限定承認の手続きは複雑で難しく,気軽に利用はできません。
限定承認は,相続によって取得したプラスの財産の限度内でのみ,被相続人のマイナスの債務を負担するというもので,相続人とっては都合のよい制度と思われるかもしれませんが,実際の利用はそれほど多くありません。それは限定承認をすると,面倒で難しい清算手続きを行わなければならないことが原因の一つです。
まず限定承認をすると,遺産は相続人の固有財産と分離して管理されます。そして公告や催告等により債権者を確定したうえで,法律が定める順番に従って,債務を弁済していかなくてはなりません。債務を弁済するために遺産を売却する必要がある場合(金融資産だけでは完済することができない場合),不動産などの遺産を競売するか,あるいは家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い遺産の全部または一部の価額を相続人が弁済しなければなりません(民法932条)。
また,限定承認をすると被相続人が亡くなった時点で遺産全体について時価額で譲渡があったものとみなされ譲渡所得税が課税されるという重大な効果が発生します(みなし譲渡所得課税といいます)。
限定承認は専門家とよく相談のうえ行ったほうがよいでしょう。