても、法律上は共同相続人が共有(債権なので正確には「準共有」といいます)していることになります。したがって、共同相続人の共有財産(被相続人名義の預金)を、一人の相続人が勝手に引き出して、他の共同相続人の権利を侵害すれば、他の共同相続人は、引き出した相続人に対し、自己の権利が侵害された限度で不当利得返還請求権を取得することになります。
 
従来はこの不当利得返還請求は、引き出した者が遺産分割調停の中で解決することを拒絶する場合、家庭裁判所で行う遺産分割調停とは別に、地方裁判所(訴額が一定額以下の場合は簡易裁判所)で民事訴訟を行う必要がありました。
 
しかし2018年に民法が改正され(2019年7月1日以後に亡くなったケースに適用)、預金を引き出した者以外の相続人全員の同意があれば、死後に引き出された預金(生前に引き出された預金は対象外です)を遺産に組み戻し、遺産分割調停において手続することができるようになりました。
 
 

3 不正出金された金銭を取り戻す方法

 
預金の不正出金があった場合、出金者に対し金銭請求をするためには以下の事項の全部または一部を行う必要があります。
 
 ①預金の入出金記録の金融機関からの取り寄せ、分析、集計
 
 ②出金時に金融機関窓口で記入した払戻請求書のコピーの取り寄せと筆跡の検討
 
 ③預金が引き出された当時の被相続人の心身の状況を証明する資料の取り寄せ、分析(医療記録、介護記録、介護認定調査票など)
 
 ④状況に応じて相手の不動産や預金などの財産への仮差押え
 
 ⑤交渉
 
 ⑥適切なタイミングでの民事訴訟の提起(または調停申立)
 
 ⑦勝訴判決(または審判)を得たあとの強制執行の申立
 
上記を適切に遂行するためには、民法についての知識だけでなく、類似の事例の裁判例の実情を把握し、かつ、財産保全・民事訴訟・強制執行等の各手続への専門的知識が必要です。
 
よく被害に遭われた方が誤解をしてしまいがちなのが、通帳やカードを管理していた相続人が、出金した金銭の使途を証明できない部分について、不当利得返還請求が可能だと考えてしまうことです。しかし実際には立証責任が逆で、被告が預金を自分のために消費したか、あるいは自分の財産に取り込んでしまったことを、原告の側で証明しなければなりません。したがって、預金口座を管理していた者は全ての使途を逐一証明することまでは要求されないのです。 
そのため、引き出された金銭が、被相続人の生活費やその他の使途に消費された可能性が十分にあると裁判官が判断した場合、使途の詳細まではっきりしなくても、敗訴してしまうことがあります。
使い込まれてしまった預金を取り戻すには、単に、相手によって金銭が引き出されたことを立証するだけでは不十分で、それが相手に消費され、または、相手の財産に取り込まれていることを証明する必要があるのです。
 
 

4 当事務所のサービス

 

(1) 交渉段階での活動

 
 当事務所がお客様に代わって引き出された預金を取り戻すための資料収集、分析、相手との交渉、法的手続などを行います。
 
 当事務所はこれまでに不正出金に関する訴訟を数多く受任しています。そのため、裁判例の傾向、裁判官の思考方法などをよく理解しています。そして、裁判になった場合の結果を念頭に置きつつ、証拠収集と主張書面の作成行い、これを相手に提示することで言い逃れのできない状況をつくるように交渉します。
 
 これがうまくいくと、法的手続までしなくても、交渉だけで解決することができます。
 当事務所で依頼を受けた案件の中には、半年程度の交渉で約2000万円の引出金の返還を受けたケースや、4か月程度の交渉で約1000万円の引出金の返還を受けをケースがあります。
 
 

(2) 法的手続になった場合の活動

 
 法的手続に発展する案件では、的確な時期に的確な内容の主張書面や証拠を裁判所に提出し、手続がお客様に有利に進むように活動を行います。法的手続を弁護士に依頼なさる場合、原則としてお客様は裁判所の手続に出席する必要がありません(証人尋問をするときなど、出席が必要な場合もあります)。
 
 

(3) 金銭回収に向けた活動

 
  裁判手続に馴染みのない方にとっては理解しがたいことなのですが、勝訴判決を取得しても、相手がその通りに支払うという保証はありません。相手が支払わなくても、処罰する法律がないのです。
 
 ただ、勝訴判決を取得した場合、相手の財産に対する強制執行をすることができます。しかし、強制執行は万能な手続でなく、財産を隠されてしまうと、強制執行をしても空振りになってしまい金銭の支払いを受けられないことがあります。
 
 当事務所ではそのような可能性を極力減少させるため、訴訟手続の前に、相手の財産を保全するための仮差押え手続などを積極的に行っています。また交渉や法的手続を進めるうえで、常に、相手のどのような財産からどのように金銭を回収するのか戦略を練って活動しています。お客様には、単に勝訴の見込みをお話しするだけでなく、金銭回収の可能性の見込みについてもあわせてご説明のうえ方針を決めるようにしています。
 
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この記事の執筆者

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弁護士 伴 広樹

経歴

神奈川県厚木市出身。1997年司法試験合格後、2000年に司法修習を修了(52期)し、弁護士登録。横浜市内の法律事務所に勤務後、2004年に伴法律事務所を開設。年間170件の相続の法律相談に対応しており、相続問題の解決実績も200件を超える。
弁護士業務では①お客様の期待に沿う徹底した調査,②お客様が納得できる提案力,③お客様が安心して任せられる確実かつ迅速な処理の3つを心がけており、実際に業務に対しての評価も高い。

活動・公務など

・神奈川大学非常勤講師(2009年9月~2016年3月)
・明治大学リバティアカデミー(市民講座)講師(2015年~2016年)
・横浜弁護士会(現神奈川県弁護士会)常議員(2009年4月~2010年3月)
・一般社団法人神奈川健康生きがいづくりアドバイザー協議会神奈川健生成年後見センター運営委員会委員(2015年8月~)
・セミナー講師としての活動 川崎市役所,東京地方税理士会保土ヶ谷支部,神奈川県宅地建物取引業協会横浜中央支部,神奈川青年司法書士協議会など各種団体におけるセミナー講師を担当