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Q 長年親の介護をしてきた場合、寄与分が認められますか?

 

Q 長年親の介護をしてきた場合、寄与分が認められますか?

A 認められる場合があります。

 共同相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした人がいる場合、遺産からその寄与分を控除した残りを相続財産として相続分を算定し、その寄与をした人の相続分に寄与分を加えることで、相続人の公平を図るのが寄与分の制度です。

 病気や高齢で介護を要する状態になった被相続人を、看病したり身の回りの世話をすることを「療養看護」と呼び、療養看護をした者に寄与分が認められる場合があります。

寄与分が認められるための要件(条件)

 療養看護について寄与分が認められるためには次の要件(条件)を満たす必要があります。

1 病気、老化により被相続人が療養看護を必要とする状態でなければなりません。

2 被相続人との身分関係から通常期待される程度を越える特別な貢献をしていることが必要です。

3 寄与行為の結果として被相続人の財産を維持または増加させていること必要です。

1 病気、老化により被相続人が療養看護を必要とする状態でなければなりません。

 健康な被相続人のために家事を手伝っていても、寄与分は認められないのです。

 被相続人が介護保険の要介護度1程度の状態だと、寄与分は認められにくいといわれています。被相続人が要介護度2以上の状態にあることが、寄与分が認められる目安といえます。

 要介護度1とは、食事、排泄、着替えは何とか自分ででき、日常生活の能力や理解力が一部低下し、部分的な介護が必要な状態です。この程度の状態の被相続人の世話をしても特別の寄与があったとは認められづらいです。

 要介護度2とは、歩行や起き上がりがひとりでできないことが多く、食事、着替えはなんとか自分でできるけれど、排泄は一部援助が必要な状態です。このような状態の被相続人を療養看護することで寄与分が認められる可能性があります。

 なお、1997年9月末にすべての医療機関において身内の付添看護が廃止され、完全看護体制になりました。入院患者の看護は病院によって行われるので、親族が献身的に病院に足を運び世話をしても、原則として寄与分は認められません。しかし、医師が親族の付添看護の必要性を特別に認めた場合は、例外的に療養看護の必要性が認められることがあるといわれています。

2 被相続人との身分関係から通常期待される程度を越える特別な貢献をしていることが必要です。

  同居している被相続人の分まで一緒に食事を作ってあげたり、病院に行く際に付き添ったり、という程度では特別の寄与とはいえません。

3 寄与行為の結果として被相続人の財産を維持または増加させていること必要です。

  たとえば、療養看護により、ヘルパーに支払う報酬等の費用の出費を免れたなど、寄与行為と財産の維持・増加との間に因果関係が必要になります。

  話し相手になるなど被相続人を精神的に支えても、寄与分は認められません

療養看護について寄与分が認められた場合の寄与分の額

 療養看護行為の報酬相当額(日当)に療養看護をした日数を掛け、それに裁判所が裁量で判断する割合(裁量割合)をかけて計算するのが原則です。

 報酬相当額(日当)×日数×裁量割合=寄与分の額

 介護保険における介護報酬基準がもとに計算することが多くなっています。要介護度、地域などによって異なりますが、概ね日当6000円から9000円程度の範囲で計算されます。

 裁量割合を掛けるのは、介護報酬基準は介護の資格を持っている者への報酬基準であり、介護者自身の報酬ではないこと、扶養義務を負う者による介護か、そうでない者による介護かによって報酬額を変えるべきとの配慮からです。裁量割合は概ね0.5から0.8程度の間で判断されています。ただし、裁判例の中には裁量割合を掛けていないものも見られます。

 なお、仕事を辞めて介護をした場合に、退職前の年収を基準に寄与分の計算をすることを要求する相続人がいますが、このような主張は認められません。

裁判例の紹介

【認められた裁判例】

・盛岡家庭裁判所昭和61年4月11日審判

 被相続人の子が20年余にわたり病弱で老齢の被相続人と同居して扶養し、とくに被相続人の認知症が悪化してから死亡に至るまでの10年間は常に被相続人に付添って療養看護をしてきたという事案で、少くとも後半の10年間の療養看護に特別の寄与を認めました。被相続人は他人を付添婦として雇った場合に支払うべき費用1971万円の支払を免がれたと認定しました。しかし、その子が職業付添婦ではないことや6年間くらいは被相続人の療養看護の傍ら、家族のための一般家事労働をなす余裕もあったことを考慮し、上記金額の60%である1182万6000円の寄与分を認めました

・大阪家庭裁判所平成19年2月8日審判

 被相続人の妻は、平成元年ころから、短期の検査入院を繰り返すようになり、平成7年に死亡したところ、その妻の入院中は、被相続人の子Aの妻が毎日病院に通うほか、A夫婦で、被相続人の家事全般の世話をしていました。被相続人の妻が死亡後は、Aの妻が昼食と夕食を作り、被相続人方に届けるほか、日常的な世話を行っていました。また、被相続人は、平成13年までは一人で新幹線に乗り、他の子の家を訪問してしばらく滞在するなどしていました。しかし、平成14年2月ころから被相続人に認知症の症状が顕著に出るようになったため、Aは、被相続人の3度の食事をいずれもA宅でとらせるようになり、被相続人が他の子を訪問するときは、Aが往復とも被相続人に付きそうようになりました。このころから、被相続人は常時、見守りが必要な状態となり、また、被相続人の排便への対応にもAは心を砕いていました。

 この事案で裁判所は、平成14年以降の3年間については、特別の寄与があったものと認めましたが、平成14年2月より以前の被相続人に対する日常生活上の世話は、親族間の扶養協力義務の範囲のものであるとして、特別の寄与を認めませんでした。そして、Aの被相続人に対する身上監護については、親族による介護であることを考慮し、1日当たり8000円程度と評価し、その3年分(1年を365日として)として、8000円×365日×3=876万円を寄与分として認めました

・東京高等裁判所平成22年9月13日決定

 被相続人が昭和61年に脳梗塞で倒れ、昭和62年まで入院しました。当時の病院は完全看護ではなく、約2か月間、長男の費用負担で、順次二人の家政婦の付添いを頼んだものの長くは引き受けてもらえず、それ以外の期間は長男の妻が主として付添いをし、交換下着の洗濯なども行っていました。被相続人は、昭和62年に退院して自宅に戻りましたが、右半身不随で身体障害者2級の認定を受けており、週2回、長男の妻が被相続人を車に乗せてリハビリのため病院に連れて行く生活となりました。被相続人は、判断能力には全く問題がなく、会話もでき、またトイレに行ったり、用意してもらった食事を自分で食べたりすることはできたものの、一人で入浴はできず、長男の妻が週2回、通院の前日に被相続人を介助して入浴させていました。被相続人は、リハビリの仲間と車椅子で旅行に出かけることがありましたが、普段は外出することもおっくうになり、通帳からお金を引き出すときにはその都度、長男の妻に頼んでいました。被相続人は、亡くなる半年位前から、毎晩、失禁するようになったため、夜間はおむつを使用することとなり、長男の妻がおむつ交換や粗相してしまった布団の後始末などをしました。

 この事案で、第1審の静岡家庭裁判所沼津支部は、長男の妻は、通院や入浴の介助など被相続人の世話を約13年間、主として担ってきたものであり、長男と婚姻生活になじむ間もなく、義父の世話を担うこととなった長男の妻の苦労は相当なものだったと認定したものの、長男は、子らの中で唯一、成人後も継続して被相続人が所有する不動産において被相続人と同居してきたこと、被相続人は、退院後は、一日中付添いが必要な状態にあったわけではなく、自分でトイレに立ったり、食事を食べることはできたから、長男の妻は、被相続人の昼食の支度をした上で、外出やパートに出ることもできたこと、入院期間中の付添いは一日当たりの拘束時間は長かったものの付添介護期間が長期でなかったこと等に鑑みて、同居の直系親族としての通常期待される扶養義務の範囲を超える療養看護をしたとまでは評価できないとして寄与分を認めませんでした

 これに対し、第2審(抗告審)である東京高等裁判所は、長男妻による被相続人の入院期間中の看護、その死亡前約半年間の介護は、本来家政婦などを雇って被相続人の看護や介護に当たらせることを相当とする事情の下で行われたものであり、それ以外の期間についても長男妻による入浴の世話や食事及び日常の細々した介護が13年余りにわたる長期間にわたって継続して行われたものであるから、長男妻による被相続人の介護は、同居の親族の扶養義務の範囲を超え、相続財産の維持に貢献した側面があると判断し、長男の寄与分を認めました。そして、長男妻による介護が、相続財産の維持に貢献した程度を金銭に換算すると200万円を下ることはないと理由を述べ、寄与分200万円を認めました。

【認められなかった裁判例】

・広島家庭裁判所呉支部平成22年10月5日審判

 被相続人の養子が、3年ほど、当時の居住してた山梨県から交通費をかけて養親である被相続人を訪ね、家事を手伝いましたが、被相続人の健康状態も比較的良好であったことからすれば、家事の援助は寄与分にあたらないと判断しました。

 またこの養子は、朝と夕方被相続人宅に行き、朝はパンを焼いたり簡単な朝食を作ったり、夜は夕食を差し入れたりしていたと述べ、時々は、被相続人が養子宅を訪ね一緒に食事をすることもあったと主張しましたが、裁判所は、養子の説明を前提としても、それは親族間の協力にとどまり、遺産の維持、形成に対する寄与には当たらないと判断しました。

まとめ

 以上が療養看護型の寄与分についての説明になります。寄与分は思っていたよりも認められないと感じた方が多いのではないでしょうか?

 寄与分が認められなければ、被相続人と同居して世話をしてきた子も、長年疎遠にしていた子も、同じ相続人として同一の権利が認められます。寄与分は認められないことが多いので、財産の配分を変えたい場合、遺言書を作成するなどの生前の対策が必要になります。

 なお、2019年7月1日施行の民法改正によって、相続人以外の寄与分も認められるようになりました。具体的には、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族(特別寄与者といいます)は、相続の開始後、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができます。ただし、調停または審判の申立は、特別寄与者が被相続人が亡くなったこと及び相続人を知ったときから6か月以内にしなければなりません。また亡くなったこと等を知らなくても、死亡から1年が経過すると申立ができなくなります

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この記事の執筆者

弁護士 伴 広樹

経歴

神奈川県厚木市出身。1997年司法試験合格後、2000年に司法修習を修了(52期)し、弁護士登録。横浜市内の法律事務所に勤務後、2004年に伴法律事務所を開設。年間280件の相続の法律相談に対応している。
弁護士業務では①お客様の期待に沿う徹底した調査,②お客様が納得できる提案力,③お客様が安心して任せられる確実かつ迅速な処理の3つを心がけており、実際に業務に対しての評価も高い。

活動・公務など

・神奈川大学非常勤講師(2009年9月~2016年3月)
・明治大学リバティアカデミー(市民講座)講師(2015年~2016年)
・横浜弁護士会(現神奈川県弁護士会)常議員(2009年4月~2010年3月)
・一般社団法人神奈川健康生きがいづくりアドバイザー協議会神奈川健生成年後見センター運営委員会委員(2015年8月~)
・セミナー講師としての活動 川崎市役所,東京地方税理士会保土ヶ谷支部,神奈川県宅地建物取引業協会横浜中央支部,神奈川青年司法書士協議会など各種団体におけるセミナー講師を担当

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