相続における遺産分割とは?手続きの流れと遺産分割協議書の作り方を解説
相続が発生したものの、「遺産をどのように分ければよいのか」「遺産分割協議書はどう作るのか」と悩む方は少なくありません。遺産分割では、相続人や財産を正確に把握したうえで、適切な方法を選び、必要な手続きを順序よく進めることが大切です。
この記事では、遺産分割の基本や具体的な分割方法、協議の進め方、遺産分割協議書の作り方を詳しく解説します。さらに、不動産の名義変更や相続税申告などの期限、話し合いがまとまらない場合の対処法、専門家へ相談すべきケースまで紹介しますので、相続手続きを進める際の参考にしてください。
遺産分割と相続の基本ルール
身近な家族が亡くなると、その人が所有していた預貯金や不動産などを引き継ぐ「相続」が始まります。この相続手続きの中で、相続人が「誰がどの財産を取得するか」を具体的に決める手続きが遺産分割です。
遺言書などによって取得者が決まっている場合を除き、遺産分割協議を成立させるには、原則として相続人全員の合意が必要となります。長期間放置すると、その間に相続人が亡くなって次の相続が発生し、権利関係が複雑になるおそれもあるため注意が必要です。
また、相続手続きには期限が設けられているものがあります。代表的なのが、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行う相続税の申告・納付や、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に行う相続登記です。
期限直前に慌てないためにも、まずは相続と遺産分割の基本的なルールを理解し、必要な手続きを順番に進めましょう。
遺産分割と相続の違いを理解し全体像を把握する
「相続」とは、亡くなった方(被相続人)の財産上の権利や義務を相続人が承継する仕組みです。預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借入金などの債務も原則として対象になります。ただし、被相続人本人だけに帰属する一身専属的な権利・義務は承継されません。
一方、「遺産分割」は、共同相続した財産について、各相続人が最終的にどの財産を取得するのかを決める手続きです。
一般的には、次のような流れで進めます。

まずは戸籍などを確認して相続人を特定し、並行して預貯金、不動産、有価証券、借入金などの財産を調査します。そのうえで、遺産分割が必要な場合は相続人全員で協議し、合意内容を遺産分割協議書にまとめます。
相続人の範囲と相続順位のルールを整理する
誰が法定相続人になるのかは、民法によって定められています。被相続人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の親族には次の順位があります。
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順位 |
対象となる親族 |
主なポイント |
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常に相続人 |
法律上の配偶者 |
内縁の配偶者は法定相続人にはならない |
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第1順位 |
子 |
実子・養子・認知された子などが含まれる |
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第2順位 |
父母・祖父母などの直系尊属 |
第1順位の相続人がいない場合に相続する |
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第3順位 |
兄弟姉妹 |
第1・第2順位の相続人がいない場合に相続する |
第2順位では、被相続人に親等の近い直系尊属が優先されます。たとえば父母が存命であれば、原則として祖父母は相続人になりません。
また、本来相続人になる子が被相続人より先に亡くなっている場合、その子である孫などが代わりに相続する「代襲相続」が発生することがあります。
兄弟姉妹が先に亡くなっている場合も、その子である甥・姪が代襲相続人になる可能性があります。ただし、兄弟姉妹については、甥・姪より下の世代への再代襲はありません。誰が遺産分割協議に参加すべきか、戸籍をもとに正確に確認することが重要です。
法定相続分で定められた遺産の割合を確認する
民法では、相続人の組み合わせに応じて「法定相続分」が定められています。遺言がなく、相続人間で別の分け方について合意できない場合などに基準となる割合です。
代表的な法定相続分は次のとおりです。
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相続人の構成 |
配偶者 |
その他の相続人 |
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配偶者と子 |
2分の1 |
子全体で2分の1 |
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配偶者と直系尊属 |
3分の2 |
直系尊属全体で3分の1 |
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配偶者と兄弟姉妹 |
4分の3 |
兄弟姉妹全体で4分の1 |
同順位の相続人が複数いる場合は、原則としてその相続分を人数に応じて分けます。ただし、父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹については、父母の双方を同じくする兄弟姉妹とは法定相続分の計算方法が異なります。
法定相続分どおりに分けることが義務付けられているわけではありません。遺言による指定などがなく、相続人全員が合意すれば、「長男が不動産を取得し、他の相続人が預貯金を取得する」といった柔軟な分け方も可能です。
遺言書がある場合の遺産分割への影響を理解する
被相続人が有効な遺言書を残していた場合は、原則としてその内容に従って相続手続きを進めます。法定相続分とは異なる割合で財産を取得させたり、相続人以外の第三者や法人へ財産を遺贈したりすることも可能です。
ただし、遺言書があれば、必ずそのまま手続きが完了するとは限りません。たとえば、次のようなケースでは追加の確認や対応が必要となります。
- 遺言書に記載されていない財産が見つかった
- 遺言の有効性について争いがある
- 遺言内容が遺留分を侵害している
- 相続人全員が遺言とは異なる分け方を希望している
- 相続人以外の受遺者や遺言執行者が関係している
遺留分とは、一定の相続人に保障された最低限の取り分です。ただし、兄弟姉妹やその代襲相続人である甥・姪には遺留分がありません。
遺留分を侵害されたからといって遺言が当然に無効になるわけではなく、権利者は一定期間内に「遺留分侵害額請求」を行うことで、侵害額に相当する金銭の支払いを求めることができます。
また、相続人全員が合意すれば遺言と異なる遺産分割ができる場合もありますが、受遺者や遺言執行者がいるケースなどでは別途検討が必要です。遺言書が見つかった場合は、まず形式と内容を確認したうえで、その後の手続きを判断しましょう。
遺産を分ける4つの分割方法
遺産分割には、財産の性質や相続人の希望に応じて、主に「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つの方法があります。不動産や預貯金など、どの財産をどのように分けるかによって、手続きの手間や税務上の影響も異なります。各方法の特徴を理解し、相続人全員が納得できる分け方を検討しましょう。
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分割方法 |
メリット |
デメリット |
適しているケース |
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現物分割 |
財産をそのまま取得でき、手続きが比較的分かりやすい |
財産ごとの価値に差があると不公平感が生じやすい |
預貯金が多い場合や各相続人が希望する財産が異なる場合 |
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代償分割 |
不動産や事業用資産を分割せずに承継できる |
取得者に代償金を支払う資力が必要 |
実家や事業用不動産を特定の相続人が引き継ぐ場合 |
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換価分割 |
売却代金を基準に分けられるため調整しやすい |
売却費用や譲渡所得税が発生する可能性がある |
誰も利用しない不動産を処分したい場合 |
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共有分割 |
直ちに売却や代償金の準備をしなくてもよい |
将来の管理や処分が複雑になりやすい |
当面は共有で保有することについて全員が合意している場合 |
現物分割の仕組みとメリット
現物分割とは、それぞれの財産を現物のまま特定の相続人が取得する方法です。たとえば「自宅の土地と建物は長男、預貯金は次男が取得する」といった分け方が該当します。
財産を売却したり、代償金を準備したりする必要がないため、比較的分かりやすい方法です。各相続人が希望する財産が異なる場合にも利用しやすいでしょう。
一方、不動産3,000万円、預貯金1,000万円といったように財産ごとの価値に差があると、取得額に偏りが生じることがあります。その場合は、預貯金の配分を調整したり、代償分割と組み合わせたりして公平性を確保する方法も検討できます。
代償分割が適しているケースと代償金の考え方
代償分割は、特定の相続人が不動産などを取得し、その代わりに他の相続人へ代償金を支払う方法です。
たとえば、相続人が兄弟2人で、評価額3,000万円の不動産だけが遺産である場合、長男が不動産を取得し、次男へ1,500万円を支払うといった方法が考えられます。ただし、実際の代償金額は法定相続分だけでなく、相続人間の合意や特別受益・寄与分などの事情によって変わることがあります。
代償分割の主な注意点は次のとおりです。
- 不動産を取得する相続人に代償金を支払う資力があるか
- 不動産をどの評価方法で算定するか
- 代償金の金額や支払期限をどう設定するか
- 税務上の影響が生じないか
遺産分割における不動産の評価方法は法律で一律に決まっていません。実勢価格や不動産会社の査定、不動産鑑定士による鑑定などを参考に、相続人間で合意することが重要です。
また、代償金の支払額や期限、振込方法などは遺産分割協議書に明記しておくと、後日のトラブル防止につながります。
換価分割で不動産などを現金化する手順と注意点
換価分割とは、不動産や有価証券などの遺産を売却して現金化し、その代金を相続人間で分配する方法です。誰も住む予定のない実家や、現物のままでは分けにくい財産がある場合に利用されます。
不動産を換価分割する際は、相続人全員の共有名義にして売却する方法や、遺産分割協議の内容に基づき代表となる相続人へ登記したうえで売却する方法などがあります。登記や遺産分割協議書の記載方法によって税務上の扱いにも影響する可能性があるため、事前に確認しておくと安心です。
換価分割では売却代金を基準に分けられるため、取得額を調整しやすい点がメリットです。ただし、次の費用が発生することがあります。
- 不動産会社への仲介手数料
- 測量費や登記費用
- 建物の解体費用
- 売却によって利益が生じた場合の譲渡所得税
売却価格がそのまま各相続人の手取りになるわけではありません。売却費用や税負担を誰がどのように負担し、残額をどの割合で分けるかまで協議しておくことが大切です。
不動産の売却によって譲渡所得が生じた場合は、相続人に所得税・住民税が課されることがあります。
共有分割のデメリットと将来起こり得るトラブル
共有分割とは、1つの不動産などを複数の相続人が持分を定めて共同所有する方法です。たとえば、兄弟2人がそれぞれ2分の1ずつの持分を取得するケースが該当します。
すぐに不動産を売却したり、代償金を用意したりする必要がない点はメリットです。一方、共有状態が続くと、将来的な管理や処分について意見が分かれる可能性があります。
ただし、共有不動産に関するすべての行為に共有者全員の同意が必要なわけではありません。一般に、共有物全体の売却や重大な変更には全員の同意が必要ですが、管理に関する事項は持分価格の過半数、保存行為は各共有者が単独で行える場合があります。
また、共有者の1人が亡くなると、その持分がさらに相続され、共有者が増えて権利関係が複雑になることもあります。固定資産税や修繕費の負担、利用方法などを巡って争いになる可能性も否定できません。
そのため、「とりあえず共有にする」という理由だけで選ぶのではなく、将来的に誰が利用するのか、売却する可能性があるのかまで考えたうえで慎重に判断することが大切です。
遺産分割をスムーズに進める4つの流れ
遺産分割は、一般的に「相続人の確認」「相続財産の調査」「遺産分割協議」「遺産分割協議書の作成」という流れで進めます。各段階で必要な確認を丁寧に行うことで、後から相続人や財産が判明して協議をやり直すといったトラブルを防ぎやすくなります。
相続人を確定させる戸籍謄本の収集と重要性
遺産分割協議を始める前に、まず誰が法定相続人になるのかを正確に確認する必要があります。一般的には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍などを収集し、親族関係をたどります。
戸籍を確認することで、前の婚姻関係で生まれた子や認知した子、養子など、家族が把握していなかった相続人が判明する場合もあります。
遺産分割協議は、原則として相続人全員の合意がなければ成立しません。そのため、一部の相続人だけで分け方を決めても、正式な遺産分割協議とは認められない可能性があります。
本籍地が遠方の場合は、郵送請求のほか、一定の要件を満たせば戸籍証明書等の広域交付制度を利用することも可能です。まず相続人を漏れなく把握することが、遺産分割を進めるうえでの重要な第一歩となります。
相続財産を調査して財産目録を作成する
相続人の確認と並行して、被相続人が残した財産を調査します。対象となるのは、預貯金や不動産などのプラスの財産だけではありません。借入金や未払金などの債務も原則として相続の対象となるため、あわせて確認しましょう。
主な調査対象は次のとおりです。
- 預貯金
- 土地・建物などの不動産
- 株式・投資信託などの有価証券
- 自動車や貴金属などの動産
- 貸付金などの債権
- 住宅ローンや借入金
- 未払税金やその他の債務
通帳、郵便物、固定資産税の納税通知書、証券会社からの書類などが調査の手掛かりになります。ネット銀行やネット証券、暗号資産など、紙の資料が残りにくい財産にも注意が必要です。
すべての財産を把握したら、財産の種類や評価額をまとめた「財産目録」を作成しておくと協議を進めやすくなります。
また、死亡前に多額の預金が引き出されている場合でも、直ちに「使い込み」と判断できるわけではありません。医療費や介護費、生活費などに使われた可能性もあるため、領収書や取引履歴などの客観的な資料を確認することが大切です。
遺産分割協議の進め方と話し合いの注意点
相続人と相続財産の範囲を確認したら、誰がどの財産を取得するのかについて遺産分割協議を行います。
協議を成立させるには、原則として相続人全員の合意が必要ですが、全員が同じ場所へ集まる必要はありません。遠方に住む相続人がいる場合は、電話やオンライン会議、メール、書面の郵送などで意見を調整することもできます。
話し合いでは、次のような事情を整理すると合意形成を進めやすくなります。
- 各相続人の法定相続分
- 不動産などの財産評価額
- 各相続人が希望する財産
- 特別受益の有無
- 寄与分として考慮すべき事情
- 不動産を利用している相続人の状況
なお、長期間介護していたという事情があるだけで、必ずしも寄与分が認められるわけではありません。特別受益についても、生前贈与があれば必ず考慮されるとは限らず、個別の事情を踏まえた判断が必要です。
話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。調停でもまとまらなければ、原則として審判へ移行し、裁判所が具体的な分割方法を判断します。
遺産分割協議書の作成と必要書類の準備
相続人全員が遺産の分け方に合意したら、その内容を遺産分割協議書として書面にまとめます。
遺産分割協議書には、誰がどの財産を取得するのか、第三者が見ても特定できるよう具体的に記載することが重要です。
たとえば不動産については、登記事項証明書を確認し、所在・地番・家屋番号など登記記録に沿って記載します。預貯金の場合は、一般的に次のような情報で財産を特定します。
- 金融機関名
- 支店名
- 預金種別
- 口座番号など
ただし、金融機関によって必要な記載内容や提出書類は異なります。
遺産分割協議書について、法律上必ず「全員が自筆で署名し、実印を押さなければ無効になる」と決まっているわけではありません。ただし、不動産の相続登記や金融機関の相続手続きに使用する場合は、相続人全員が署名または記名し、実印を押印したうえで印鑑証明書を添付する方法が一般的です。
完成した協議書は、相続登記や預貯金の払戻し・名義変更などに使用します。提出先によって必要書類や書式が異なる場合もあるため、事前に法務局や金融機関へ確認しておくと安心です。
合意内容を書面に残しておけば、「言った・言わない」といった後日の争いを防ぎやすくなります。相続人全員の認識をそろえたうえで、相続登記や預貯金の手続きまで着実に進めることが大切です。
遺産分割協議後に必要となる名義変更や相続手続き
遺産分割協議が成立しても、それだけで預貯金や不動産などの名義が自動的に変更されるわけではありません。財産ごとに、金融機関や法務局、証券会社などで所定の手続きを行う必要があります。
協議成立後は、遺産分割協議書の内容に沿って、各財産の名義変更や払戻しを順番に進めましょう。
預貯金の解約や払戻しに必要な手続き
金融機関が口座名義人の死亡を把握すると、原則として口座からの払戻しや振込みなどの取引が制限されます。そのため、公共料金や家賃などを被相続人名義の口座から引き落としていた場合は、支払方法の変更も検討しておくと安心です。
遺産分割協議成立後の預貯金手続きでは、一般的に次のような書類を求められます。
- 被相続人の戸籍謄本等
- 相続人の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人の印鑑登録証明書
- 金融機関所定の相続手続書類
- 通帳やキャッシュカードなど
ただし、必要書類は金融機関や相続方法によって異なります。法定相続情報一覧図を利用できる場合もあるため、手続き前に金融機関へ確認するとよいでしょう。
また、遺産分割協議書を作成していない場合でも、相続人全員が金融機関所定の書類に署名・押印して手続きを行う方法や、一定の要件のもとで遺産分割前の預貯金払戻し制度を利用する方法があります。
不動産の名義変更と相続登記の義務化に対応する
不動産の相続登記は、2024年4月1日から義務化されています。
相続によって不動産を取得した相続人は、原則としてその所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。2024年4月1日より前に発生した相続についても、一定の経過措置のもとで義務化の対象です。
さらに、遺産分割が成立して不動産を取得した場合は、遺産分割成立日から3年以内に、その内容を反映した登記を申請する義務があります。
主な必要書類は次のとおりです。
- 戸籍謄本等
- 遺産分割協議書
- 印鑑登録証明書
- 不動産を取得する相続人の住民票
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 登記申請書
相続による所有権移転登記の登録免許税率は、原則として固定資産課税台帳に登録された価格の0.4%です。
正当な理由なく申請義務に違反した場合は、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。手続きに不安がある場合は、司法書士へ相談する方法もあります。
株式や有価証券の相続手続きと必要書類
被相続人が保有していた株式や投資信託などについても、証券会社所定の相続手続きが必要です。
一般的には、証券会社へ死亡の連絡をしたうえで、戸籍謄本や遺産分割協議書などを提出し、相続人名義の口座への移管や売却手続きを進めます。ただし、具体的な方法は証券会社や商品によって異なるため、「必ず一度相続人名義へ移管してから売却する」とは限りません。
手続きを進める際は、次の点を確認しておくとよいでしょう。
- 相続人側に証券口座の開設が必要か
- 株式や投資信託を現物で引き継ぐか
- 売却して現金で受け取れるか
- 特定口座やNISA口座の扱い
- 配当金や分配金の取扱い
特にNISA口座内の上場株式等は、相続によってそのまま非課税口座へ引き継がれるわけではありません。税務上は、原則として相続時の価格を基に取得したものとして扱われる点にも注意が必要です。
相続税の申告が必要になるケースと基礎控除額
相続税は、すべての相続で申告・納税が必要になるわけではありません。
相続税の基礎控除額は、次の計算式で求めます。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の計3人であれば、基礎控除額は4,800万円です。
相続税の申告要否を判断する際は、単純に遺産分割の対象となった財産だけを見るわけではありません。預貯金や不動産、有価証券などのほか、死亡保険金や死亡退職金などの「みなし相続財産」も課税価格に含まれる場合があります。
一方で、被相続人の債務や一定の葬式費用は、課税価格から控除できることがあります。
死亡保険金や死亡退職金については、相続人が取得した場合、それぞれ原則として
500万円×法定相続人の数
まで非課税となる制度があります。
なお、課税価格の合計額が基礎控除額を超えても、配偶者の税額軽減などの適用によって実際の納税額がゼロになることがあります。ただし、その特例を利用するために相続税申告が必要となる場合もあるため、「税額がゼロなら申告不要」とは限りません。
相続登記、預貯金、有価証券、相続税はそれぞれ手続き先や期限が異なります。遺産分割協議が成立したら、必要な手続きを一覧にして、漏れのないよう進めることが大切です。
遺産分割で注意したい期限と税金のルール
遺産分割協議そのものに、「必ず何か月以内に終えなければならない」という一律の期限はありません。ただし、相続税の申告・納付や相続放棄など、周辺の手続きには期限があります。
また、相続開始から長期間が経過すると、特別受益や寄与分を考慮した遺産分割が難しくなる場合もあります。協議だけに時間をかけすぎず、期限のある手続きと並行して進めることが重要です。
主な期限を整理すると、次のとおりです。
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手続き |
原則的な期限 |
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相続放棄・限定承認 |
自己のために相続開始があったことを知った時から3か月以内 |
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相続税の申告・納付 |
相続開始を知った日の翌日から10か月以内 |
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特別受益・寄与分を考慮した遺産分割 |
原則として相続開始から10年以内 |
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相続登記 |
原則として不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内 |
相続税の申告・納付は原則10か月以内
相続税の申告と納付は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行います。遺産分割協議が終わっていなくても、申告期限が自動的に延長されるわけではありません。
期限までに分割がまとまらない場合は、未分割の財産について各共同相続人が法定相続分などに従って取得したものとして課税価格を計算し、期限内に申告・納税する必要があります。
期限を過ぎると、事情によっては無申告加算税や延滞税が発生する可能性もあります。相続財産が基礎控除額を超える可能性がある場合は、遺産分割協議と並行して財産評価や申告準備を進めておくと安心です。
遺産分割協議書が必要になる主な手続き
遺産分割協議書は、相続人全員が合意した財産の分け方を記録する書類です。主に次のような手続きで使用します。
- 不動産の相続登記
- 預貯金の払戻し・名義変更
- 株式や投資信託などの相続手続き
- 相続税申告における分割内容の確認
ただし、すべての相続で遺産分割協議書が必要になるわけではありません。有効な遺言書に従って手続きをする場合や、法定相続分による登記を行う場合などは、協議書を使用しないケースもあります。
金融機関についても、所定の相続手続書類に相続人全員が署名・押印することで手続きできる場合があります。必要書類は提出先によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例と未分割の注意点
「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」は、相続税負担を大きく軽減できる制度ですが、原則として申告期限までに対象となる財産が分割されていることが必要です。
申告期限までに遺産分割が終わっていない場合、当初の申告ではこれらの特例を適用できないことがあります。ただし、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、その後一定の要件を満たして分割が成立すれば、特例を適用できる場合があります。
分割後に納め過ぎとなった相続税がある場合は、原則として分割日の翌日から4か月以内に更正の請求を行うことで、還付を受けられる可能性があります。
そのため、「未分割だから特例を完全に失う」とは限りません。一方で、当初は特例を使わずに納税資金を用意しなければならないケースもあるため、早めに分割を進めることが望ましいでしょう。
相続開始から10年を超える場合の注意点
遺産分割そのものは、相続開始から10年を経過しても行うことができます。しかし、2023年4月1日施行の改正民法により、相続開始から10年を経過した後は、原則として特別受益や寄与分を考慮した「具体的相続分」による分割ができなくなりました。
その場合、原則として法定相続分または遺言で指定された相続分を基準に遺産分割することになります。
ただし、10年経過前に家庭裁判所へ遺産分割調停・審判を申し立てた場合や、相続人全員が合意した場合などには例外があります。
「遺産分割自体には期限がないから放置しても問題ない」というわけではないため、特別受益や寄与分を主張する可能性がある場合は特に注意が必要です。
借金などがある場合は相続放棄の3か月に注意する
被相続人に借金などの債務があり、相続したくない場合は、相続放棄を検討できます。
相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。この3か月は「熟慮期間」と呼ばれています。
熟慮期間内に相続放棄や限定承認をせず、期間が経過した場合は、原則として単純承認したものとみなされます。
一方、財産や債務の調査に時間がかかり、3か月以内に判断できない場合は、熟慮期間中に家庭裁判所へ期間伸長を申し立てることが可能です。
また、相続放棄を検討している段階で相続財産を処分すると、内容によっては単純承認とみなされる可能性があります。借金の存在が判明した場合は、預貯金や不動産を安易に処分せず、早めに専門家へ相談することが大切です。
遺産分割協議がまとまらない場合の対処法
当事者同士の話し合いで遺産分割について合意できない場合は、家庭裁判所の手続きを利用して解決を目指します。話し合いがまとまらないからといって、直ちに訴訟になるわけではありません。
遺産分割については調停・審判、遺留分が問題となる場合は遺留分侵害額請求など、状況によって利用する制度が異なります。それぞれの目的と仕組みを理解して対応することが重要です。
家庭裁判所での遺産分割調停の流れと費用
遺産分割調停は、裁判官と調停委員で構成される調停委員会の関与のもと、相続人同士の話し合いによる合意を目指す手続きです。
申立先は、原則として相手方のうち1人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意して定めた家庭裁判所です。申立てには、一般的に次のような書類を準備します。
- 遺産分割調停申立書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
- 相続人関係を確認できる戸籍謄本等
- 不動産の登記事項証明書
- 預貯金や有価証券など遺産を確認できる資料
- その他、裁判所から求められる資料
申立費用は、被相続人1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便料です。郵便料は裁判所によって異なるため、申立先へ確認する必要があります。
調停では、当事者から個別に事情を聞く形で進められることがありますが、必ず一切顔を合わせないとは限りません。調停が成立すると調停調書が作成され、その内容に基づいて相続登記などの手続きを進められます。
調停が成立しない場合の遺産分割審判
遺産分割調停で合意できず不成立となった場合は、原則として遺産分割審判へ移行し、家庭裁判所が分割方法を判断します。
審判では、法定相続分だけでなく、遺産の種類や性質、各相続人の事情など、事件に現れた諸事情を踏まえて判断されます。当事者全員の合意を前提とする調停とは異なるため、自分が希望した分割方法になるとは限りません。
審判が確定すれば、その内容に基づいて不動産の相続登記などを行うことができます。登記では、審判書謄本や確定証明書などが必要になる場合があります。
審判内容に不服がある場合は、原則として告知を受けた日から2週間以内に即時抗告を行うことが可能です。期間内に即時抗告がなければ審判は確定するため、内容に納得できない場合は早めに弁護士へ相談するとよいでしょう。
遺留分侵害額請求が問題になるケースと期限
遺言や一定の生前贈与によって遺留分を侵害された場合は、「遺留分侵害額請求」を検討できます。これは遺産分割とは別の制度で、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを求めるものです。
遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の一定の法定相続人です。たとえば「全財産を長男に相続させる」という遺言によって、配偶者や他の子の遺留分が侵害されている場合などが考えられます。
遺留分侵害額請求権には、次の期間制限があります。
- 相続開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年
- 相続開始の時から10年
1年間権利を行使しなければ時効により消滅し、相続開始から10年を経過した場合も請求できなくなります。
請求する場合は、後から請求時期を証明できるよう、内容証明郵便などで意思表示をする方法が一般的です。相手方との交渉で解決しなければ、家庭裁判所へ遺留分侵害額請求調停を申し立てる方法があります。調停でも解決しない場合は、民事訴訟によって請求することになります。なお、遺産分割調停とは異なり、遺留分侵害額請求調停が不成立になっても、自動的に審判へ移行するわけではありません。
遺産分割を専門家に相談するメリットと費用
遺産分割について専門家へ相談するかどうかは、相続人同士の対立の有無や、財産の種類、必要な手続きによって判断します。
特に争いが生じている場合は、専門家ごとの業務範囲を理解して相談先を選ぶことが大切です。
弁護士・司法書士・税理士の役割と費用の考え方
主な専門家の役割を整理すると、次のようになります。
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専門家 |
主な相談内容 |
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弁護士 |
相続人間の交渉、遺留分、遺産分割調停・審判など |
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司法書士 |
相続登記、戸籍収集、登記に必要な書類作成など |
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税理士 |
相続税申告、財産の税務評価、相続税に関する相談など |
相続人同士で争いがあり、一方の代理人として相手方との交渉や家庭裁判所での調停・審判に対応してもらいたい場合は、弁護士への依頼が適しています。
一方、争いがなく、不動産の相続登記を進めたい場合は司法書士が主な相談先です。司法書士は登記申請の代理や、必要な戸籍の収集などを依頼内容に応じて行えます。ただし、相続人間の紛争について一方の代理人として交渉することはできません。
相続税申告や土地・非上場株式などの税務上の評価については、税理士へ相談するとよいでしょう。
費用は、遺産の規模や相続人の数、争いの程度、依頼する業務の範囲などによって異なります。契約前に見積書を取り、着手金・報酬金・実費など、どのような費用が発生するのか確認することが大切です。
相続に詳しい専門家を選ぶ際に確認したいポイント
資格を持っている専門家でも、取り扱う業務分野はそれぞれ異なります。相続について相談する場合は、単に「相続専門」といった広告表現だけを見るのではなく、対応内容を具体的に確認しましょう。
主なチェックポイントは次のとおりです。
- 遺産分割や相続手続きの取扱経験があるか
- 自分と似た相続問題への対応経験があるか
- 対応できる業務範囲を明確に説明してくれるか
- 費用や追加料金について事前に説明があるか
- 必要に応じて他士業と連携できるか
- リスクや不利な点についても説明してくれるか
不動産、非上場株式、事業用資産など評価が難しい財産が含まれる場合は、その分野について経験のある専門家へ相談することも重要です。
初回相談を無料としている事務所もありますが、相談料や対応範囲は事務所によって異なります。相続人同士の話し合いがすでに対立している場合や、調停・遺留分の期限が迫っているケースでは、資料がすべてそろうのを待たず、早めに弁護士などへ相談するとよいでしょう。
まとめ
相続が発生した場合、遺産を誰がどのように取得するのかを決めるために、遺産分割を進める必要があります。遺言書がない場合などには、相続人全員で遺産分割協議を行い、合意した内容を遺産分割協議書として残しておくことが重要です。
遺産分割は正しい手順で進めることが大切
遺産分割では、まず遺言書の有無を確認し、戸籍関係書類を収集して相続人を確定します。その後、不動産や預貯金、株式などの財産だけでなく、借金などの負債についても調査したうえで協議を始めるのが基本的な流れです。
相続財産の分け方には、現物分割・代償分割・換価分割などがあり、財産の種類や相続人の希望に応じて適切な方法を検討します。特に不動産が含まれる相続では、公平に分けることが難しく、多くの相続人の間で意見が対立することもあるため注意が必要です。
協議成立後も必要な相続手続きを忘れない
遺産分割協議が成立したら、誰がどの財産を取得するのかを明確にした遺産分割協議書を作成します。その後、不動産の相続登記や預貯金の払戻し、株式の名義変更など、財産ごとに必要な手続きを進めましょう。
また、遺産分割協議そのものに一律の期限はありませんが、相続放棄や相続税の申告・納付、相続登記などにはそれぞれ期限があります。話し合いが長期化すると手続きが複雑になる可能性もあるため、早めに取り組むことが大切です。
相続人同士で合意できない場合や権利関係が複雑な場合は、無理に当事者だけで解決しようとせず、弁護士や司法書士、税理士など、問題に応じた専門家への相談を検討しましょう。
伴法律事務所は遺産分割・相続トラブルの専門家として電話やメール、LINEでのご相談を無料で受付しております。メールは24時間受付、また初回相談60分無料とさせていただいておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の執筆者

弁護士 伴 広樹
経歴
神奈川県厚木市出身。1997年司法試験合格後、2000年に司法修習を修了(52期)し、弁護士登録。横浜市内の法律事務所に勤務後、2004年に伴法律事務所を開設。年間280件の相続の法律相談に対応している。
弁護士業務では①お客様の期待に沿う徹底した調査,②お客様が納得できる提案力,③お客様が安心して任せられる確実かつ迅速な処理の3つを心がけており、実際に業務に対しての評価も高い。
活動・公務など
・神奈川大学非常勤講師(2009年9月~2016年3月)
・明治大学リバティアカデミー(市民講座)講師(2015年~2016年)
・横浜弁護士会(現神奈川県弁護士会)常議員(2009年4月~2010年3月)
・一般社団法人神奈川健康生きがいづくりアドバイザー協議会神奈川健生成年後見センター運営委員会委員(2015年8月~)
・セミナー講師としての活動 川崎市役所,東京地方税理士会保土ヶ谷支部,神奈川県宅地建物取引業協会横浜中央支部,神奈川青年司法書士協議会など各種団体におけるセミナー講師を担当





