遺産分割の割合はどう決まる?法定相続分・計算方法と公平な分け方を解説
遺産分割を進める際、「誰がどのくらい相続できるのか」「兄弟や子どもで割合はどう変わるのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
遺産分割の割合は、民法で定められた法定相続分を基本としながら、遺言書の内容や相続人全員の話し合いによって調整することができます。また、生前贈与や介護への貢献、遺留分などを考慮する必要があるケースもあります。
本記事では、遺産分割の割合が決まる仕組みや法定相続分の計算方法について、以下の流れで詳しく解説します。
- 遺産分割割合と法定相続分の基本
- 法定相続分以外の割合で遺産を分ける方法
- 家族構成や事情によって変わる相続割合
- 法定相続分どおりでは不公平になる場合の調整方法
- 円滑な遺産分割を実現するための進め方
各項目について、具体的な計算例や注意点を交えながら分かりやすく整理しています。相続に関する情報を確認しながら、ご自身の状況と照らし合わせて読み進めてください。
遺産分割割合と法定相続分の基本
民法で定められた「法定相続分」は、遺産を分ける際の重要な基準です。しかし、必ずしもその割合で分割しなければならないわけではありません。
まずは、誰が相続人になるのか、そして法律上どの程度の割合が目安となるのかについて、基本的な情報を整理しておきましょう。
法定相続分と遺産分割の基本的な考え方と役割
身内が亡くなったあと、遺産をどのような割合で分ければよいのか、基準が分からず不安に感じる方も多いでしょう。その際の大きな道しるべとなるのが「法定相続分」です。
法定相続分とは、民法で規定された各相続人が受け取る遺産割合の基準を指します。ただし、これは決して「必ずこの通りに分けなければならない」という絶対的なルールではありません。
故人が生前に有効な遺言書を残していれば、原則として遺言書に指定された割合が優先されます。また、遺言書がない場合でも、相続人全員が話し合って合意できれば、法定相続分とは異なる割合で自由に遺産を分けることができます。
「法律で決まっているから、絶対にこの割合で分けなければならない」と誤解してしまいがちですが、法定相続分はあくまで、
- 話し合いの基準
- 公平な分け方を考える際の目安
- 調停や審判に移行した際の判断基準
として機能するものです。
さらに、法定相続分は相続税の計算でも重要です。相続税の総額を算出する際には、いったん法定相続分どおりに財産を取得したと仮定して税額を計算します。そのため、遺産分割だけでなく相続税の仕組みもあわせて理解しておくことが重要です。
相続人の範囲と優先順位の決まり方
遺産を分ける話し合いを始める前に、まずは「誰が相続人になるのか」を正確に把握しなければなりません。
民法では、遺産を受け継ぐ人の範囲と優先順位を以下のように定めています。
【相続順位の基本イメージ】
- 配偶者:常に相続人
- 第1順位:子
- 第2順位:父母や祖父母などの直系尊属
- 第3順位:兄弟姉妹
配偶者は常に相続人になりますが、それ以外の親族については順位があります。
たとえば、亡くなった方に子がいる場合、親や兄弟姉妹は原則として相続人にはなりません。
また、子がすでに亡くなっている場合、その子にさらに子どもがいれば、孫が代わりに相続人となる「代襲相続」が発生することがあります。
相続人を1人でも欠いた状態で遺産分割協議を進めてしまうと、せっかくまとまった合意も無効になる可能性があります。
そのため、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、戸籍などの情報を正確に確認したうえで、相続人を確定させることが大切です。
家族構成別の法定相続割合一覧表と計算例
法定相続人が誰になるかによって、それぞれの取り分は大きく変わります。
代表的な家族構成ごとの法定相続割合は以下の通りです。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の割合 | 配偶者以外の割合 |
|---|---|---|
| 配偶者と子 | 2分の1 | 子全体で2分の1 |
| 配偶者と父母 | 3分の2 | 父母全体で3分の1 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 4分の3 | 兄弟姉妹全体で4分の1 |
| 配偶者のみ | すべて相続 | なし |
同じ順位の相続人が複数いる場合は、割り当てられた割合を人数で均等に分けます。
たとえば、
- 遺産総額:3,000万円
- 相続人:配偶者と子2人
の場合を考えてみましょう。
配偶者の法定相続分は2分の1なので、1,500万円です。
子全体の取り分も2分の1で1,500万円ですが、子が2人いるため、1人あたり750万円となります。
このように、子が複数いる場合は、子全体に割り当てられた割合を人数で均等に分けるのが基本です。
なお、前妻や前夫との間の子や、認知している子も、現在の配偶者との間に生まれた子と同じ相続権を持ちます。
「家族に知らせていなかった子が後から判明した」という場合でも、その子を除外して遺産分割を進めることはできません。
法定相続分以外の割合で遺産を分ける方法
遺産分割は、必ずしも法定相続分どおりに行わなければならないわけではありません。
状況に応じて、
- 遺言書
- 遺産分割協議
によって異なる割合で財産を分けることができます。
まずは遺言書の有無を確認し、その後、必要に応じて相続人全員で話し合うのが一般的です。
遺言書で相続割合が指定されている場合の考え方
「配偶者に多く残したい」「お世話になった人に財産を譲りたい」など、故人が遺言書を残していた場合、その意思が原則として尊重されます。
遺言によって各相続人の取り分を指定することを「指定相続分」と呼びます。
遺言書が有効であれば、法定相続分よりも指定相続分が優先されます。
また、遺言書によって、
- 相続人ではない第三者
- 特定の団体
- 一部の相続人
に財産を多く残すことも可能です。
ただし、遺言内容によっては「遺留分」が問題になることがあります。
遺留分とは、配偶者や子など一定の相続人に保障された最低限の取り分です。
遺言によって遺留分を侵害された場合は、財産を多く受け取った相手に対して金銭を請求できることがあります。
また、自筆証書遺言の場合は、法務局の保管制度を利用していない遺言書について、家庭裁判所での検認が必要となるケースがあります。
遺言書を見つけた場合は、自己判断で処理せず、内容や形式を確認してから手続きを進めることが重要です。
遺産分割協議なら相続人全員の合意で割合を変更できる
遺言書がない場合や、遺言書とは異なる分け方をしたい場合は、相続人全員で話し合いを行います。
これを「遺産分割協議」と呼びます。
相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で分けることができます。
たとえば、
「母親の今後の生活を考え、配偶者がすべての財産を相続する」
といった分け方も可能です。
また、長男が実家を相続し、他の兄弟に現金を支払う「代償分割」によって調整する方法もあります。
ただし、遺産分割協議を成立させるには、相続人全員の合意が必要です。
1人でも反対している場合は、協議は成立しません。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停や審判を利用して解決を目指すことになります。
また、注意したいのが借金などのマイナス財産です。
相続人同士で、
「長男が借金をすべて引き継ぐ」
と合意しても、債権者が承諾しなければ、債権者に対してその内容を主張できない場合があります。
合意した内容については、後日のトラブル対策として遺産分割協議書を作成しておくことが重要です。
誰がどの財産を取得するのか、どの割合で分けるのかを書面に残すことで、預金の解約や不動産の名義変更といった手続きも進めやすくなります。
家族構成や事情によって変わる相続割合
法定相続分は、家族構成や相続人の状況によって変わります。
特に、
- 配偶者がいない
- 養子がいる
- 相続放棄をした人がいる
- 代襲相続が発生している
といったケースでは、割合の計算に注意が必要です。
配偶者がいない場合や養子がいる場合の相続割合
配偶者がいない場合、相続権は順位に応じて次の相続人へ移ります。
子がいれば、子が遺産を相続します。
子がいなければ父母などの直系尊属、それもいなければ兄弟姉妹へと相続権が移ります。
同じ順位の相続人が複数いる場合は、原則として均等に分けます。
たとえば、
- 遺産:3,000万円
- 相続人:子3人
の場合、子1人あたり1,000万円が法定相続分となります。
では、養子がいる場合はどうなるのでしょうか。
法律上、養子縁組をした養子は実子と原則として同じ相続権を持ちます。
そのため、配偶者がおらず、
- 実子1人
- 養子1人
の場合、それぞれ2分の1ずつが法定相続分となります。
ただし、相続税の計算では注意が必要です。
相続税の基礎控除などを計算する際、法定相続人の数に含められる養子の人数には制限があります。
原則として、
- 実子がいる場合:養子1人まで
- 実子がいない場合:養子2人まで
となります。
民法上の相続割合と相続税上のルールは異なるため、混同しないよう注意しましょう。
子や養子が多いケース、相続財産が高額なケースなどでは、相続税の計算が複雑になることがあります。必要に応じて税理士へ相談し、正確な情報を確認しておくと安心です。
代襲相続と相続放棄がある場合の割合はどう変わる?
本来相続人となるはずだった子が、被相続人より先に亡くなっている場合、その子の子、つまり孫が代わりに相続することがあります。
これを「代襲相続」と呼びます。
たとえば、本来子が受け取る割合が2分の1で、その子を代襲する孫が2人いる場合、孫はそれぞれ4分の1ずつ相続します。
一方、相続放棄をした場合は扱いが異なります。
相続放棄をすると、その人は法律上「最初から相続人ではなかった」ものとして扱われます。
そのため、親が相続放棄をしたからといって、その子が代わりに代襲相続することはありません。
また、子全員が相続放棄をした場合、第2順位である父母などの直系尊属に相続権が移ります。
さらに直系尊属も相続放棄をした場合、第3順位である兄弟姉妹へ移ります。
相続放棄が関係するケースでは、誰が相続人になるのかが大きく変わるため、早い段階で正確な情報を整理することが重要です。
法定相続分どおりでは不公平になる場合の調整方法
「長男だけが家を建てる資金を援助してもらった」
「自分だけが親の介護を長年担ってきた」
といった事情がある場合、単純に法定相続分で分けると、不公平に感じることがあります。
こうした事情を調整する仕組みとして、
- 遺留分
- 特別受益
- 寄与分
などがあります。
遺言で取り分が少ない場合に確認したい遺留分と請求期限
「特定の相続人にすべての財産を譲る」
といった遺言書が残されていた場合でも、一定の相続人には最低限の取り分として「遺留分」が認められています。
遺留分が認められるのは主に、
- 配偶者
- 子
- 直系尊属
です。
一方、兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の割合は以下の通りです。
| 相続人の構成 | 全体の遺留分割合 | 個別の例 |
|---|---|---|
| 配偶者のみ | 2分の1 | 配偶者2分の1 |
| 配偶者と子 | 2分の1 | 配偶者4分の1、子全体4分の1 |
| 子のみ | 2分の1 | 子全体2分の1 |
| 直系尊属のみ | 3分の1 | 父母全体3分の1 |
遺留分が侵害されている場合は、侵害した相手に対して「遺留分侵害額請求」を行うことができます。
ただし、請求には期限があります。
原則として、
- 相続開始を知ったこと
- 遺留分を侵害する贈与や遺贈があったこと
を知った時から1年以内に請求する必要があります。
また、相続開始から10年が経過した場合も、原則として請求できなくなります。
期限が短いため、遺言書の内容に疑問がある場合は、早めに弁護士などへ相談することが重要です。
生前贈与や介護への貢献はどう反映される?特別受益と寄与分
特定の相続人だけが生前に多額の援助を受けていた場合や、被相続人の財産維持に特別な貢献をしていた場合は、「特別受益」や「寄与分」によって調整されることがあります。
【特別受益と寄与分の違い】
特別受益
- 住宅購入資金を援助してもらった
- 多額の生前贈与を受けた
- 婚姻や養子縁組のための援助を受けた
といった場合に問題となります。
特別受益が認められると、生前に受けた利益を遺産に持ち戻して相続分を計算することがあります。
寄与分
- 家業を無給で手伝った
- 被相続人の財産維持に大きく貢献した
- 特別な療養看護を行った
といったケースで問題となります。
ただし、通常の家族としての介護や身の回りの世話だけでは、寄与分として認められないことも少なくありません。
寄与分を主張する場合は、
- 介護記録
- 日記
- 領収書
- 預金履歴
- 医療・介護に関する情報
など、客観的な証拠を残しておくことが重要です。
こうした情報を事前に整理しておくことも、将来の相続トラブル対策につながります。
特別受益や寄与分はいつまで主張できる?相続開始から10年のルール
特別受益や寄与分には、事実上の時間制限があります。
法改正により、相続開始から10年が経過した場合、原則として特別受益や寄与分を反映した「具体的相続分」による遺産分割が難しくなりました。
つまり、10年を過ぎると、生前贈与や介護への貢献があったとしても、原則として法定相続分や指定相続分を基準に遺産を分けることになります。
この制度は、遺産分割を長期間放置することで、
- 相続人が増える
- 証拠がなくなる
- 権利関係が複雑になる
といった問題を防ぐために設けられています。
不公平を調整したい場合は、相続開始から10年以内に遺産分割協議を進めることが重要です。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることも検討しましょう。
円滑な遺産分割を実現するための進め方
遺産の分け方を決める際、法律上の基準となる割合を正確に把握することは重要です。
しかし、「法律上は自分がこれだけもらえる」と数字だけを相手に主張すると、親族間の対立につながることがあります。
遺産分割トラブルへの対策として、まずは、
- 相続人
- 相続財産
- 遺言書の有無
- 各相続人の希望
- 生前贈与や介護の事情
などの情報を整理しておきましょう。
そのうえで、相続人全員が納得できる分け方を検討することが大切です。
法定相続分だけを主張すると揉める?遺産分割協議を円滑に進めるポイント
「法律では自分の取り分は2分の1だから」
と数字だけを突きつけてしまうと、相手の感情的な反発を招くことがあります。
特に、
- 実家
- 土地
- 事業用不動産
- 形見
など、単純に分割できない財産がある場合は注意が必要です。
まずは、誰がどの財産を取得したいのかを確認しましょう。
そのうえで、不動産を1人が取得する場合は、他の相続人へ代償金を支払う方法も検討できます。
また、金銭的な価値だけではなく、
- 誰が親を介護していたのか
- 誰が実家を維持してきたのか
- 今後誰が住み続けるのか
といった事情も考慮すると、話し合いを進めやすくなります。
最終的に合意できた場合は、必ず遺産分割協議書を作成しておきましょう。
口約束だけで済ませると、後から「そんな話はしていない」といったトラブルが起こる可能性があります。
弁護士に相談すべきケース|費用・争点・請求期限から判断する
当事者間で話し合いを続けても、意見が平行線になることがあります。
特に、
- 相続人同士の対立が激しい
- 財産の全体像が分からない
- 不動産評価をめぐって争っている
- 特別受益や寄与分を主張したい
- 遺留分侵害額請求を検討している
- 相手が話し合いに応じない
といった場合は、弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
また、相続には法律だけでなく税金の問題も関係します。
相続税の申告が必要なケースでは、税理士への相談が適しています。
たとえば、
- 相続財産が基礎控除を超えそう
- 不動産が複数ある
- 生前贈与が多い
- 養子がいる
- 相続税の特例を使いたい
といった場合は、税理士から専門的な情報を得ることで、申告ミスや余計な税負担を防ぎやすくなります。
法律事務所によっては無料相談を実施していることもあります。
まずは無料相談を利用して状況を整理し、
- 弁護士へ依頼すべきか
- 税理士へ相談すべきか
- 自分たちで協議を続けられるか
を判断するのも一つの方法です。
まとめ
遺産分割の割合は、法定相続分を基本としながらも、遺言書や遺産分割協議によって柔軟に変更できます。
特に重要なポイントは以下の通りです。
- 配偶者や子など、相続人の構成によって法定相続分は異なる
- 相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で分けられる
- 遺言書がある場合は、原則として遺言内容が優先される
- 遺留分、特別受益、寄与分によって相続割合が調整されることがある
- 相続開始から10年を超えると、特別受益や寄与分を考慮できない場合がある
- 合意した内容は遺産分割協議書として作成する
- 相続税が関係する場合は税理士への相談も検討する
- 相続人や財産に関する情報を早めに整理することがトラブル対策になる
法定相続分はあくまで一つの基準です。
実際の遺産分割では、家族構成や財産内容、それぞれの事情を踏まえて、相続人全員が納得できる分け方を探ることが重要です。
自分たちだけで判断するのが難しい場合や、すでに相続人同士で対立が生じている場合は、弁護士や税理士などの専門家へ相談しながら進めることを検討しましょう。
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この記事の執筆者

弁護士 伴 広樹
経歴
神奈川県厚木市出身。1997年司法試験合格後、2000年に司法修習を修了(52期)し、弁護士登録。横浜市内の法律事務所に勤務後、2004年に伴法律事務所を開設。年間280件の相続の法律相談に対応している。
弁護士業務では①お客様の期待に沿う徹底した調査,②お客様が納得できる提案力,③お客様が安心して任せられる確実かつ迅速な処理の3つを心がけており、実際に業務に対しての評価も高い。
活動・公務など
・神奈川大学非常勤講師(2009年9月~2016年3月)
・明治大学リバティアカデミー(市民講座)講師(2015年~2016年)
・横浜弁護士会(現神奈川県弁護士会)常議員(2009年4月~2010年3月)
・一般社団法人神奈川健康生きがいづくりアドバイザー協議会神奈川健生成年後見センター運営委員会委員(2015年8月~)
・セミナー講師としての活動 川崎市役所,東京地方税理士会保土ヶ谷支部,神奈川県宅地建物取引業協会横浜中央支部,神奈川青年司法書士協議会など各種団体におけるセミナー講師を担当





