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遺言書の書き方とは?自筆証書遺言の作成見本と例文、相続の注意点について解説

 

遺言書の書き方とは?自筆証書遺言の作成見本と例文、相続の注意点について解説

遺言書を作成したいと思っても、「何を書けばいいのか」「書き方を間違えて無効にならないか」と不安に感じる方は多いでしょう。特に自筆証書遺言は、費用をかけずに自分で作成できる一方で、法律で定められた形式を守らないと無効になるリスクがあります。

この記事では、遺言書の種類や作成のメリットなどの基礎知識と、自筆証書遺言の正しい書き方について解説します。

遺言書とは?種類と基礎知識

遺言書にはいくつかの種類があり、それぞれ作成方法や効力に違いがあります。まずは基本的な役割と種類を確認していきましょう。

遺言書とは、亡くなった後の財産の分け方や特定の事項について、生前に法的効力のある形で意思を示しておく文書です。法律上は「いごん」と読みますが、一般には「ゆいごん」とも呼ばれています。

遺言書で財産の承継方法が具体的に定められていれば、その内容に従って手続きが進められ、遺産分割協議が不要となる場合があります。ただし、配偶者や子どもなどには「遺留分」という最低限の取り分が保障されており、これを侵害する内容の場合には、後に請求がなされる可能性もあります。

遺言書には主に次の3種類があります。

  1. 自筆証書遺言
  2. 公正証書遺言
  3. 秘密証書遺言

それぞれ作成方法や保管方法、費用、確実性が異なります。ご自身の家族構成や財産状況に応じて、適切な方式を選ぶことが大切です。

遺言書が必要な理由と作成のメリット

遺言書を作らなくても、法律上は相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を行い、財産を分けることができます。しかし実際には、「誰がどれだけ受け取るか」という話し合いは、想像以上に感情的になりやすいものです。特に、不動産や事業用資産など簡単に分けられない財産がある場合には、意見の対立が深刻化することも少なくありません。

遺言書を残しておくことで、ご自身の意思を明確に示すことができ、相続人同士のトラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。たとえば「長男には実家を、次男には預貯金を」といったように具体的に指定できるため、相続人が分け方に悩む時間や負担を減らしやすくなります。

また、法定相続人以外の人(内縁のパートナーや、お世話になった友人など)に財産を残したい場合も、遺言書がなければ原則として相続させることはできません。遺言書があれば「遺贈」という形で、相続人以外の人に財産を渡すことが可能になります。

遺言書では「遺言執行者」を指定することもできます。遺言執行者とは、遺言の内容を実際に実現する役割を担う人のことです。預貯金の解約や不動産の名義変更などの手続きを進める際に中心となって動けるため、相続手続きをスムーズに進めやすくなるメリットがあります。

つまり、遺言書は「家族への最後の配慮」であり、同時に「自分の意思を確実に残すための手段」でもあるのです。特に、以下のような状況に当てはまる方は、遺言書の作成を検討する価値が高いといえます。

このような状況では、遺言書がないことで家族が困ったり、思わぬ争いに発展したりするリスクが高まります。逆に言えば、遺言書を残すことで相続人の負担を減らし、ご自身の希望を実現できる可能性が高くなります。

遺言書の主な種類の概要

遺言書には法律で定められた方式があり、大きく分けて次の3種類があります。

  1. 自筆証書遺言
  2. 公正証書遺言
  3. 秘密証書遺言

それぞれ作成方法・費用・保管方法・安全性が異なるため、目的や状況に応じた選択が重要です。

【3種類の比較】

 

項目

自筆証書遺言

公正証書遺言

秘密証書遺言

作成方法

遺言者本人が本文を自書(手書き)。財産目録はPC作成可

遺言者が口述し、公証人が作成(証人2名必要)

遺言者が作成し、封印して公証人が証明

保管場所

自宅または法務局保管制度

公証役場に原本保管

遺言者が保管

費用

自宅保管:ほぼ無料法務局保管:3,900円

財産額に応じて数万円~十数万円

一律11,000円(公証人手数料)

検認

自宅保管:必要法務局保管:不要

不要

必要

安全性

自宅保管:低(紛失・改ざんリスク)法務局保管:形式面は安全

非常に高い(公証人関与・原本保管)

内容チェックなし・本人保管のため注意

プライバシー

高い

証人2名が内容を知る

内容は秘密(証人は内容を見ない)

向いている人

費用を抑えたい人

確実性を重視したい人

利用は少ない特殊ケース

■ 自筆証書遺言

もっとも手軽ですが、形式不備や紛失リスクがあります。法務局保管制度を利用すると検認が不要になり、安全性が高くなります。

■ 公正証書遺言

もっとも確実性が高い方式です。公証人が関与するため無効リスクが極めて低く、家庭裁判所の検認も不要です。相続トラブルを防ぎたい場合に最適です。

■ 秘密証書遺言

内容を秘密にできますが、

という点から、実務上はほとんど利用されていません。

遺言書は「費用」「安全性」「秘密性」のバランスで選ぶものです。

目的に応じた方式選択が重要です。

自筆証書遺言の書き方|無効を防ぐ必須要件と注意点

「自分で遺言書を書きたいけれど、無効になったら意味がない…」そう感じる方は多いはずです。自筆証書遺言は、自宅で作れる手軽さがある一方で、法律上の必須要件を外すと無効になるリスクがあります。

ここではまず、有効性に直結する“必須要件”を押さえたうえで、相続手続きをスムーズにするためのポイント(財産の書き方、日付の注意、押印、保管方法など)を解説します。

① 全文を自分で手書きする際のポイント

自筆証書遺言では、遺言の本文を遺言者本人が自書することが原則です。パソコン作成や代筆は、内容が正しくても無効になります。

これは、

という目的があります。

■ 財産目録は例外あり

本文は自書が必要ですが、財産目録は例外です。

以下の内容については自書でなくても構いません。

ただし、 目録の各ページに署名・押印が必要です。

■ 筆記具の注意

使用する筆記具は以下を選びましょう。

鉛筆・消せるペンは避けましょう。改ざんの疑いを招くおそれがあります。

■ 訂正方法にはルールがある

書き間違いをした場合、勝手に書き直すことはできません。

訂正する場合は

  1. 訂正箇所を示す
  2. 訂正箇所付近に押印
  3. 欄外に「〇字削除、〇字加入」などと記載

訂正が多い場合は、書き直したほうが安全です。

■ 用紙・保管について

封筒に入れること自体に法的効力はありませんが、 「遺言書在中」と記しておくと発見されやすくなります。

自筆証書遺言で最も重要なのは

形式を守ることが、遺言を有効にするためにも重要です。

② 正しい日付を記載する

自筆証書遺言には、作成日(年月日)を明確に記載する必要があります。日付がない遺言書は、原則として無効になり得るため注意しましょう。

■ なぜ日付が必要か

日付は主に、次の判断に使われます。

■ 正しい書き方

日付は、年月日を特定できる形で書きます。

■ NG例(無効リスクが高い)

■ 表記のコツ

■ 書き間違えた場合

日付も訂正は可能ですが、日付は重要事項なので、読みやすさと安全性の観点から書き直すことをおすすめします。

③ 署名と押印の注意事項

自筆証書遺言では、遺言者本人の署名と押印が必須です。署名や押印が欠けていると、遺言書は無効となる可能性が高いため注意しましょう。

■ 署名のポイント

署名は、原則として戸籍上の氏名(フルネーム)で記載します。

トラブル回避の観点では、戸籍名で書くのが最も安全です。

また、署名は必ず本人が自筆で行う必要があります。代筆や印字された氏名では、無効となるおそれがあります。

■ 署名する位置

署名は通常、以下の順番で記載します。

  1. 本文
  2. 日付
  3. 署名(氏名)
  4. 押印

つまり、遺言書の末尾(本文・日付の後)に署名する形が一般的です。

■ 押印の注意点

押印については、法律上は認印でも有効とされています。ただし、実務上は次の理由から実印の使用が望ましいです。

※ただし、印鑑証明書を添付しなければ遺言が無効になるわけではありません。
(印鑑証明書は必須ではなく、あくまで補強資料です)

■ 押印する位置

押印は、一般的に署名の横または直下に押します。

押印ミスをした場合、訂正が難しく争いの原因になることもあるため、書き直す方が安全です。

■ 拇印(指印)は使える?

拇印(指印)でも有効と判断される余地はありますが、 実務上は印鑑による押印が基本です。不要な争いを避けるためにも、通常は印鑑を使いましょう。

■ 複数ページになる場合の注意

遺言書が複数ページにわたる場合、ページの差し替え防止のために以下が推奨されます。

各ページに署名・押印をする
または
ページの綴じ目に契印(割印)を押す

※法律上、必ずしも全ページの署名押印が必要とまではされませんが、証拠として非常に重要です。

④ 財産の特定方法と書き方

遺言書で最も重要なのは、「誰に」「どの財産を」相続させるのかを明確に記載することです。ここが曖昧だと、相続人の間で解釈が分かれ、争いの原因になるおそれがあります。

財産を特定する際は、抽象的な表現ではなく、できるだけ具体的に記載することが大切です。

■ 不動産の書き方

不動産については、「自宅の土地建物」などの表現ではなく、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている内容をもとに、正確に特定します。

(記載例)
「東京都○○区○○一丁目○番○号の土地(地番○番、地目○○、地積○○㎡)および同所在の建物(家屋番号○番、種類○○、構造○○、床面積○○㎡)」

■ 預貯金の書き方

預貯金は、次の情報を記載すると特定が明確になります。

(記載例)
「○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○」

「すべての預貯金」といった表現も可能ですが、特定の口座を特定の人に相続させたい場合は、口座ごとに記載するほうが確実です。

■ 株式・投資信託など(有価証券)の書き方

株式や投資信託などの有価証券も、証券会社名・支店名・口座番号を記載し、できる限り特定します。

(記載例)
「○○証券 ○○支店 口座番号○○○○○○に保有する株式(投資信託)」

■ 動産(家財道具・美術品など)の書き方

動産については、次のような包括的な記載でも有効です。

(例)
「居宅内の家財道具一式」

ただし、価値が高いものや思い入れのあるものは、個別に特定して記載するほうが望ましいです。

(例)
「○○作の絵画『○○』」

■ 財産目録を別紙として添付する場合

財産目録を別紙として添付する場合、財産目録自体はパソコンで作成したものやコピーでも構いません。

ただし、遺言書本体と財産目録が一体のものと判断されるよう、財産目録の各ページに署名・押印をしておくことが望ましいです。

■ 相続させる相手の書き方

財産を渡す相手についても、「長男○○」といった続柄だけではなく、フルネームや生年月日まで記載しておくと、後々の手続きがスムーズです。

(例)
「長男 山田太郎(昭和○年○月○日生)」

⑤ 遺言執行者の指定方法

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。法律上、必ずしも指定する必要はありませんが、指定しておくことで相続手続きが円滑に進みやすくなります。

■ 遺言執行者に指定できる人

遺言執行者には、以下のような人物を指定できます。

■ 遺言書での書き方(記載例)

遺言書には、遺言執行者を明確に記載します。

(記載例)
「遺言執行者として、長男○○(住所:○○、生年月日:○○)を指定する。」

※フルネーム・住所・生年月日を記載しておくと、本人確認がしやすくなり手続きがスムーズです。

■ 遺言執行者の主な役割

遺言執行者は、遺言内容を実現するために次のような業務を行います。

遺言執行者がいることで、相続人全員の協力が得られない場合でも、手続きを進められる場面が多くなり、相続手続きが円滑になりやすいです。

■ 複数人を指定する場合の注意点

複数の遺言執行者を指定することも可能です。
その場合は、職務の進め方を明記しておくとトラブル防止になります。

■ 代わりの遺言執行者(予備の指定)

指定した遺言執行者が、死亡や病気などで職務を行えなくなる可能性もあります。
そのため、あらかじめ代わりの遺言執行者を指定しておくと安心です。

(記載例)
「遺言執行者○○が職務を行えない場合は、次男○○を遺言執行者とする。」

■ 専門家を指定する場合の注意点

弁護士や司法書士などの専門家を遺言執行者に指定する場合は、事前に相談し、承諾を得ておくことが重要です。

■ 報酬について

遺言執行者の報酬は、遺言書で定めることができます。
争い防止のため、金額や上限を明確にしておくのが望ましいです。

(記載例)
「遺言執行者の報酬は金○○万円とする。」
「遺言執行者の報酬は○○万円を上限とする。」

財産別|遺言書の具体的な記載例文集

遺言書を書こうと決めたものの、「実際にどんな言葉で書けばいいのか分からない」と手が止まってしまう方は少なくありません。遺言書は記載が曖昧だと、相続人の解釈が分かれ、トラブルにつながるおそれがあります。

そこでここでは、法的に有効な遺言書にするための「財産の特定方法」を整理し、財産の種類ごとにすぐ使える記載例をご紹介します。

子供一人に全財産を相続させる場合

配偶者がすでに亡くなっており、お子さんが一人だけの場合や、複数の子どものうち特定の一人にすべての財産を承継させたい場合には、「全財産を〇〇に相続させる」と記載します。

このとき重要なのは、

です。

■ 「相続させる」と「遺贈する」の違い

遺言書で相続人に財産を承継させる場合は、「相続させる」という表現を用いるのが一般的です。
この表現により、その財産を承継させる意思が明確になります。

一方、「遺贈する」は、相続人以外の第三者(孫・知人・法人など)に財産を渡す場合に用いられることが多い表現です。もっとも、法律上は相続人に対して遺贈することも可能です。

実務上は、子どもなど法定相続人に承継させる場合には「相続させる」と記載するのが一般的で、手続きも比較的円滑に進みやすいとされています。

■ 相続人の特定方法

相続人は、氏名だけでなく、次の情報も記載しておくと安全です。

これは、同姓同名の親族が存在する可能性を排除し、法務局や金融機関での本人確認を円滑にするためです。

■ 記載例

遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、長男 山田太郎(昭和55年3月10日生)に相続させる。

このように記載すれば、遺言作成時に所有している不動産、預貯金、株式、自動車などの財産が、原則としてすべてその相続人に承継されます。

■ 遺留分に関する注意

ただし、子どもが複数いる場合、他の子どもには「遺留分」を請求する権利があります。遺言書で「全財産を一人に相続させる」と記載しても、他の相続人の遺留分請求権そのものが消えるわけではありません。

そのため、このような内容の遺言を作成する場合には、他の相続人との関係や将来の紛争の可能性も踏まえ、専門家に相談しながら進めることが望ましいといえます。

■ 予備的な定めをしておく場合

指定した相続人が遺言者より先に亡くなる可能性もあります。
そのような場合に備えて、次順位の承継者を定めておくと安心です。

(記載例)

万一、長男 山田太郎が遺言者より先に死亡した場合には、

山田太郎の子である 山田花子(平成○年○月○日生)に相続させる。

不動産相続の記載方法

自宅や土地、マンション、アパートなどの不動産を相続させる場合には、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている情報をもとに、できるだけ正確に特定する必要があります。

なぜなら、相続登記を行う際には、遺言書の記載内容と登記事項証明書の内容が一致していなければ、不動産を正確に特定できず、手続きが滞る可能性があるからです。

■ 記載すべき主な項目

土地の場合

建物の場合

これらの情報は、法務局で取得できる「登記事項証明書」に記載されています。
遺言書作成前に、必ず最新の証明書を確認しておくことが望ましいです。

■ 記載例

遺言者は、次の不動産を長男 山田太郎(昭和55年3月10日生)に相続させる。

【土地】

所在 東京都世田谷区桜新町二丁目

地番 123番4

地目 宅地

地積 150.00平方メートル

【建物】

所在 東京都世田谷区桜新町二丁目123番地4

家屋番号 123番4

種類 居宅

構造 木造スレート葺2階建

床面積 1階60.00平方メートル

    2階50.00平方メートル

このように具体的に記載しておくことで、相続登記の際に対象不動産を容易に特定することができます。

■ 複数不動産がある場合

複数の不動産を所有している場合は、それぞれ個別に記載します。

例:

と分ける場合には、それぞれの不動産を明確に特定し、承継者を明記します。

■ 「住所」と「地番」の違いに注意

普段使用している住所(住居表示)と、登記簿上の「地番」は一致しないことが多いです。必ず登記事項証明書を確認し、「地番」で記載するようにしましょう。

表示に誤りがあると、不動産を正確に特定できず、相続登記の手続きが困難になる可能性があります。

預貯金・現金の指定方法

預貯金や現金については、できる限り具体的に記載することで、後になって「どの口座のことを指しているのか」が分からず、相続人間で争いになるリスクを減らすことができます。

特に複数の金融機関に口座を持っている場合や、同じ銀行でも複数の支店に口座がある場合には、次の情報まで記載しておくのが望ましいです。

■ 包括的な記載も可能

預貯金は日常的に増減するため、「〇〇銀行に預け入れている一切の預貯金」のように包括的に記載することも可能です。

また、残高を金額まで細かく指定すると、遺言作成後に残高が変動した場合に内容と実態が一致せず、混乱の原因となることがあります。そのため、通常は金額ではなく口座情報で特定する方法が適しています。

■ 記載例

遺言者は、次の預貯金を長女 山田花子(昭和58年7月15日生)に相続させる。

〇〇銀行 △△支店 普通預金 口座番号1234567

××信用金庫 本店 定期預金 口座番号9876543

■ 複数人に分ける場合(割合指定)

預貯金を複数の子どもに分けたい場合には、口座ごとに分けて指定する方法のほか、割合で指定する方法もあります。

(割合指定の記載例)

遺言者は、遺言者の有するすべての預貯金を、

長男 山田太郎(昭和55年3月10日生)と

次男 山田次郎(昭和57年5月20日生)に、

それぞれ2分の1ずつの割合で相続させる。

割合指定の場合、残高の変動があっても対応しやすいというメリットがあります。
ただし、実際の払戻しや分配の方法については、相続人間で調整が必要になる場合があるため、生前に家族と方向性を共有しておくと安心です。

■ 現金(タンス預金)の記載について

現金についても遺言書に記載することは可能です。

ただし、「自宅の金庫に保管している現金〇〇万円」と金額を指定する場合は、遺言作成後に現金を使用してしまい、実際の金額と一致しなくなる可能性があります。

そのため、状況に応じて「自宅の金庫内に保管する現金一切」など、より矛盾の生じにくい形で記載する方法も検討するとよいでしょう。

複数人への財産分割の書き方

「長男には不動産、次男には預貯金、長女には株式を」といったように、財産の種類ごとに異なる相続人を指定する場合には、それぞれの財産を個別に記載し、誰に相続させるのかを明確にします。

その際には、あらかじめ所有している財産を整理し、記載漏れがないようにしてから作成することが大切です。

■ 記載例

第1条 遺言者は、次の不動産を長男 山田太郎(昭和55年3月10日生)に相続させる。

(不動産の詳細を記載)

第2条 遺言者は、次の預貯金を次男 山田次郎(昭和57年5月20日生)に相続させる。

〇〇銀行 △△支店 普通預金 口座番号1234567

第3条 遺言者は、次の有価証券を長女 山田花子(昭和58年7月15日生)に相続させる。

××証券 口座番号9876543に保管されている株式一切

条文ごとに整理すると、誰がどの財産を取得するのかが明確になります。

■ 記載漏れを防ぐための条項

細かい財産(自動車、家財、貴金属など)や、遺言作成後に取得した財産に備え、全てを対象とした条文を設ける方法もあります。

第4条 遺言者は、本遺言書に記載のないその他一切の財産を、

長男 山田太郎、次男 山田次郎、長女 山田花子の3名に、

それぞれ3分の1ずつの割合で相続させる。

このように定めておけば、記載していない財産についても、原則として指定した割合で承継されることになります。

ただし、具体的な分配方法については相続人間で調整が必要となる場合があります。

■ 財産価値の偏りへの配慮(代償分割)

特定の相続人が高額な不動産を取得する場合、他の相続人との間で不公平が生じることがあります。そのような場合には、代償金を支払う旨を遺言で定めることも可能です。

(記載例)

長男 山田太郎は、第1条記載の不動産を取得する代償として、

次男 山田次郎および長女 山田花子に対し、

それぞれ金〇〇万円を、本遺言執行後6か月以内に支払う。

支払期限や金額を明確にしておくことで、後日の紛争を防ぎやすくなります。

■ 事前の家族間の共有も重要

分割内容が複雑になるほど、相続人間の理解や納得が得られにくくなる場合があります。可能であれば、生前に家族へ意図を伝えておくことも、将来の紛争防止につながります。

遺言書は法的効力を持つ重要な書類です。遺留分や相続税、代償分割などの論点が絡む場合には、弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、より確実な内容に整えることができます。

遺言書の保管方法を徹底比較

保管方法を誤ると、遺言書が発見されなかったり、改ざんや紛失のリスクにさらされたりして、内容が十分に実現されない可能性があります。遺言書には法的効力がありますが、相続開始後にきちんと見つかり、適切な手続きを経て執行されてこそ意味を持ちます。つまり、「書いただけ」「しまっておいただけ」では不十分なのです。

例えば、自宅保管では家族に知られず見つからないケースや、逆に紛失・改ざんのリスクがあります。一方で、厳重に保管しすぎて、いざというときに開けられないという事例もあります。

ここでは、遺言書の保管方法について、それぞれのメリット・デメリットや費用、特徴を整理します。ご自身に合った保管方法を選ぶための参考にしてください。

自宅保管のメリット・デメリット

遺言書を自宅で保管する方法は、最も手軽な方法のひとつです。ただし、その反面、一定のリスクも伴います。

まずはメリットから見ていきましょう。

■ 自宅保管の主なメリット

① 保管自体に費用がかからない
法務局への手数料や専門家への保管料は不要です(※ただし、公正証書遺言の作成費用などは別途かかります)。

② 手元にある安心感
いつでも内容を見直したり、書き換えたりできるため、柔軟に対応できます。

③ プライバシーを保ちやすい
遺言内容を第三者に知られたくない場合にも適しています。

例えば、「気持ちが変わったらすぐ書き直したい」「まずは自分だけで準備したい」という方にとっては取り組みやすい方法です。

■ 自宅保管のデメリット

① 紛失・破損・改ざんのリスク
火災や水害などで失われる可能性があります。また、相続を巡るトラブルがある場合、隠匿や改ざんのリスクも否定できません。

② 発見されない可能性
相続開始後に遺言書が見つからなければ、実質的に存在しないのと同じ状態になります。保管場所を誰にも伝えていない場合、このリスクは高まります。

③ 検認手続きが必要(自筆証書遺言の場合)
法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言は、家庭裁判所での「検認」が必要です。手続きには一定の時間と手間がかかり、相続人全員に通知が行われます。

④ 形式不備による無効リスク
自筆証書遺言では、原則として全文自書・日付・署名・押印が必要です。これらを欠くと無効になる可能性があります。専門家の確認を受けずに保管していると、不備に気づかないままになることがあります。

■ 自宅保管が向いている方

一方で、

という場合には、法務局保管制度や専門家による預かりも検討するとよいでしょう。

法務局保管制度の手続きと費用

2020年7月にスタートした「自筆証書遺言書保管制度」は、国が運営する公的な保管制度です。法務局が遺言書を保管するため、紛失や改ざんのリスクを大幅に減らすことができ、家庭裁判所での検認手続きも不要になるという大きなメリットがあります。

では、具体的にどのような手続きが必要で、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。

■ 手続きの流れ

① 遺言書の作成
この制度は「自筆証書遺言」が対象です。公正証書遺言は公証役場で保管されるため、制度の対象外となります。

遺言書は自筆で作成し、法務省が定める様式に従ってA4サイズの用紙に記載します。余白の幅や文字のサイズなどにも一定のルールがあるため、事前に法務局の案内を確認しておくと安心です。

② 保管申請書の記入
法務局の窓口またはオンラインで申請書を入手し、必要事項を記入します。氏名、本籍、生年月日などを正確に記載しましょう。

③ 予約と来局
保管申請は事前予約制です。法務局のウェブサイトまたは電話で予約を取り、本人が直接来局します。代理人による申請は認められていません。

④ 本人確認と書類提出
運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を持参し、遺言書と申請書を提出します。 法務局では形式面の確認が行われ、問題がなければ保管が完了します。

⑤ 保管証の交付
保管が完了すると「保管証」が交付されます。保管番号が記載されており、遺言書の閲覧や撤回の際に必要となります。

■ 費用について

法務局での保管には、保管申請手数料として3,900円がかかります。
これは一度きりの支払いであり、その後の保管料や更新料は不要です。

また、保管後に遺言書の内容を閲覧する場合には、別途手数料がかかります。

■ この制度のメリット

■ 注意点

法務局が確認するのは、あくまで形式面に限られます。遺言の内容が適切か、法的トラブルが起きにくいかといった点までは判断されません。

そのため、内容に不安がある場合は、事前に弁護士や司法書士などの専門家へ相談したうえで申請することが望ましいでしょう。

■ 法務局保管制度が向いている方

法務局保管制度は、自宅保管の不安を減らしながらも、コストを抑えられる現実的な選択肢として注目されています。

専門家預かりという選択肢

自宅保管にも法務局保管にも一長一短があるなかで、もう一つ検討したいのが「専門家に預ける」という方法です。弁護士や司法書士のほか、行政書士、信託銀行(遺言信託)などが、遺言書に関するサポートや保管・執行サービスを提供しています。

この方法の特徴は、単に保管するだけでなく、遺言内容の確認や相続開始後の手続きまで、状況に応じてサポートを受けられる点にあります(※対応範囲は専門家や契約内容によって異なります)。

■ 専門家預かりの具体的な内容

例えば弁護士や司法書士に依頼する場合、遺言書を保管するだけでなく、次のような支援を受けられることがあります。

■ 専門家を遺言執行者にするメリット

遺言執行者として専門家を指定しておくことで、相続手続きが円滑に進みやすくなります。また、相続人同士の感情的な対立が起きやすいケースでも、第三者である専門家が淡々と手続きを進めることで、トラブルを抑えられる場合があります。

■ 費用について

専門家に依頼する場合の費用は、サービス内容や事務所によって異なります。一般的には次のような体系です。

信託銀行の遺言信託の場合は、作成支援・保管・執行まで含むサービスとなることが多く、初期費用や執行報酬が比較的高額になるケースもあります。

■ 専門家預かりのメリット

■ デメリット・注意点

一方で、費用が高額になりやすいことは注意が必要です。遺産規模によっては、執行報酬が割高に感じられる場合もあります。また、長期間にわたって関係が続くこともあるため、事前に面談を行い、信頼できる専門家かどうかを見極めることが重要です。

さらに、専門家が廃業した場合などに備えて、契約時に「後任への引き継ぎ」や「契約終了時の取り扱い」を確認しておくと安心です。

■ 専門家預かりが向いている方

まとめ

「遺言書を書きたいけれど、自分だけで進めるのは不安」――そう感じたとき、弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談するという選択肢があります。ただし、すべての方が専門家に頼る必要があるわけではありません。

■ 専門家への依頼を検討すべきケース

① 財産の種類や数が多い場合
自宅の不動産だけでなく、複数の土地・建物、株式、預貯金が複数の金融機関に分散している場合です。
こうしたケースでは、財産の特定や評価、分割方法の設計などに専門的な知識が必要になります。自己流で作成した結果、記載漏れや財産の特定不足があると、相続手続きが滞ったりトラブルの原因になったりする可能性があります。

② 相続人の数が多い、または家族関係が複雑な場合
前妻との間に子がいる、現在の配偶者との間にも子がいる、親族関係が良くないなどの状況では、遺言内容によって「遺留分」を侵害し、後から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
専門家に相談することで、紛争リスクを踏まえた遺言内容を設計しやすくなります。

③ 事業を営んでいる方や、会社の株式を持っている方
事業用資産や株式の分配は、事業の継続に直結します。
相続人全員に均等に分けると、経営権が分散し、意思決定が難しくなる場合があります。後継者に株式を集中させたい場合などは、遺言の設計が非常に重要です。

④ 遺言執行者を指定したい場合
遺言執行者とは、遺言内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。
不動産の名義変更や預金の解約・分配などを、遺言執行者が中心となって進めることができます。相続人同士の関係が不安な場合や、手続きの負担を家族にかけたくない場合、専門家を遺言執行者に指定しておくことで、手続きが客観的かつ円滑に進みやすくなります。

⑤ 遺言内容に特別な配慮が必要な場合
障がいのある子に多めに財産を残したい、介護をしてくれた親族(例:長男の妻)に財産を渡したい、といったケースです。
このような場合は、遺留分への配慮や遺贈の記載方法など、法的な整理が必要になるため、専門家に相談しながら進めることが望ましいでしょう。

■ 自分で作成しても対応できるケース

一方で、財産が自宅と少額の預貯金程度で、相続人が配偶者と子ども1人のみ、家族関係も良好といった場合には、自筆証書遺言でも十分対応できることが多いです。

ただ、「念のため一度専門家に確認してもらいたい」という理由で相談するのも有効です。

■ 弁護士と司法書士、どちらに依頼すべきか

弁護士は、遺言書作成だけでなく、相続トラブルが起きた場合の代理交渉や裁判手続きにも対応できます。争いが予想される場合や、遺留分対策など複雑な調整が必要な場合には、弁護士への相談が適しています。

司法書士は、不動産登記(相続登記)や相続手続きに強く、遺言作成から登記まで一体的にサポートを受けられる点がメリットです。ただし、相続人間の争いが生じている場合や、裁判対応が必要な場合には、弁護士の対応が必要になります。

費用面についても案件によりますが、一般的には司法書士の方が比較的相談しやすい料金体系となっているケースもあります。

伴法律事務所は、遺産分割や相続トラブルの専門家として、豊富な知識と実績があります。メールやLINE、電話でのご相談の他に、初回相談を60分無料で受付しております。生前の対策をされたい方も、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者

弁護士 伴 広樹

経歴

神奈川県厚木市出身。1997年司法試験合格後、2000年に司法修習を修了(52期)し、弁護士登録。横浜市内の法律事務所に勤務後、2004年に伴法律事務所を開設。年間280件の相続の法律相談に対応している。
弁護士業務では①お客様の期待に沿う徹底した調査,②お客様が納得できる提案力,③お客様が安心して任せられる確実かつ迅速な処理の3つを心がけており、実際に業務に対しての評価も高い。

活動・公務など

・神奈川大学非常勤講師(2009年9月~2016年3月)
・明治大学リバティアカデミー(市民講座)講師(2015年~2016年)
・横浜弁護士会(現神奈川県弁護士会)常議員(2009年4月~2010年3月)
・一般社団法人神奈川健康生きがいづくりアドバイザー協議会神奈川健生成年後見センター運営委員会委員(2015年8月~)
・セミナー講師としての活動 川崎市役所,東京地方税理士会保土ヶ谷支部,神奈川県宅地建物取引業協会横浜中央支部,神奈川青年司法書士協議会など各種団体におけるセミナー講師を担当

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