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相続の遺産分割協議書を自分で作成する方法とは?書式と書き方、手続きを解説

 

相続の遺産分割協議書を自分で作成する方法とは?書式と書き方、手続きを解説

遺産相続が発生したとき、避けて通れないのが「遺産分割協議書」の作成です。専門家に依頼する方法もありますが、「できれば自分たちで作成したい」と考える方も少なくありません。しかし、書き方を誤ると手続きが進まなかったり、後のトラブルにつながったりする可能性もあります。この記事では、遺産分割協議書を自分で作成するための基本的な流れや書式、具体的な書き方のポイント、作成後に必要な手続きまでについて解説します。初めての方でも安心して進められるよう、注意点も含めてぜひ参考にしてください。

遺産分割協議書とは?必要な場面と作らないリスク

相続手続きは法律に基づいて進める正式な財産承継の手続きです。法定相続分どおりに分ける場合を除き、不動産の名義変更や預貯金の解約などでは、相続人全員の合意を証明する書面として遺産分割協議書の提出を求められるのが一般的です。

ここでは、遺産分割協議書が必要になる具体的な場面や、作成しなかった場合に起こり得る手続き上の支障と相続人同士の間のトラブルについて解説します。

遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書とは、相続人全員が話し合いによって決めた財産の分け方を、書面としてまとめたものです。つまり、「誰が・どの財産を取得するのか」について、相続人全員が合意した内容を証明する文書を指します。

遺産分割協議書に法律上の決まった書式はありません。ただし、不動産の相続登記や預貯金の解約・名義変更などの手続きを行う際には、相続人全員の合意を確認するために提出を求められるのが一般的です。もっとも、法定相続分どおりに分ける場合には、必ずしも協議書が必要とは限りません。

協議書を作成していない場合、後になって「そのような合意はしていない」といった争いが生じる可能性があります。また、各種手続きのたびに相続人全員の同意を個別に求められるなど、実務上の負担が大きくなることもあります。

相続は家族間の問題であると同時に、法律に基づく正式な財産承継の手続きです。将来のトラブルを防ぐためにも、合意内容は書面として明確に残しておくことが重要です。

相続手続きで遺産分割協議書が必要になる場面

遺産分割協議書が必要になる主な場面は、次のとおりです。

1. 不動産の名義変更(相続登記)を行うとき

自宅や土地などの不動産を相続する場合、法務局で相続登記(名義変更)を行います。
法定相続分どおりに共有で登記する場合は、遺産分割協議書が不要なケースもあります。

しかし、相続人のうち特定の一人が単独で取得する場合など、法定相続分と異なる分け方をする場合には、遺産分割協議書の添付が必要です。

なお、令和6年4月から相続登記は義務化され、相続開始を知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない限り過料が科される可能性があります。

2. 預貯金や有価証券の解約・名義変更を行うとき

被相続人名義の預金口座や証券口座は、死亡が確認されると凍結されます。
金融機関では、相続人全員の合意内容を確認するため、遺産分割協議書の提出を求められるのが一般的です。

もっとも、一定の範囲内で法定相続分に応じた払い戻し制度(民法909条の2)を利用できる場合もあります。ただし、限度額があり、最終的な分配のためには遺産分割協議が必要になるケースが多いのが実情です。

3. 相続税の特例を適用する場合

相続税には、

といった優遇制度があります。

これらを適用するには、原則として申告期限(相続開始から10か月以内)までに遺産分割が確定していることが必要です。

しかし、「未分割申告」を行い、後日分割が成立した場合に特例の適用を受ける制度もあります。ただし、追加の手続きが必要となるため、できる限り期限内に分割を確定させておくことが望ましいといえます。

4. 合意内容を客観的に証明しておきたいとき

相続人が複数いる場合、口頭で合意していても、後になって認識の違いが生じる可能性があります。

遺産分割協議書を作成し、相続人全員がパソコンではなく手書きで署名し、実印で押印、さらに印鑑証明書を添付しておけば、合意内容の証拠として強い効力を持ちます。

万が一、詐欺・錯誤・強迫などの事情があれば無効や取消しが問題となる可能性はありますが、通常は後から一方的に内容を覆すことは容易ではありません。

遺産分割協議書は、単なる形式的な書類ではなく、相続手続きを円滑に進めるための重要な証拠書類です。将来のトラブルを防ぐためにも、適切な内容で作成することが重要です。

協議書がないと起こる具体的なトラブルと損失

遺産分割協議書を作成しないままにしておくと、次のような問題が生じる可能性があります。

1. 不動産や預貯金の手続きが進まない

よくあるのが、「財産の名義変更や解約がスムーズに進まない」というケースです。

不動産については、法定相続分どおりに共有名義で登記することは可能ですが、特定の相続人が単独で取得する場合には遺産分割協議書が必要になります。協議がまとまっていなければ、売却や担保設定などの処分も難しくなります。

預貯金については、一定の範囲内で法定相続分に応じた仮払い制度(民法909条の2)を利用できる場合がありますが、全額を特定の相続人に移すには通常、遺産分割協議書が求められます。その結果、葬儀費用や生活費の立替えをめぐって相続人間で負担の問題が生じることもあります。

2. 時間の経過とともに合意が崩れる

相続直後は円満に話し合いができていても、時間の経過とともに事情や考え方が変わることは少なくありません。

いったん合意したつもりでも、書面に残していなければ「そのような合意はしていない」と争いになる可能性があります。話し合いで解決できなければ、家庭裁判所での調停や審判に進むことになります。

調停には数か月以上かかることもあり、その間、実質的に財産の処分が進まない状態になることもあります。

3. 相続税の特例適用に影響が出る

相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)までに遺産分割が確定していない場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は原則として適用できません。

もっとも、「未分割申告」を行い、後日分割が確定した段階で更正の請求をすれば特例の適用を受けられる制度はあります。ただし、追加の手続きや書類提出が必要となるため、事務負担や資金繰りの面で影響が出る可能性があります。

4. 家族間の対立が深刻化する

相続トラブルで深刻なのは、金銭以上に家族関係が悪化することです。

口頭での合意は、後になって記憶の食い違いが生じやすく、「言った・言わない」の争いに発展することがあります。相続人の配偶者や子どもが関与することで、対立が拡大するケースもあります。

遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・実印押印し印鑑証明書を添付しておけば、合意内容の証拠として強い効力を持ちます。将来の紛争を防ぐためにも、書面で明確に残しておくことが重要です。

また、相続人の中に認知症の方や未成年者がいる場合には、特別代理人や成年後見人の選任手続きが必要になることがあり、これらは法律の知識なしに進めることが困難です。こうした特殊なケースでは、最初から司法書士や弁護士に相談しておくことで、手続きの見落としを防げるでしょう。

遺産分割協議書は、単なる形式的な書類ではなく、相続手続きを円滑に進め、将来の紛争を予防するための重要な法的文書です。早めに整えておくことが、結果として家族全員を守ることにつながります。

【完全ガイド】遺産分割協議書の正しい書き方

遺産分割協議書には決まった様式はありませんが、相続人全員の合意内容を正確かつ具体的に記載することが重要です。不動産であれば登記事項証明書どおりに、預貯金であれば金融機関名・支店名・口座番号まで明記する必要があります。

ここでは、初めて遺産分割協議書を作成する方でも理解できるよう、必須項目の整理から財産ごとの具体的な記載方法、作成時の注意点まで、実務上押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。

絶対に書いておきたい主な記載事項

遺産分割協議書には法律で定められた厳格な様式はありません。ただし、実務上、金融機関や法務局での手続きを円滑に進めるために、事実上必要とされる記載事項があります。

1. 被相続人の特定情報

まず明記すべきなのは、亡くなった方を特定する情報です。

例:
「被相続人 山田太郎(最後の住所:東京都新宿区西新宿一丁目1番1号、令和5年3月15日死亡)」

「父」「母」といった表現では足りず、戸籍や住民票と一致する形で記載することが重要です。

2. 相続人全員の氏名・住所

遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しません。そのため、相続人全員の氏名と住所を明記します。続柄(長男・長女など)の記載は法律上必須ではありませんが、分かりやすさのために記載することが一般的です。住所は印鑑証明書と一致する正式な表記で記載するのが望ましく、略記は避けるのが無難です。

3. 分割する遺産の具体的内容

もっとも重要なのが、対象となる財産の特定です。

「自宅」「銀行預金一式」などの曖昧な表現では、手続きで補正を求められる可能性があります。第三者が見ても明確にわかる内容であることが必要です。

4. 相続人全員の署名・押印

法律上、遺産分割協議書は「署名」または「記名押印」があれば有効とされています。ただし、実際には各相続人の実印による押印と印鑑証明書の添付が求められるのが一般的です。

実印と印鑑証明書があることで、本人の意思に基づく合意であることを証明しやすくなります。不備があると、金融機関や法務局で補正を求められる場合があります。

5. 作成日付

日付の記載は法律上の絶対要件ではありませんが、実務上は非常に重要です。
いつの時点で合意が成立したのかを明確にすることで、後日の紛争予防や相続税申告との関係でも意味を持ちます。

このように、遺産分割協議書は「誰が・誰について・どの財産を・どのように分けるか」を明確に証明する文書です。形式そのものよりも、内容の正確性と全員の合意が確認できることが最も重要です。

不動産を相続する場合の正確な記載方法

不動産は、遺産分割協議書の中でも特に記載ミスが起こりやすい項目です。「実家」「自宅」といった表現では、どの不動産を指すのか第三者には特定できません。

相続登記では、協議書の記載内容と登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)の内容が一致していることが求められます。不一致がある場合は、法務局から補正を求められることがあり、手続きが遅れる原因になります。

土地の記載方法

土地を記載する際は、登記事項証明書に記載されている内容をそのまま転記するのが原則です。

主な記載項目は次のとおりです。

例:

所在:東京都新宿区西新宿一丁目
地番:123番4
地目:宅地
地積:150.50平方メートル

注意すべき点は、「地番」と「住所(住居表示)」は異なる場合があるということです。住居表示の「1番1号」と、登記上の「1番地」「1番4」は一致しないことがあります。必ず登記事項証明書に記載されている地番を用います。

建物の記載方法

建物については、土地とは別の不動産として扱われます。建物についても、登記事項証明書の記載どおりに転記します。

主な記載項目は以下のとおりです。

例:

所在:東京都新宿区西新宿一丁目123番地4
家屋番号:123番4
種類:居宅
構造:木造瓦葺2階建
床面積:1階60.00平方メートル、2階50.00平方メートル

「種類」「構造」「床面積」も登記どおりに正確に記載することが重要です。

土地と建物は分けて記載する

自宅を相続する場合でも、「土地」と「建物」は別個の不動産です。それぞれを個別に記載する必要があります。

例:
・上記土地を長男〇〇が取得する
・上記建物を長男〇〇が取得する

というように明示します。

マンション(区分所有建物)の場合

マンションは「専有部分」と「敷地権(土地の持分)」が一体で登記されています。両方を正確に記載する必要があります。

専有部分については、

などを登記どおりに記載します。

敷地権については、

を記載します。

敷地権の割合は「10000分の50」など分数形式で登記されていますので、そのまま転記します。

記載ミスがあるとどうなるか

記載内容に誤りや省略がある場合、法務局から補正を求められることがあります。状況によっては協議書の再作成や追加書類の提出が必要になることもあります。

その際、相続人全員の再署名・押印が必要になる場合もあり、時間と手間がかかる可能性があります。

不動産の記載は、遺産分割協議書の中でも特に慎重さが求められる部分です。必ず登記事項証明書を手元に置き、一字一句正確に転記することが重要です。

預貯金・株式・保険金の具体的な書き方

不動産と並び、遺産分割協議書に記載することが多いのが預貯金や株式などの金融資産です。不動産ほど形式は厳格ではありませんが、財産を特定できる程度に具体的に記載することが重要です。

1. 預貯金の記載方法

預貯金は、次の事項を明記するのが一般的です。

例:
〇〇銀行 新宿支店 普通預金 口座番号1234567 名義人 山田太郎

残高の記載は必須ではありません。ただし、口座を正確に特定できる情報を記載することが重要です。

「被相続人名義の全預貯金を長男〇〇が取得する」といった一括した記載も可能ですが、金融機関によっては具体的な口座特定を求められることがあります。可能であれば口座ごとに列挙するほうが無難です。

ゆうちょ銀行の場合は、「記号・番号」で管理されているため、その形式どおり記載します。

2. 株式の記載方法

株式は、次の情報を記載します。

例:
〇〇証券株式会社 新宿支店 口座番号123456
株式会社△△△ 普通株式 500株

銘柄が多数ある場合、「被相続人が〇〇証券に保有するすべての有価証券」とまとめた形で記載することもありますが、証券会社によって取扱いが異なるため、事前確認が望ましいです。

非上場株式(同族会社の株式など)は、会社ごとの定款や株主名簿管理のルールに従う必要があり、手続きが異なる場合があります。

3. 生命保険金の取扱い

生命保険金は、受取人の指定状況によって法的性質が異なります。

したがって、「受取人未指定=当然に遺産に組み込まれる」とは限らないことに注意が必要です。

もっとも、相続人全員の合意で取得者を定めること自体は可能です。その場合は、次のように記載します。

例:
〇〇生命保険株式会社
保険証券番号123456789
死亡保険金300万円は長男〇〇が取得する。

4. 動産の記載

車や高額な貴金属なども、争いが生じそうなものは具体的に記載します。

例:
被相続人所有の普通乗用車(登録番号:新宿〇〇あ1234)は次男〇〇が取得する。

5. 債務(借金)の記載

被相続人の債務は、原則として相続開始と同時に相続人が法定相続分に応じて当然に承継します。

協議書に「長男がすべての債務を負担する」と記載することは可能ですが、これは相続人間の内部的な合意にすぎません。債権者の同意がなければ、債権者に対抗することはできません。

預貯金・株式・保険金などの金融資産は、不動産ほど厳格ではないものの、財産を特定できる内容で記載することが重要です。金融機関や証券会社に事前に確認しておくと、手続きを円滑に進めることができるでしょう。

作成前に必ず準備すべき3つのこと

遺産分割協議書は、相続人全員の合意を証明する法的効力を持つ重要な書類です。そのため、作成前の段階で「誰が相続人なのか」「何を分けるのか」「どうやって合意を形成するか」という3つの柱をしっかり固めておかないと、「実はもう一人相続人がいた」「財産が漏れていた」「意見が食い違ってまとまらない」といった事態になりかねません。

ここでは、遺産分割協議書を作成する前に準備すべき3つのポイントについて確認しましょう。

1. 相続人全員の確認と連絡先の整理

遺産分割協議は、法定相続人全員の参加と合意がなければ有効に成立しません。
相続人のうち一人でも欠けたまま作成した協議書は、その相続人との関係では無効となり、原則としてやり直しが必要になります。

そのため、まずは「誰が相続人なのか」を法的に確定させることが最優先です。

相続人の確定方法

相続人を確定するには、被相続人(亡くなった方)の戸籍を出生から死亡までさかのぼって取得します。これにより、

などの有無を確認することができます。

本籍地が複数回変わっている場合は、それぞれの市区町村から戸籍を取り寄せる必要があり、時間がかかることもあります。

戸籍調査を省略してしまうと、後から相続人が判明し、協議をやり直す事態になりかねません。手間はかかりますが、最初に確実に行うべき重要な手続きです。

相続人全員と連絡が取れる状態にする

相続人が確定したら、次は全員と連絡が取れる状態にしておきます。相続人の中には、

が含まれる場合もあります。

遺産分割協議は全員の合意が必要なため、住所・連絡先を把握しておくことが重要です。

実務上は、以下を一覧にまとめておくと便利です。

これは法的義務ではありませんが、協議書作成や専門家への相談をスムーズに進めるうえで大いに役立ちます。

相続人の確定と連絡体制を整えることは、遺産分割協議の土台となる最重要ステップです。ここを丁寧に行うことで、後のトラブルややり直しのリスクを大きく減らすことができます。

2. 相続財産の調査と評価額の正確な把握

相続財産の範囲や価値を把握していないと、一般に、遺産分割について話し合うことが難しくなります。法律上、評価額が確定していなくても遺産分割協議自体は可能ですが、後から新たな財産が見つかったり評価に争いが生じたりすると、トラブルの原因になることがあります。

そのため、協議に入る前に財産の全体像をできる限り整理しておくことが重要です。

プラスの財産とマイナスの財産を確認する

まず、相続財産には「プラスの財産」と「マイナスの財産(負債)」があることを理解しておきましょう。

プラスの財産の例

※生命保険金は、受取人が指定されている場合は原則として受取人の固有財産となり、遺産分割の対象にはなりません。

マイナスの財産の例

負債も相続の対象となるため、プラス・マイナス双方を調査することが必要です。

預貯金・有価証券の調査

被相続人が複数の金融機関と取引していた場合、それぞれに残高証明書や取引履歴の発行を依頼します。金融機関には相続専用窓口が設けられていることもあります。証券会社についても同様に、保有銘柄や残高を確認します。

不動産の確認と評価

不動産は登記事項証明書を取得し、被相続人名義の物件を確認します。

評価額については、

というように、目的によって基準が異なります。分割方法によっては、不動産会社の査定や専門家の評価を取得することも検討されます。遺産分割の場面では「時価(実勢価格)」がいくらなのかも重要になることがあります。

負債の確認

負債も相続開始と同時に法定相続分に応じて承継されます。

金融機関やクレジット会社への照会のほか、信用情報機関(CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センター)に開示請求を行うことで、借入状況を確認できる場合があります。ただし、すべての保証債務が把握できるとは限らないため注意が必要です。

財産目録の作成

調査結果は一覧表(財産目録)にまとめておくと便利です。これは遺産分割協議書作成の基礎資料となるだけでなく、相続税申告や専門家への相談時にも役立ちます。

財産の全体像を正確に把握することが、公平で全員が納得できる遺産分割への第一歩となります。

3. 家族間での遺産分割合意を円滑に進めるコツ

相続人と財産の全体像が把握できたら、「誰が何をどのように相続するか」を話し合います。遺産分割協議は相続手続きの中でも対立が生じやすい場面です。

①法定相続分を共通認識にする

まず重要なのは、「法定相続分」を全員が理解しておくことです。
法定相続分は民法で定められた原則的な相続割合であり、たとえば配偶者と子2人が相続人の場合、配偶者2分の1、子が各4分の1となります。

もっとも、これはあくまで法律上の基準であり、相続人全員が合意すれば異なる割合で分けることも可能です。ただし、基準を知らないまま協議を進めると、不公平感から紛争が生じやすくなります。

②分割方法の選択肢を整理する

主な分割方法には次のようなものがあります。

それぞれメリット・デメリットがあるため、事前に整理しておくと冷静な話し合いがしやすくなります。

③協議の進め方を工夫する

全員が参加できる形で協議を行うことが重要です。遠方在住者がいる場合はオンライン活用も有効です。

ただし、遺産分割協議は最終的に相続人全員の合意が必要であり、後から異議が出ないよう、合意内容を明確にしておく必要があります。

④専門家の関与

対立が予想される場合は、弁護士などの専門家に相談するのも有効です。専門家が関与していても、詐欺・強迫などの事情があれば協議が無効・取消となる可能性はありますが、法律的観点から整理してもらうことで紛争予防につながります。

⑤合意内容は必ず書面化する

遺産分割協議は、相続人全員の合意によって成立します。
しかし、不動産登記や金融機関の手続きでは、遺産分割協議書に相続人全員の署名(または記名)と実印押印、印鑑証明書の添付が実務上求められます。

書面がなければ各種手続きが進まないため、協議がまとまったら速やかに協議書を作成することが重要です。

協議がまとまらない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停・審判という法的手続きもあります。自力での解決が難しいと感じた場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

遺産分割協議書が必要ない場合とその判断基準

実は、すべての相続で必ず遺産分割協議書が必要になるわけではありません。 相続人が一人しかいない場合や、有効な遺言書によって遺産の分け方が指定されている場合など、協議そのものが不要となるケースもあります。

ただし、状況によっては書面が必要になる場面もあるため、「不要」と安易に判断するのは危険です。

ここでは、遺産分割協議書が不要となる代表的なケースと、その判断基準について、法律上のポイントを押さえながら解説します。

相続人が一人の場合や法定相続分通りの場合

①相続人が一人しかいない場合

もっとも分かりやすいケースは、相続人が一人しかいない場合です。

たとえば、被相続人に配偶者や子がおらず、兄弟姉妹もすでに亡くなっており、その子(甥・姪)が一人だけ相続人となる場合などです(※兄弟姉妹に複数の子がいれば、甥姪も複数人となります)。

この場合、遺産分割をする相手がいないため、遺産分割協議そのものが不要であり、当然、遺産分割協議書も必要ありません。

ただし、金融機関や不動産登記の手続きでは、「自分が唯一の相続人であること」を証明する必要があります。そのため、出生から死亡までの戸籍謄本一式や、法定相続情報一覧図などの提出は必要になります。

②相続人が複数でも法定相続分どおりに相続する場合

相続人が複数いる場合でも、法定相続分どおりに相続するのであれば、法律上は遺産分割協議は不要です。

たとえば、配偶者と子ども2人が相続人であれば、

という割合ですでに合意している状態になります。この場合、特別な遺産分割協議書がなくても、不動産は「法定相続による共有登記」が可能です。

③実務上の注意点

実務では次の点に注意が必要です。

つまり、「法定相続分どおりに共有にする」のであれば協議書は不要ですが、
誰か一人が単独で取得する場合は協議書が必要になります。

また、法定相続分どおりに共有にしたとしても、将来その不動産を売却する際には共有者全員の同意が必要になります。そのため、実務上はあらかじめ分割方法を話し合い、書面に残しておくことが紛争予防につながります。

「法定相続分どおりだから絶対に不要」というわけではなく、取得方法によって必要性が変わる点を押さえておくことが大切です。

遺言書がある場合の取り扱い

遺言書が有効に作成されている場合、原則として遺言の内容に従って遺産は承継されます。 そのため、遺言で財産の帰属がすべて明確に指定されている場合には、遺産分割協議は不要であり、通常は遺産分割協議書も必要ありません。

ただし、いくつか注意点があります。

①遺言で指定されていない財産がある場合

遺言が一部の財産にしか触れていない場合、その対象外の財産については相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

たとえば、「自宅不動産は長男に相続させる」とだけ記載され、預貯金や株式に触れていない場合、それらの財産については別途協議し、必要に応じて協議書を作成します。

②遺言と異なる分け方をしたい場合

遺言があっても、相続人および受遺者など利害関係人全員が合意すれば、遺言と異なる内容で遺産を分けることは可能です。

ただし、「相続させる」と明記された遺言(いわゆる特定承継型の遺言)は、原則としてその効力により直接権利が移転します。そのため、遺言と異なる分割をする場合は、関係者全員の明確な合意が必要となります。

この場合は、実質的に遺産分割協議を行い、その内容を書面化することになります。

③遺言書の種類と検認

遺言書の種類によって手続きが異なります。

なお、検認は遺言の有効性を判断する手続きではなく、「遺言書の存在と内容を確認する手続き」です。

検認を受けていない自筆証書遺言は、実務上、金融機関や法務局で手続きが進められません。

4. 手続きに必要な書類

遺言があっても、不動産登記や預金解約には、

などが必要になります。

「遺言書があるから他の書類は不要」というわけではありません。

5. 遺留分の問題

遺言によって特定の人に多くの財産を与えた場合でも、配偶者や子など一定の相続人には遺留分侵害額請求権があります。

遺留分侵害額請求がなされると、最終的に金銭での精算が必要になることがあり、別途合意書を作成するケースもあります。

このように、遺言書がある場合でも状況によって対応は異なります。不安がある場合は、専門家に相談することで、法的リスクを避けながら手続を進めることができます。

無料テンプレート活用で失敗しない作成手順

遺産分割協議書には法律で定められた統一様式はありませんが、法務局や自治体の案内、専門家団体の資料などを参考にしたテンプレートが数多く公開されています。こうしたひな形を活用することで、必要事項の漏れを防ぎ、作成の手間を軽減できるはずです。

ここでは、信頼できるテンプレートの選び方から、5ステップの具体的な作成手順、完成前に確認すべき重要ポイントまで解説します。

国税庁・法務局など公式ダウンロード先の選び方

相続関連の書式を扱う公的機関は複数あり、それぞれ異なる目的に応じた様式や記載例を公開しています。ただし、遺産分割協議書については法律で統一様式が定められているわけではありません。そのため、「どこから何をダウンロードすればよいか分からない」という声も少なくありません。

まず重要なのは、「どの手続きに使う書類か」を明確にすることです。手続きごとに所管機関が異なります。

ひとつのサイトですべての書式が揃うわけではないため、目的別に探す必要があります。

国税庁の様式

国税庁のホームページには「相続税の申告書等の様式一覧」があり、最新版のPDF様式と記載例が掲載されています。

相続税の様式は税制改正により変更されることがあるため、必ず「令和○年分」などの年度表記を確認してください。古い様式を使用すると、控除欄などが不足しており、修正や再度提出を求められる可能性があります。

法務局の様式

法務局では「登記申請書の様式及び記載例」を公開しています。相続登記に必要な申請書の記載例は確認できますが、遺産分割協議書については統一の公式様式が用意されているわけではありません。

あくまで記載例や参考例が掲載されている形です。そのため、不動産の表示は登記事項証明書どおりに正確に記載する必要があります。

なお、相続登記は令和6年4月から義務化されており、正当な理由なく申請を怠ると過料の対象となる可能性があります。様式の最新版を使用することが重要です。

検索のコツ

安全に様式を入手するには、

「相続税 申告書 国税庁」
「相続登記 申請書 法務局」

のように、手続き名+所管機関名で検索すると公式サイトにたどり着きやすくなります。

民間サイトのテンプレートも便利ですが、更新が止まっている場合や最新の制度改正に対応していないこともあります。まずは公的機関の情報を基準にするのが安心です。

記載例と手引きも確認する

公的機関のサイトには、様式だけでなく記載例や手引きも掲載されていることが多いです。実務ではこれらが非常に重要です。

テンプレートだけでなく、記載例と手引きをセットで確認することで、記入漏れや添付書類の不足を防ぎやすくなります。

印刷時の注意

様式は通常A4サイズですが、指定がある場合はそれに従って印刷してください。両面印刷指定の書式もあります。

様式どおりに作成しても内容に誤りがあれば補正を求められる可能性はあります。テンプレートはあくまで「形式を整えるための補助」である点を理解しておきましょう。

テンプレートを使った5ステップ作成法

実際に公式テンプレートを入手したら、いきなり本番の用紙に書き始めるのではなく、
「下準備 → 下書き → 清書 → 確認 → 提出準備」という5つのステップで進めることをおすすめします。

ステップ①:情報整理と必要書類の洗い出し

まず、テンプレートに記入する前に必要情報を整理します。

相続手続きでは、

などが必要になることがあります。

特に、不動産の地番や家屋番号、銀行口座番号などは、必ず公的書類を見ながら正確に転記してください。記憶で記載すると誤記の原因になります。

ステップ②:下書き作成

いきなり正式用紙に記入せず、まずコピー用紙に下書きをします。

この段階では、

を確認することが目的です。

可能であれば、この段階で家族や専門家に確認してもらうと安心です。

ステップ③:正式用紙への清書

清書は黒のボールペンや万年筆で行います。
鉛筆や消せるボールペンは、改ざん防止の観点から実務上適切ではありません。

書き間違えた場合は、

のが一般的です。

遺産分割協議書の場合、訂正があると実務上は相続人全員の訂正印が求められることが多いため、できるだけ書き直す方が無難でしょう。

ステップ④:完成後の確認

清書後は、必ず見直しを行います。

特に注意すべき点は:

実印が薄い場合は、再提出を求められることがあります。

ステップ⑤:添付書類の整理と提出準備

提出時には、添付書類の確認が重要です。

相続登記では、戸籍等の原本を提出しますが、
原本還付請求書を添付すれば返却を受けることができます。

一方、相続税申告では、提出後に返却されない書類もあるため、事前にコピーを取っておくことをおすすめします。書類は整理して提出し、不備がないか最終確認してから持参・郵送するようにしましょう。

テンプレートは便利な補助ツールですが、
最終的に重要なのは「内容の正確さ」と「形式の適合性」です。

5つのステップを踏むことで、補正や再提出のリスクを大きく減らすことができるはずです。

作成時の注意点と完成前チェックリスト

テンプレートを使えば書式の枠組みは整いますが、内容の正確性や形式の適合性は自分で確認する必要があります。ここでは、実務上の注意点を整理します。

記入漏れ・記入誤りを防ぐための基本姿勢

相続書類は記入欄が多く、見落としが起こりやすいのが実情です。

特に重要なのは以下の点です。

なお、遺産分割協議書自体に電話番号や郵便番号の記載は法律上必須ではありません(提出先の様式による)。重要なのは「本人特定ができる正確な住所氏名」です。

金額欄については、桁数の誤りや計算ミスを防ぐため、再計算して確認する習慣をつけましょう。

印鑑の種類と押印の確認

実務で混同しやすいポイントです。

訂正がある場合、遺産分割協議書では実務上、相続人全員の訂正印が求められることが多いため、できるだけ書き直す方が安全です。

添付書類の原本・コピーの区別

提出先によって扱いは異なります。

また、戸籍謄本や住民票には法律上の一律な有効期限はありません。
ただし、提出先が「発行後3か月以内」などと求める場合があるため、個別に確認が必要です。

完成前チェックリスト

提出前に確認すべきポイントは次のとおりです。

  1. 被相続人の氏名・生年月日・住所が正確か
  2. 相続人全員の氏名・住所が戸籍と一致しているか
  3. 不動産の表示が登記事項証明書どおりか
  4. 金額や割合の誤りがないか
  5. 日付が適切に記載されているか(通常は作成日)
  6. 遺産分割協議書に相続人全員の実印が押されているか
  7. 印鑑証明書が全員分そろっているか
  8. 訂正箇所が適切に処理されているか
  9. 添付書類が不足していないか
  10. 提出先の窓口・郵送先・受付時間を確認したか

これらを確認すれば、補正や差し戻しを大きく減らすことができます。

相続は手続きごとに必要書類や押印要件が異なります。不安がある場合は、司法書士・税理士などの専門家に確認することで、より確実に進めることができるでしょう。

まとめ

相続が発生すると、不動産の名義変更や預貯金の解約など、多くの手続きで「遺産分割協議書」の提出を求められます。遺産分割協議書とは、相続人全員で話し合って決めた財産の分け方を、正式な書面として残すものです。法律で決まった様式はありませんが、被相続人の情報、相続人全員の氏名・住所、分割する財産の内容、そして全員の署名と実印押印など、押さえるべきポイントがあります。

自分で作成する場合は、まず戸籍謄本を取得して相続人を確定させ、次に不動産の登記事項証明書や預貯金の残高証明書などを集めて財産の内容を正確に把握します。そのうえで、登記簿や通帳の表記どおりに一字一句正確に記載することが重要です。特に不動産の地番や家屋番号、金融機関名や口座番号の誤りは、手続きが止まる原因になります。

完成後は、相続人全員が内容を確認し、実印で押印し、印鑑証明書を添付します。形式に不備があると再提出になるため、記載例や手引きを参考に慎重に進めましょう。ポイントを押さえれば、ご自身で作成することは可能ですが、不安がある場合は司法書士や弁護士に相談するのも一つの方法です。

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この記事の執筆者

弁護士 伴 広樹

経歴

神奈川県厚木市出身。1997年司法試験合格後、2000年に司法修習を修了(52期)し、弁護士登録。横浜市内の法律事務所に勤務後、2004年に伴法律事務所を開設。年間280件の相続の法律相談に対応している。
弁護士業務では①お客様の期待に沿う徹底した調査,②お客様が納得できる提案力,③お客様が安心して任せられる確実かつ迅速な処理の3つを心がけており、実際に業務に対しての評価も高い。

活動・公務など

・神奈川大学非常勤講師(2009年9月~2016年3月)
・明治大学リバティアカデミー(市民講座)講師(2015年~2016年)
・横浜弁護士会(現神奈川県弁護士会)常議員(2009年4月~2010年3月)
・一般社団法人神奈川健康生きがいづくりアドバイザー協議会神奈川健生成年後見センター運営委員会委員(2015年8月~)
・セミナー講師としての活動 川崎市役所,東京地方税理士会保土ヶ谷支部,神奈川県宅地建物取引業協会横浜中央支部,神奈川青年司法書士協議会など各種団体におけるセミナー講師を担当

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