公正証書遺言とは?作成の手順と費用を解説
「自分の死後、家族が財産をめぐってトラブルになるのではないか」
「手続きの負担をできるだけ軽くしたい」
相続について考える際、このような不安を抱える方は少なくありません。こうした不安を軽減する方法の一つが「公正証書遺言」です。
公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、内容の不備や形式の不備による無効リスクが低く、相続手続きを円滑に進めやすいという特徴があります。遺言は「どこで・誰に・何をもらうか」を明確に決めることが重要であり、早めの準備が安心につながります。
この記事では、公正証書遺言の基本的な仕組みから、具体的な作成手順や費用、注意点までをわかりやすく解説します。相続トラブルを防ぎ、円滑に手続きを行うためにも、ぜひ参考にしてください。
公正証書遺言が選ばれる理由
遺言書には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、その中でも公正証書遺言がよく選ばれるのはなぜでしょうか。主な理由は、他の方式に比べて内容や形式の不備によるトラブルが起こりにくく、安心して作成できることにあります。手軽に作成できる自筆証書遺言と比較しながら、公正証書遺言のメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは、民法に基づいて公証人が作成する証書であり、遺産相続における意思を明確に記載する方法です。遺言者の真意をもとに、内容を公正証書として証明するため、形式面での問題が起きにくいという特徴があります。全国どこでも公証役場で手続が可能で、検索や一覧から最寄りの役場を確認できます。
■ 公正証書遺言の基本的な仕組み
公正証書遺言は、公証役場で以下の流れにより作成されます。
- 遺言者が内容を公証人に伝える
- 公証人が法律に基づき文書を作成
- 証人2名の立会いのもと内容を確認
- 遺言者・証人・公証人が署名押印
このように、公証人が関与することで、遺言の内容が保たれ、法律に沿って正しく手続きが行われます。
■ 公証人の役割と法的位置づけ
公証人は法務大臣によって任命される公務員であり、裁判官や検察官などと同様に高い専門性を持つ立場です。遺言の内容について直接助言するというより、法律に基づいた形で正確に作成する役割を担います。
自筆証書遺言と比較すると、公正証書遺言は手間や費用がかかるものの、法的な確実性が高く、トラブルの防止に効果的とされています。公正証書遺言は、相続トラブルを防ぎ、確実に意思を残すための有効な手段です。費用や手間はかかりますが、その分、安心して利用できる点が大きな特徴です。状況に応じて適切な遺言方法を選ぶことが重要です。
自筆証書遺言との違いを比較
公正証書遺言と自筆証書遺言には、それぞれ特徴があります。自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、一定の注意点もあります。主な違いを整理すると以下のとおりです。
|
項目 |
公正証書遺言 |
自筆証書遺言 |
|
有効性 |
形式不備による無効リスクが低い |
法律の要件を満たせば有効 |
|
作成方法 |
公証人が作成(本人の意思を確認) |
原則として全文を自筆で作成(※財産目録は例外あり) |
|
検認 |
不要 |
原則必要(※法務局保管制度利用時は不要) |
|
無効リスク |
比較的低い |
形式不備などにより無効となる可能性あり |
|
改ざん・紛失 |
低い(原本は公証役場で保管) |
保管方法によってはリスクあり |
|
保管方法 |
公証役場で保管 |
自己保管または法務局保管制度 |
|
費用 |
財産額に応じて数万円~ |
基本無料(法務局保管は数千円) |
■ 「検認」のポイント
特に重要なのが「検認」の有無です。
検認とは、遺言書の内容を有効・無効と判断する手続きではなく、
・遺言書の存在
・内容や状態
を確認し、改ざん防止を目的として家庭裁判所で行われる手続きです。
■ 検認が与える影響
自筆証書遺言(法務局保管を除く)の場合、検認を経なければ原則として遺言書を使った手続きが進められません。
- 申立てや戸籍収集などの準備が必要
- 完了まで数週間〜1ヶ月程度かかることもある
ただし、「一切の相続手続きが進められない」とまでは言えず、個別の事情によって対応が異なる場合もあります。
公正証書遺言のメリット・デメリットを整理
公正証書遺言は多くの利点がありますが、デメリットも理解したうえで選択することが重要です。
【メリット】
- 形式不備による無効リスクが低い
公証人が関与して作成されるため、法律上の要件を満たした遺言書になりやすく、形式不備による無効のリスクが低いとされています。 - 改ざん・紛失のリスクが低い
原本は公証役場で保管されるため、自己保管に比べて改ざんや紛失のリスクが低いといえます。 - 検認が不要で手続きを進めやすい
家庭裁判所での検認手続きが不要なため、遺言書を用いた相続手続きを比較的スムーズに進めやすい点が特徴です。
【デメリット】
- 作成費用がかかる
財産額に応じた公証人手数料が発生し、弁護士などに依頼する場合は別途費用がかかることがあります。 - 作成に一定の手間と時間がかかる
必要書類の収集や公証人との事前打ち合わせなど、準備に時間を要する場合があります。 - 証人が2名必要
作成時には証人2名の立会いが必要であり、証人は遺言内容を知ることになります。
※ただし、利害関係者(相続人など)は証人になれないため注意が必要です。
公正証書遺言の作成手順と必要書類
公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、一定の手順と書類準備が必要です。ここでは、一般的な流れと必要書類を解説します。
■ 相談から完成までの流れ
公正証書遺言の作成は、一般的に以下の流れで進みます。
- 公証人または専門家へ相談する
誰にどの財産をどのように渡したいか、基本的な内容を整理します。 - 必要書類を収集する
本人確認資料や相続関係、財産に関する書類を準備します。 - 遺言の文案を作成・調整する
公証人が遺言者の意思に基づき文案を作成し、内容を確認・修正します。 - 公証役場で遺言を作成する
証人2名の立会いのもと、公証人が内容を読み上げ、遺言者・証人・公証人が署名押印します。 - 原本の保管と正本の交付
原本は公証役場で保管され、遺言者には正本・謄本が交付されます。
作成は、あらかじめ予約を行い、日時を決めたうえで進めます。本人確認のため、運転免許証などの身分証明書を提出し、生年月日や住所などの情報をもとに確認が行われます。
当日は、公証人が遺言内容を読み聞かせ、問題がなければ署名・押印します。証人は2人必要で、各人が立ち会い、最終的に証書として完成します。
■ 事前に準備すべき書類
必要書類はケースによって異なりますが、一般的には以下のようなものが求められます。
- 遺言者の印鑑登録証明書(通常は発行後3ヶ月以内)と実印
- 遺言者および相続人の戸籍謄本(続柄が確認できるもの)
- 相続人以外に遺贈する場合は、その方の住民票など
- 財産に関する資料
(不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金の通帳コピーなど)
※自筆証書遺言とは異なり、「出生から死亡までのすべての戸籍」が必須となるわけではありません。
遺言には、土地や金銭などの財産を明確に記載する必要があります。例えば、固定資産税の納税通知書をもとに課税額を確認し、割合や分配内容を決めます。
また、寄付や配偶者への相続割合なども指定可能であり、事業承継などにも活用されるケースが多いです。
■ 注意点(実務上のポイント)
- 書類の内容や不足によっては、作成までに時間がかかることがある
- 証人は利害関係者(相続人など)はなれない
- 財産の特定が不十分だと、後の手続きに支障が出る可能性がある
■ 書類準備の負担について
戸籍や不動産資料の収集は手間がかかる場合がありますが、郵送での請求や、専門家への依頼することで負担を軽減することも可能です。無理のない範囲で進めることが重要です。
公正証書遺言作成にかかる費用と相場
公正証書遺言の作成には、主に公証役場へ支払う「公証人手数料」と専門家へ依頼した場合の「報酬」が発生します。
公証人手数料の計算方法
公証人手数料は「公証人手数料令」に基づき、遺言で財産を取得する人ごと(受遺者・相続人ごと)に、その取得額に応じて計算されます。
|
財産の価額 |
手数料 |
|
100万円超~200万円以下 |
7,000円 |
|
200万円超~500万円以下 |
11,000円 |
|
500万円超~1,000万円以下 |
17,000円 |
|
1,000万円超~3,000万円以下 |
23,000円 |
|
3,000万円超~5,000万円以下 |
29,000円 |
※上記は一部の区分であり、さらに高額の場合の区分も定められています。
- 手数料は「相続人ごと」に計算される
- 遺言全体の財産額が一定以上の場合、遺言加算(通常11,000円)が加わる
- 正本・謄本の交付費用(数千円程度)が別途必要
※「1億円以下なら必ず加算される」といった一律のルールではなく、条件に応じて加算されます。
費用は財産の合計額に応じて算出され、公証人の業務に対する手数料や、出張が必要な場合の交通費・日当などが含まれます。自宅や病院など現地での作成も可能で、病気などで外出できない場合でも対応できます。
■ 専門家への依頼報酬
専門家に依頼する場合、以下のような費用が目安となります。
- 行政書士(10万円~20万円程度)
遺言書の文案作成、公証人との調整、書類収集などをサポート - 司法書士(10万円~30万円程度)
遺言作成支援に加え、相続発生後の不動産登記などの手続きにも対応可能 - 弁護士(20万円~40万円程度)
相続トラブルの予防や、紛争の可能性があるケースへの対応に強み
※費用や対応範囲は事務所ごとに異なります。
専門家は「代理で遺言を作成する」のではなく、あくまでサポート役であり、公正証書遺言は必ず公証人が作成することを覚えておきましょう。費用は案件の複雑さや財産内容によって変動します。
公正証書遺言で注意しておきたいポイント
「公証人が関与するから安心」と思われがちな公正証書遺言ですが、事前に確認しておくべき注意点もあります。適切に作成するために、押さえておきたいポイントを解説します。
公証人は遺産分割の内容まで調整する立場ではない
公正証書遺言は、公証人が関与することで法律に合った正しい形式で遺言が作成できる制度です。ただし、公証人は中立的な立場で手続きを行うため、遺産の分け方そのものについて積極的に調整や助言を行う立場ではありません。
例えば、「長男に全財産を相続させる」といった内容の遺言も、遺言者の意思に基づくものであれば作成されることがあります。ただし、このような内容は他の相続人の遺留分を侵害する可能性があり、後に遺留分侵害額請求が行われるなど、相続人間のトラブルにつながる場合があります。
そのため、公正証書遺言を作成する際には、形式や法律からの側面だけでなく、相続人間の関係や遺留分への配慮も含めて内容を検討することが重要です。必要に応じて弁護士などの専門家に相談し、将来的な紛争を防ぐための視点を取り入れることをおすすめします。
証人になれない人・手配する時の注意点
公正証書遺言の作成には証人2名が必要ですが、以下のような方は法律上証人になることができません。
- 未成年者
- 推定相続人およびその配偶者や直系血族
- 受遺者およびその配偶者や直系血族
- 公証人の関係者(書記など)
■ 証人選びのポイント
証人は遺言内容を知る立場になるため、選定には配慮が必要です。
- 遺言内容の秘密を守れる人を選ぶ
- 利害関係のない第三者であること
- 信頼できる人物であること
友人や知人を証人にすること自体は可能ですが、内容が知られることになるため、プライバシーの観点から慎重に判断する必要があります。
■ 専門家を証人にする場合
弁護士や司法書士などの専門家に証人を依頼することも可能です。守秘義務があるため安心感があり、手続きに慣れているためスムーズに進めやすいことが大きな利点といえます。一方で、費用が発生する点には注意が必要です。
公正証書遺言:専門家への相談も有効な選択肢
一人での手続きに不安を感じる場合は、専門家に相談することで、よりスムーズに進めやすくなることがあります。
■ 専門家が対応できる主なサポート
専門家に依頼することで、以下のような支援を受けられる場合があります。
- 書類収集のサポート(戸籍や財産資料など)
- 財産内容の整理・確認
- 遺留分など法的観点を踏まえた内容の検討支援
- 公証人との事前打ち合わせや日程調整
- 証人の紹介(対応可能な場合)
※具体的な対応範囲は、依頼する専門家や事務所によって異なります。
■ 専門家の選び方
相談先に迷う場合は、「相続トラブルの可能性」や「手続き内容」に応じて選ぶことが重要です。
- 行政書士
相続人間の関係が良好で、主に書類作成や手続き支援を受けたい場合 - 司法書士
不動産が含まれており、相続登記などの手続きを視野に入れている場合 - 弁護士
相続人間で意見の対立がある、または紛争の可能性がある場合
■ 注意点(重要)
- 専門家は遺言の内容を「決定する」のではなく、あくまで助言・支援を行う立
- 「最適な分割案」は個人の状況や希望によって異なる
- 費用や対応範囲は事務所ごとに異なるため、事前確認が重要
専門家のサポートを受けることで、手続きの負担を軽減し、法的な観点を踏まえた遺言作成を進めやすくなります。ご自身の状況に応じて、適切な専門家を選ぶことが大切です。
まとめ
公正証書遺言とは、公証人が関与して作成する遺言書のことです。遺言者の意思をもとに、公証人が法律に沿った内容で作成するため、形式の不備による無効リスクが低く、相続手続きを円滑に進めやすいという特徴があります。
■ 公正証書遺言の特徴
公正証書遺言には、次のような特徴があります。
- 法律に沿った正しい形式で作成される
- 原本が公証役場に保管され、紛失の心配が少ない
- 家庭裁判所での検認手続きが不要
- 相続手続きを進めやすい
■ 作成の手順
公正証書遺言は、一般的に以下の流れで作成されます。
- 公証人や専門家へ相談
- 必要書類(戸籍や財産資料など)の準備
- 遺言内容の整理と文案作成
- 公証役場での作成(証人2名の立会い)
- 原本保管・正本の受け取り
このように、公証人の関与のもとで進めるため、手続きの正確性が高くなります。
■ 費用の目安
費用は主に以下の2つに分かれます。
- 公証人手数料:財産額に応じて数万円程度~
- 専門家報酬:依頼する場合は10万円~30万円程度が目安
※内容や財産の状況によって変動します。
■ 注意点
- 証人2名が必要(相続人などは不可)
- 遺留分に配慮しないと後のトラブルの可能性
- 事前準備に一定の時間がかかる
- メモ段階で内容を整理しておくとスムーズ
- 記載の間違いや不明確な事項はトラブルの原因になる
- 写しや正本の枚数管理も重要
- 相続税の申告や課税への影響も考慮する
公正証書遺言は、手間や費用はかかるものの、確実性が高く、相続トラブルを防ぎやすい方法です。安心して遺言を残すためにも、内容の検討や準備を丁寧に進めることが重要です。
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この記事の執筆者

弁護士 伴 広樹
経歴
神奈川県厚木市出身。1997年司法試験合格後、2000年に司法修習を修了(52期)し、弁護士登録。横浜市内の法律事務所に勤務後、2004年に伴法律事務所を開設。年間280件の相続の法律相談に対応している。
弁護士業務では①お客様の期待に沿う徹底した調査,②お客様が納得できる提案力,③お客様が安心して任せられる確実かつ迅速な処理の3つを心がけており、実際に業務に対しての評価も高い。
活動・公務など
・神奈川大学非常勤講師(2009年9月~2016年3月)
・明治大学リバティアカデミー(市民講座)講師(2015年~2016年)
・横浜弁護士会(現神奈川県弁護士会)常議員(2009年4月~2010年3月)
・一般社団法人神奈川健康生きがいづくりアドバイザー協議会神奈川健生成年後見センター運営委員会委員(2015年8月~)
・セミナー講師としての活動 川崎市役所,東京地方税理士会保土ヶ谷支部,神奈川県宅地建物取引業協会横浜中央支部,神奈川青年司法書士協議会など各種団体におけるセミナー講師を担当





