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【2024年に義務化】相続登記とは?基本から解説

 

【2024年に義務化】相続登記とは?基本から解説

2024年から「相続登記」が義務化されました。これは、相続によって土地や建物を取得した際に、名義変更(登記)を行わなければならないという制度です。これまで任意だったため、登記がされないまま放置された不動産が全国で増加していました。義務化によって、相続関係の明確化や不動産の管理・売買がスムーズになる一方、期限内に登記を行わないと罰則が科される可能性もあります。

この記事では、相続登記の基本から手続きの流れ、注意点までわかりやすく解説します。

相続登記義務化で今すぐやるべき3ステップ

相続登記義務化への対応は、まずご自身の現状を正確に把握し、次に適切な手続き方法と期限を定めて、必要な書類を段階的に準備していくことが重要です。平日の役場や法務局への訪問には移動時間や手間がかかります。ご自身のペースで、余裕を持ったスケジュールで進めることをおすすめいたします。

ステップ1:自分の状況を確認

まず、ご自身の状況を正確に把握することが重要です。相続登記義務化については、令和6年4月1日から施行されていますが、それ以前に発生した相続も対象となる場合があります。

具体的には、令和6年4月1日より前に発生した相続であっても、まだ相続登記をしていない土地については義務化の対象です。例えば、数年前に親御さんが他界され、実家の土地を相続されたものの、登記名義の変更をされていなかった場合でも、今回の義務化によって手続きが必要となります。

まずは相続が発生した時期をご確認ください。次に、その土地の登記簿謄本を取得し、現在の名義人が誰になっているかを確認します。もし故人の名義のままであれば、相続登記が必要となります。

また、複数の相続が重なっているケースも珍しくありません。例えば、すでに亡くなっている祖父母様から親御さんへ、そして親御さんからご自身へというように、世代をまたいで登記が放置されている場合です。このような場合は、すべての相続について順次登記手続きを行う必要があります。

地方では古くから「土地は先祖代々のもの」という意識が強く、正式な登記手続きを行わずに使い続けてきた土地も少なくありません。しかし、義務化によって、このような状況を整理することが求められます。まずは固定資産税の納税通知書や権利証などの書類の内容を確認し、どの土地が対象になるかを整理しておきましょう。

ステップ2:期限と手続き方法の選択

ご自身の状況を把握されたら、次に期限と手続き方法を確認します。相続登記の期限は、相続の開始および所有権を取得したことを知った日から3年以内と定められています。令和6年4月1日より前に相続が開始していた場合は、同日から3年以内、具体的には令和9年3月31日までが期限です。

手続き方法には、大きく分けて二つの選択肢があります。一つは「正式な相続登記」、もう一つは「相続人申告登記」という簡易な手続きです。

正式な相続登記とは、遺産分割協議を経て、誰が具体的に土地を取得するかを決め、その結果を登記簿に反映させる方法です。遺産分割協議書の作成や相続人全員の印鑑証明書の取得などが必要となり、手続きは複雑になる傾向があります。しかし、完了すれば土地の権利関係が明確になり、将来的な売却や担保設定も可能となる、根本的な解決策です。

一方、相続人申告登記は、「私は相続人である」という事実を法務局に申し出る簡易な手続きです。この方法であれば遺産分割協議は不要で、戸籍謄本などの基本的な書類で申請できます。ただし、土地の持分は法定相続分のまま記録されるため、将来的に売却などを検討される場合は、改めて正式な相続登記が必要になる点はご理解ください。

どちらを選ぶかは、今後の土地の活用予定や相続人様の関係性によって判断が分かれます。例えば、すぐに売却予定がなく、相続人様間の話し合いに時間がかかりそうな場合は、まず相続人申告登記で義務を履行し、その後時間をかけて正式な登記を行うという方法も有効な選択肢です。

地方にお住まいの場合、遠方にお住まいのご兄弟姉妹がいらっしゃり、皆様で集まる機会が限られることも考えられます。そのような状況では、まず簡易な申告制度を利用して期限内に義務を果たし、その後、ゆっくりと遺産分割協議を進めるという方法もあります。

ステップ3:必要書類の準備

手続き方法が決まりましたら、必要な書類の準備に取りかかりましょう。どちらの方法を選択される場合でも、まず必要となるのは戸籍関係の書類です。

特に重要なのは、被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本です。これによって相続人が誰であるかを確定するため、非常に大切な書類と言えます。戸籍謄本は本籍地の市区町村で取得できますが、転籍を繰り返している場合は、複数の自治体から取り寄せる必要があります。

地方では、長年にわたり同じ土地に住み続けていらっしゃる方も多く、戸籍の移動が比較的少ない傾向にあるかもしれません。しかし、戦前戦後の混乱期に戸籍が整理されているケースもあり、古い戸籍の取得には予想以上に時間がかかることもございます。まずは最寄りの市町村役場で相談され、どの戸籍が必要となるかを確認されることをおすすめいたします。

次に、相続人全員の現在の戸籍謄本も必要です。これは各相続人様の本籍地で取得できます。遠方にお住まいのご兄弟姉妹がいらっしゃる場合は、郵送での取り寄せも可能ですので、ご検討ください。

正式な相続登記を行う場合は、これらに加えて遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書も必要になります。印鑑証明書には有効期限(3か月間)があるため、取得のタイミングには十分な注意が必要です。

また、土地の価格を示すものとして、固定資産評価証明書も必要です。これは土地所在地の市町村で取得できます。登録免許税の計算基礎となりますので、正確な金額の証明書を取得しておきましょう。

書類の収集は、想定よりも時間を要することが少なくありません。特に、平日の昼間しか開いていない役場や法務局の窓口へ足を運ぶ必要があり、お仕事をお持ちの方には負担となることもあるかもしれません。余裕を持ったスケジュールで進めていくことが大切です。

相続登記義務化の基礎知識

相続登記義務化の施行を受け、改めてその基本的な事柄を確認しておくことは重要です。ここでは、相続登記とは何か、対象となる方や不動産、過去の相続の扱い、そして義務化の背景と理由について解説いたします。

相続登記とは何かを分かりやすく解説

相続登記とは、亡くなられた方(被相続人)から相続した不動産の名義を、相続人の方の名前に変更する手続きを指します。具体的には、不動産の登記簿に記載されている所有者名義を、故人から相続人へと書き換える作業です。

これまで相続登記は任意の手続きでしたが、令和6年4月1日からは法律上の義務となりました。不動産の所有権を取得した相続人は、原則としてその所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請を行う必要があります。

この手続きは、法務局に対して「相続による所有権移転登記」を申請することで行われます。申請には、被相続人様の戸籍謄本や除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書(作成した場合)、印鑑証明書等の書類が必要です。また、登録免許税として固定資産税評価額の0.4%を納めることも覚えておきましょう。

義務化の対象となる人・不動産・過去分の扱い

相続登記義務化の対象となるのは、相続によって不動産の所有権を取得したすべての相続人です。これには、配偶者の方、お子様、ご両親、ご兄弟姉妹など、法定相続人として権利を取得された方全員が含まれます。また、遺言によって不動産を相続された方も同様に対象となります。

対象となる不動産は、土地・建物を問わず、全ての不動産が対象です。ご自宅の敷地はもちろんのこと、農地、山林、原野、雑種地など、用途に関係なく相続登記が必要となります。不動産の価値や面積の大小も関係ありません。たとえ評価額が低い土地であっても、相続登記の義務は発生すると考えてください。

特に重要なポイントは、令和6年4月1日より前に発生した相続についても義務化の対象となることです。つまり、過去に相続が発生し、まだ相続登記を行っていない不動産についても、令和9年3月31日までに相続登記を完了させる必要があります。例えば、10年前や20年前に親御さんが亡くなられ、そのままの名義になっている不動産がある場合でも、今回の義務化によって登記手続きが求められます。

この過去分の取り扱いについて、「いつから3年なのか」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。令和6年4月1日時点で既に相続が発生している場合は、同日から3年以内、すなわち令和9年3月31日までが期限です。一方、令和6年4月1日以降に相続が発生した場合は、相続開始を知った日から3年以内に手続きを行う必要があります。

義務化の背景と理由

相続登記義務化の最大の背景には、「所有者不明土地問題」があります。これまで相続登記が任意であったため、相続が発生しても登記名義の変更を行わないケースが全国で数多く見受けられました。その結果、登記簿を見ても実際の所有者が分からない土地が急増し、深刻な社会問題となっていたのです。

国土交通省の調査によれば、所有者不明土地の面積は九州の面積をも上回るほどに拡大しています。このような土地は、公共事業の用地取得や災害復旧工事の際に大きな支障となり、地域の発展や安全確保の妨げとなることが少なくありません。また、適切な管理が行われないことで、周辺環境の悪化や治安上の問題が生じる可能性も指摘されています。

さらに、相続登記が放置されることで、時間の経過とともに相続人の数が増加し、手続きがより複雑化するという悪循環も生じていました。例えば、祖父の代から登記が放置されている場合、相続人が10人以上になることも珍しくありません。そうなると、遺産分割協議を進めるだけでも大変な労力と時間がかかるものです。

こうした問題を解決するため、国は相続登記を義務化することで、所有者不明土地の発生を予防し、既存の問題の解決に繋げようとしています。正当な理由なく相続登記を怠った場合には、10万円以下の過料が科される可能性もありますが、これは罰則というよりも、適切な手続きを促すための制度であるとご理解ください。

この義務化は、確かに新たな負担となる側面もあります。しかし、長期的には土地の有効活用や地域の活性化につながる、極めて重要な制度改正と言えます。

登記しないとどうなる?リスクと過料の詳細

相続登記を怠った場合、過料の発生だけでなく、実生活に大きな影響が及ぶ可能性があります。義務に違反した場合の具体的なペナルティと、それ以外のリスクについて詳しく見ていきましょう。

10万円以下の過料が発生する条件と例外

相続登記の義務違反に対する過料は、単に期限を過ぎただけで自動的に発生するわけではありません。法務局が個別の事情を審査し、正当な理由がないと判断された場合に科されるものです。

過料が発生する具体的な条件は、相続を知った日から3年以内に登記申請を行わず、かつ法務局からの催告にも応じなかった場合とされています。ただし、この「3年以内」という期間は、親御さんが亡くなられてからの年数だけを指すものではありません。相続人の方が相続の事実を知った時点、つまり親御さんの死亡を知った日からカウントが始まります。

例えば、疎遠だった親族の死亡を1年後に知った場合、その時点から3年間が猶予期間となります。また、相続人様が複数いらっしゃり遺産分割協議が長期化している場合や、相続人様の中に認知症の方や未成年者がいて手続きが複雑化している場合など、やむを得ない事情があれば「正当な理由」として認められる可能性があります。

正当な理由として認められやすい事例としては、相続人が重篤な病気で入院中である場合、相続財産が債務超過で相続放棄を検討されている場合、遺言書の有効性について争いが生じている場合などです。一方で、「手続きが面倒だったから」「費用がかかるから」「地方の土地で価値がないから」といった理由は、正当な理由として認められない点にご注意ください。

過料の金額は10万円以下とされていますが、実際の金額は違反の態様や期間、相続財産の規模などを総合的に考慮して決定される傾向にあります。初回の軽微な違反であれば数万円程度となることが多いものの、悪質な場合や繰り返し違反した場合は上限に近い金額が科される可能性もありますので、油断はできません。

不動産売却・権利関係・経済的損失のリスク

過料以上に深刻な問題となるのが、相続登記を怠ることで生じる実質的な損失です。登記されていない不動産は法的に「所有者不明」の状態となり、様々な制約や不利益を受けることにつながります。

最も直接的な影響は、不動産の売却ができないことです。不動産を売却するには、売主が正当な所有者であることを登記簿で証明する必要があります。相続登記が済んでいない土地や建物は、たとえ実質的に相続人の方のものであっても、第三者に対して所有権を主張できません。急にまとまった資金が必要になった際や、維持管理が困難になった時でも、その価値ある資産を活用できないという状況に陥ってしまうのです。

金融機関からの融資を受ける際も同様の問題が生じます。不動産を担保として融資を申し込む場合、登記簿上の所有者と申込者が一致していることが大前提です。相続登記が完了していない不動産は担保価値が認められず、事業資金や住宅ローンの借り換えなどで不利になる可能性も考えられます。

さらに深刻なのは、時間が経つにつれて権利関係が複雑化することです。相続人様の中に新たに死亡された方がいた場合、その方の相続人も加わることになり、関係者が雪だるま式に増えていくことがあります。例えば、当初3人だった相続人様が、10年後には配偶者の方やお子様を含めて15人以上になることも珍しくありません。

このような状況になると、遺産分割協議を成立させること自体が非常に困難となります。相続人様の中に連絡が取れない方や海外在住者がいらっしゃる場合、手続きには膨大な時間とコストがかかるのが実情です。もし相続人様の一人が認知症になった場合は成年後見人の選任が必要となり、さらに手続きが複雑化してしまいます。

経済的な損失という観点では、固定資産税の問題も見過ごせません。相続登記が済んでいない不動産であっても、固定資産税は発生し続けます。しかし、納税通知書の宛先が故人のままになっているために、延滞金が発生したり、最悪の場合は差し押さえの対象となったりする可能性もあります。

地方の不動産には特有のリスクも存在します。人口減少や過疎化の進行により、時間が経つほど不動産価値が下落する傾向が見られます。今は価値が低いと思われる土地であっても、将来的に道路拡張や再開発の対象となる可能性はゼロではありません。そのような貴重な機会を逸失してしまうリスクも考慮する必要があります。

また、近隣とのトラブルに巻き込まれる可能性も出てきます。境界線の問題や越境物の処理など、不動産に関するトラブルは所有者でなければ適切に解決できません。相続登記が済んでいない状態では、こうした問題に適切に対応することが難しく、状況がさらに悪化する恐れもあります。

これらのリスクを避けるためには、できるだけ早期に相続登記の手続きを完了させることが何よりも重要です。相続登記は一度完了すれば、基本的に変更の必要がない手続きですので、早めの対応で将来の不安を解消し、相続された財産を適切に活用できる環境を整えていきましょう。

手続き方法は2つ!救済制度と正式登記の選び方

相続登記の義務化に対応するため、実は二つの選択肢が用意されています。一つは簡易的な「相続人申告登記制度」、もう一つは従来通りの「正式な相続登記」です。それぞれにメリット・デメリットがあり、皆様の状況に応じて適切な方法を選ぶことが重要になります。

【簡単】相続人申告登記制度

相続人申告登記制度は、令和6年4月の義務化と同時に新設された、まさに「救済制度」と言えるものです。「とりあえず義務違反を回避したい」という方にとっての、暫定的な手続きであるとご理解ください。

この制度の最大のメリットは、その手続きの簡単さにあります。遺産分割協議を行う必要がなく、相続人の方の一人が単独で申請できるため、他の相続人様との調整に時間がかかっている場合でも、まずは過料を避けることが可能です。必要な書類も比較的少なく、戸籍謄本や住民票など基本的な書類があれば手続きできます。費用面でも、登録免許税が非課税となっており、ご自身で申請される場合は数千円程度の実費のみで済むことがほとんどです。

ただし、この制度には重要な制限がある点にご留意ください。申告登記を行っても、不動産の所有権が完全に明確になるわけではありません。登記簿には「相続人である」という事実が記録されるだけで、具体的に誰が何割の持分を持つかまでは決まらないのです。そのため、将来的に土地を売却したり、担保に入れたりする際には、改めて正式な相続登記を行う必要が生じます。

この制度は一時的な措置という側面が強く、根本的な解決にはならないということを理解しておきましょう。ご家族間の話し合いが難航している場合や、まずは時間を稼ぎたい場合には有効ですが、いずれは正式な手続きを行うことになる可能性が高いです。

【本格】正式な相続登記

正式な相続登記は、これまでも行われてきた相続手続きです。この方法では、遺産分割協議を経て、誰がどの不動産をどの割合で相続するかを明確に決定し、その結果を登記簿に反映させます。

正式な相続登記の最大のメリットは、その「完全性」にあるでしょう。手続きが完了すれば、不動産の所有権が法的に確定し、売却、贈与、担保設定など、あらゆる不動産取引が可能になります。将来的に土地を有効活用したい場合や、次の世代への相続をスムーズに進めたい場合には、この方法が最も適しています。

一度正式な相続登記を完了させれば、同じ不動産について再度手続きを行う必要がありません。相続人申告登記とは異なり、まさに「完全解決」という安心感を得られるのが大きな特徴です。

しかし、正式な相続登記には相応の負担が伴うことも事実です。まず、相続人様全員の合意が必要となるため、相続人様が多数いらっしゃる場合や、関係が複雑な場合には多くの時間を要することが考えられます。必要書類も多岐にわたり、被相続人様の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、遺産分割協議書などが必要です。

費用面でも、不動産の固定資産税評価額の0.4%の登録免許税がかかります。例えば、評価額1,000万円の土地であれば4万円の税金が必要となります。さらに、司法書士に依頼される場合は、10万円から20万円程度の報酬も発生することが一般的です。

どちらを選ぶべき?判断基準

どちらの手続きを選択するかは、ご自身の具体的な状況と将来の計画によって決まります。判断される際の主要なポイントをご紹介いたしましょう。

項目

相続人申告登記(簡易手続き)

正式な相続登記

目的

義務の履行(暫定的)

権利関係の確定(恒久的)

メリット

簡単、安い、単独で申請可能。過料回避が優先される場合に有効。

不動産の売却・担保設定が可能。根本的な解決。

デメリット

売却や担保設定は不可。再度正式登記が必要になる可能性あり。

複雑な手続き、費用がかかる。相続人全員の協力が不可欠。

費用目安

数千円(書類取得の実費のみ)

数万円〜数十万円(登録免許税+専門家報酬など)

こんな方におすすめ

期限が迫っている、遺産分割協議に時間がかかりそう、とりあえず義務を履行したい。

将来的に不動産を売却・活用したい、権利関係を完全に確定させたい、相続人全員の協力が得られる。

また、時間的な余裕も重要な判断基準になります。相続発生から3年の期限まで時間がない場合や、相続人様間の話し合いが難航している場合は、現実的にまず相続人申告登記で過料を回避し、その後に正式な手続きを進めるという段階的な手順を取ることもできます。一方、時間に余裕があり、相続人様間の関係も良好であれば、最初から正式な相続登記を目指す方が効率的であると言えます。

経済的な負担も考慮すべきポイントです。正式な相続登記には相応の費用がかかりますが、相続人申告登記を行った後に結局正式な手続きを行う場合、二重の手間と費用が発生することになります。長期的な視点で考えれば、最初から正式な手続きを行う方が経済的かもしれません。

ご家族関係の複雑さも判断材料の一つです。相続人様が多数いらっしゃる場合、疎遠な親族の方がいる場合、過去にご家族間でトラブルがあった場合などは、まず相続人申告登記で時間を確保し、専門家のサポートを受けながら丁寧に話し合いを進める方が良いかもしれません。

どちらの方法を選択されるにしても、相続に関する手続きは複雑であり、個々の事情によって最適解が異なります。特に、複数の不動産がある場合や、相続人様の関係が複雑な場合は、司法書士などの専門家に相談されることで、ご自身の状況に最も適した方法を見つけることができます。

手続きの流れと必要書類・費用

相続登記義務化により、多くの方が手続きについて不安を感じていらっしゃることと思います。手続きには「救済制度」を利用する方法と「正式な相続登記」を行う方法の二つがあり、それぞれ流れや費用が異なります。ここでは、実際のお手続きの進め方から必要な書類、かかる費用までご説明いたします。

相続人申告登記の手続きと必要書類

相続人申告登記という救済制度は、正式な相続登記と比較して、非常に簡易的な手続きです。この制度は、相続が発生したことと相続人の存在を法務局に報告するもので、複雑な遺産分割協議を行わずに義務を履行できる仕組みであると認識してください。

手続きの流れは比較的シンプルに進みます。まず、被相続人(亡くなられた方)の死亡を確認できる除籍謄本と、申請される方ご自身が相続人であることを証明する戸籍謄本を取得します。その後、相続人申告登記申請書を作成し、必要書類を添付して管轄の法務局に提出するという流れです。

必要書類は最小限に抑えられています。基本的な書類としては、被相続人様の除籍謄本、申請人様の戸籍謄本(被相続人様との続柄が分かるもの)、申請人様の住民票の写し、そして相続人申告登記申請書が挙げられます。他の相続人様の同意書や印鑑証明書は不要であり、遺産分割協議書の作成も必要ありません。ただし、相続関係が複雑な場合(養子縁組や離婚歴がある場合など)は、相続関係を明確にするための追加書類が求められることもあります。

この制度の大きな特徴として、申告後も3年以内に正式な相続登記を行う必要があることを忘れてはいけません。あくまで「時間稼ぎ」の制度という位置づけですが、急いで義務を履行されたい場合には有効な手段と言えます。

正式登記の手続きと必要書類

正式な相続登記は、不動産の名義を実際に変更し、権利関係を確定させる手続きです。この手続きを完了すると、登記簿上の所有者が変更され、不動産の売却や担保設定なども可能になります。

手続きの流れは、まず相続人全員の確定から始まります。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得し、相続人を漏れなく特定することが重要です。次に、不動産をどのように分けるかを相続人全員で話し合い(遺産分割協議)、協議がまとまったら遺産分割協議書を作成します。そして最後に、登記申請書と必要書類を法務局に提出するという流れで進めます。

必要書類は救済制度と比べて多岐にわたります。以下の項目でご確認いただけます。

【必要書類リスト】

書類の有効期限にも注意が必要です。印鑑証明書は発行から3か月以内、住民票の写しなどは一般的に3か月以内のものを使用しますので、取得のタイミングを考慮して準備を進めましょう。

それぞれの費用目安と節約方法

費用の面では、救済制度と正式登記で大きな違いがあります。救済制度である相続人申告登記の場合、登録免許税は非課税ですので、かかる費用は主に必要書類の取得費用のみです。戸籍謄本が450円、除籍謄本が750円、住民票の写しが300円程度ですから、合計でも2,000円から3,000円程度で済むことが一般的です。

一方、正式な相続登記では、固定資産評価額の0.4%の登録免許税がかかります。例えば、評価額1,000万円の土地の場合、4万円の登録免許税が必要となります。これに加えて、各種証明書の取得費用として1万円から2万円程度、遺産分割協議書の作成に時間を要した場合の諸費用なども考慮すると、ご自身で手続きを行っても5万円から7万円程度はかかると考えておくと良いでしょう。

費用を節約する方法としては、まず必要書類を効率的に取得することです。戸籍謄本などは郵送でも取得できますので、複数回役場や法務局に足を運ぶ交通費を考慮すると、郵送を活用する方が結果的に安くなることもあります。また、登記申請も郵送やオンライン申請が可能です。特にオンライン申請では登録免許税が若干安くなる場合もありますので、ご検討ください。

さらに、ご兄弟姉妹など複数の相続案件がある場合は、同時に手続きを進めることで、共通する書類(被相続人様の戸籍謄本など)の取得費用を節約できます。ただし、節約を意識しすぎて書類不備や手続きミスが発生すると、かえって余計な費用や時間がかかってしまう可能性もありますので、費用と確実性のバランスを考えることが大切です。

自分でやる vs 専門家依頼の判断基準

手続きをご自身で行うか、専門家へ依頼するかの判断は、時間、労力、リスク、費用のバランスで考えることが重要となります。ご自身で手続きを進めるメリットは、費用を抑えられることと、手続きの流れを深く理解できることです。一方で、平日の日中に法務局や市役所に足を運ぶ時間の確保、複雑な書類作成、手続きミスのリスクなどのデメリットも存在します。

ご自身で手続きを行うのに適しているケースとしては、相続人の方が配偶者とお子様のみで関係が明確、不動産が1つか2つ程度、相続人様間で争いがない、そして平日に時間を確保できる、といった条件が揃っている場合です。また、救済制度である相続人申告登記であれば、手続きが比較的簡素なため、ご自身で行いやすいと言えるでしょう。

専門家への依頼を検討すべきケースは多岐にわたります。例えば、相続人様が多数いらっしゃる場合、相続関係が複雑(再婚、養子縁組、認知など)な場合、不動産が複数の都道府県にまたがる場合、相続人様間で意見が分かれている場合、あるいは平日に時間を確保するのが困難な状況などです。特に、相続人様の中に認知症の方がいらっしゃる場合や、海外在住の相続人様がいらっしゃる場合などは、専門的な知識が不可欠となるため、専門家への依頼を強くおすすめいたします。

費用面では、司法書士に依頼した場合、報酬として8万円から15万円程度が一般的です。これに登録免許税や必要書類の取得費用が加わるため、総額で12万円から20万円程度になることが多いでしょう。一見高額に感じられるかもしれませんが、手続きの確実性、時間の節約、将来のトラブル回避などを考慮すると、状況によっては合理的な選択であると考えることもできます。

まとめ

相続登記の義務化により、これまで放置されがちだった土地の名義変更が法的な義務となりました。確かに書類の準備や法務局での手続きには、ある程度の時間と労力がかかるものです。しかし、早めに取り組むことで選択肢が増え、精神的なご負担も軽減されることでしょう。特に相続人様が複数いらっしゃる場合や、古い土地で境界が曖昧な場合などは、時間が経てば経つほど解決が複雑になる傾向にあります。

義務化されたからといって、必ずしも全ての手続きを早急に完了させる必要はありません。まずはご自身の現在の状況を整理し、どのような選択肢があるのかを把握することから始めてみてください。相続放棄という選択肢もございますし、複数の土地がある場合は優先順位をつけて進めることも可能です。

何よりも大切なのは、一人で悩まずに専門家に相談することです。司法書士や弁護士は、皆様の状況に応じて最適な進め方を一緒に考えてくれます。初回相談を無料で対応している事務所も多いため、「こんなことで相談していいのだろうか」と遠慮される必要はございません。まずは現状を専門家に相談され、ご自身に合った対応策を見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。

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