相続放棄の「申述書」とは?裁判所の必要書類を解説
相続放棄を検討する際、必ず耳にするのが「申述書(しんじゅつしょ)」という書類です。「何を書けばいいのか分からない」「提出を間違えるとどうなるのか不安」と感じている方も多いのではないでしょうか。相続放棄は、家庭裁判所に申述書を提出して初めて成立する正式な手続きであり、書類の不備や記載ミスがあると受理されないこともあります。
この記事では、相続放棄に必要な「申述書」とは何かという基本から、裁判所に提出する書類の内容や注意点まで解説していきます。
相続放棄とは?家庭裁判所での申述手続き概要
相続放棄は、亡くなった方の財産や借金を法的に一切引き継がないと宣言する正式な手続きであり、口頭や当事者間の話し合いだけでは成立しません。必ず家庭裁判所に申述を行い、受理されて初めて効力が生じます。また、一度受理されると原則として撤回できないため、手続きの内容を正しく理解しておくことが重要です。
この記事では、相続放棄の基本となる「申述」とは何かという点から、家庭裁判所で行う手続きの概要について解説していきます。
相続放棄の法的効力と申述の意味
相続放棄が法的に成立するためには、家庭裁判所に「相続放棄の申述」を行い、それが受理される必要があります。申述とは、裁判所に対して「相続する意思がない」ことを正式に届け出る法的な手続きです。この申述が受理されることで、申述人は法律上「初めから相続人ではなかったもの」として扱われます。
この効果は非常に強力です。たとえば、被相続人に多額の借金があった場合でも、相続放棄が受理されれば、その借金について債権者から支払いを求められることはありません。また、遺産分割協議に参加する必要もなくなり、相続財産を取得しないため、原則として相続税の納税義務者にもなりません。
一方で、相続放棄には注意点もあります。相続放棄が受理される前に、相続財産を処分したり使用したりすると、「単純承認」をしたとみなされ、相続放棄が認められなくなる可能性があります。たとえば、被相続人の預金を引き出して使用した場合、それが「相続財産の処分」と判断されることもあります。ただし、葬儀費用の支払いなどについては、金額や状況によって判断が分かれるケースもあり、一概には言えません。
申述とは、単に「相続しません」と意思表示することではなく、家庭裁判所という公的機関を通じて、その意思を正式に記録してもらう行為です。親族間で話し合っただけでは法的な効力は生じません。だからこそ、相続放棄は慎重に判断し、必要に応じて専門家に相談しながら進めることが重要です。
他の放棄(遺留分放棄・事実上の放棄)との違い
相続放棄と似た言葉に「遺留分放棄」や「事実上の相続放棄」といった表現がありますが、これらは相続放棄とは法的な意味も効果もまったく異なります。混同すると、後から思わぬ責任を負うことになりかねませんので、違いを正しく理解しておきましょう。
1.遺留分放棄
遺留分放棄とは、被相続人が生前に遺言などで財産の配分を決めている場合に、相続人に保障されている最低限の取り分(遺留分)について、その請求権だけを事前に放棄する手続きです。
遺留分放棄は、相続そのものを放棄するものではありません。相続人としての地位はそのまま残るため、相続開始後に相続放棄をしない限り、借金などの負債も相続の対象となります。この手続きは、被相続人の生前に家庭裁判所の許可を得て行う必要があり、相続開始後には行えません。
2.事実上の相続放棄
「事実上の相続放棄」とは法律上の用語ではなく、一般に遺産分割協議で財産を一切受け取らないことに同意する行為を指す俗称です。たとえば、「兄がすべて相続する」という内容の遺産分割協議書に署名するケースがこれにあたります。
しかし、この方法には大きな落とし穴があります。遺産を受け取らなかったとしても、法律上は相続人のままであり、相続放棄をしたことにはなりません。そのため、被相続人に借金があった場合や、後から債権者が現れた場合には、法定相続分に応じて支払いを求められる可能性があります。
遺産分割協議は、あくまで「プラスの財産をどう分けるか」を決める手続きであり、マイナスの財産(借金)から免れる手段ではないという点を理解しておく必要があります。
家庭裁判所で行う正式な相続放棄だけが、プラスの財産もマイナスの財産も含めて、法律上「初めから相続人ではなかった」という地位を得られる唯一の確実な方法です。借金の存在が少しでも疑われる場合や、将来的なリスクを完全に遮断したい場合には、遺産分割による調整ではなく、相続放棄を選択することを検討しましょう。
申述から受理までの全体の流れ
相続放棄は、単に「相続しません」と意思表示するだけでは成立しません。家庭裁判所への申述が受理されて初めて法的な効力が生じる正式な手続きです。ここでは、申述から受理までの流れを順を追って解説します。
① 熟慮期間(3か月以内)を確認する
相続放棄には期限があります。
相続放棄ができるのは「自己のために相続が開始したことを知った日から3か月以内」です。この期間を「熟慮期間」といいます。原則として、この期限を過ぎると相続放棄はできません。
② 必要書類を準備する
次に、家庭裁判所へ提出する書類を揃えます。
主な必要書類は以下のとおりです。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの)
- 申述人の戸籍謄本
※ 相続関係(配偶者・子・兄弟姉妹など)によって、追加書類が必要になる場合があります。
③ 家庭裁判所へ申述書を提出する
書類が揃ったら、次の裁判所へ提出します。
- 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
- 提出方法は「窓口提出」または「郵送」が一般的
提出後、裁判所による形式的な審査が行われます。
④ 照会書(質問書)に回答する
多くの場合、裁判所から照会書(質問書)が送付されます。
主な確認内容は以下のとおりです。
- 相続放棄が本人の意思かどうか
- 相続財産を処分していないか
- 放棄理由の確認
内容に正確に回答し、期限内に返送することが重要です。
⑤ 相続放棄の受理・完了
問題がなければ、申述は受理されます。
「相続放棄申述受理通知書」が発行され、この時点で、法律上「初めから相続人ではなかった」という扱いになります。そのため、借金などの負債を負うことはありません。
少しでも判断に迷う場合や、借金の有無が不明な場合は、熟慮期間内に専門家へ相談することをおすすめします。
申述期限と事前準備
相続放棄の手続きは、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出することから始まります。ここでは、まず押さえるべき期限のルールと、相続人の立場ごとに異なる必要書類の全体像を整理しましょう。準備段階での見落としを防ぎ、スムーズな手続きを目指します。
3ヶ月の申述期限と起算日・延長申立て
相続放棄の期限は、民法により「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」
と定められています。この「知った時」が重要なポイントで、必ずしも被相続人が亡くなった日から起算されるわけではありません。
たとえば、疎遠だった親族が亡くなっていたことを後から知り、さらに債権者からの連絡によって初めて「自分が相続人である」と認識した場合、その時点が起算日と判断される可能性があります。ただし、債権者からの通知日が必ず起算日になるとは限らず、個別事情に応じて裁判所が判断します。
一方で、「死亡の事実は知っていたが、借金の存在を後から知った」というケースでは注意が必要です。裁判所は、
- 被相続人との関係性
- 同居の有無
- 通常の注意を払えば債務の存在を知り得たか
といった事情を考慮し、「知った時」を厳格に判断することがあります。そのため、相続開始を知った段階で、できるだけ早く財産と負債の調査を行うことが重要です。
3か月という熟慮期間は、戸籍収集や財産調査、親族間の確認を行うには決して長くありません。もし
- 財産関係が複雑
- 書類収集に時間がかかる
- 相続人が遠方にいる
といった事情がある場合は、熟慮期間内に家庭裁判所へ「熟慮期間伸長の申立て」を行うことで、一定期間の猶予が認められる可能性があります。
伸長の可否や期間は裁判所の判断に委ねられますが、申立書には具体的かつ客観的な理由を記載する必要があります。「忙しい」「考えがまとまらない」といった理由だけでは、認められにくい点には注意が必要です。期限が迫ってから慌てるよりも、早めに専門家へ相談し、必要に応じて伸長申立てを検討することが、後悔しない相続放棄につながります。
相続人別必要書類一覧
相続放棄の申述に必要な書類は、どの順位の相続人かによって異なります。以下は、家庭裁判所で一般的に求められる基本的な書類の目安です。実際には、事案により追加提出を求められることがあります。
【共通して必要な書類】(原則すべての相続人)
- 相続放棄申述書(裁判所書式)
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
- 申述人(あなた)の戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票 または 戸籍附票
※ 管轄裁判所により省略可能な場合あり
【配偶者】
追加書類
- 原則なし
(共通書類のみで足りるケースがほとんど)
【子ども(第一順位相続人)】
追加書類
- 特になし
- ※ 代襲相続(孫など)の場合
- 本来の相続人(親)の死亡の記載がある戸籍謄本
【親(第二順位相続人)】
追加書類
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 被相続人に子がいないこと、または全員が相続放棄・死亡していることが分かる戸籍
【兄弟姉妹(第三順位相続人)】
追加書類
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 被相続人に子および直系尊属(親・祖父母)がいない、または全員が死亡していることが分かる戸籍
- ※ 代襲相続(甥・姪)の場合
- 本来の相続人(兄弟姉妹)の死亡の記載がある戸籍謄本
書式と注意点
相続放棄申述書の書式は、最高裁判所公式サイト(https://www.courts.go.jp)、および各家庭裁判所のウェブサイトから入手できます。記入例も公開されているため、必ず確認してください。
なお、書類に不備があると補正を求められ、熟慮期間(3か月)内に手続きが間に合わなくなるリスクがあります。提出前には、戸籍のつながり・死亡記載の有無・通数を必ず確認しましょう。
戸籍謄本等の取得方法と準備のコツ
戸籍謄本は、被相続人の本籍地がある市区町村役場で取得できます。窓口へ直接出向くのが最も確実ですが、遠方に住んでいる場合は郵送による請求も可能です。
【郵送請求の手順】
郵送請求では、一般的に次の書類を同封します。
- 請求用紙の準備
自治体の公式ウェブサイトからダウンロードするか、役所へ問い合わせて入手します。 - 手数料の用意
定額小為替をゆうちょ銀行で購入します。
戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍はいずれも1通450円が一般的ですが、念のため事前確認しましょう。 - 本人確認書類のコピー
運転免許証やマイナンバーカードなど。 - 返信用封筒
自身の住所・氏名を記載し、切手を貼付します。
これらを同封して、該当する役所へ郵送します。
出生から死亡までの連続した戸籍を揃える場合、転籍や婚姻などにより、複数の市区町村に戸籍が分散していることは珍しくありません。まず最新の戸籍を取得し、そこに記載されている「従前本籍」を手がかりに、古い戸籍を順番に請求していくのが一般的な方法です。請求先が分からない場合は、役所に電話で確認しながら確実に進めましょう。
戸籍には「戸籍謄本(全部事項証明書)」と「戸籍抄本(個人事項証明書)」がありますが、相続放棄の申述では原則として戸籍謄本が必要です。抄本では相続関係の全体像が確認できないため、裁判所から追加提出や補正を求められる可能性が高くなります。
また、コンビニ交付サービスでは、現在の戸籍しか取得できないことが多く、改製原戸籍や除籍謄本は窓口または郵送請求が必要になります。
書類準備のコツは、
「できるだけまとめて請求すること」と
「余裕を持ったスケジュールを組むこと」です。
郵送請求では往復で1〜2週間かかることも珍しくありません。3か月の熟慮期間を考えると、訃報を受けてから1か月以内に動き出すのが理想的です。年末年始や大型連休は役所の処理が遅れがちになるため、特に注意しましょう。
もし戸籍収集に行き詰まったり、「この書類で足りるのか不安」と感じた場合は、専門家へ相談することをおすすめします。司法書士や弁護士に依頼すれば、戸籍収集から申述書作成、家庭裁判所への提出まで一括してサポートしてもらうことも可能です。費用はかかりますが、期限を逃すリスクや補正対応の負担を考えれば、安心できる選択肢でもあります。
相続放棄申述書の正しい書き方
相続放棄をするには、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出する必要があります。申述書には決まった書式があり、「誰が」「誰の相続について」放棄するのかなど、必要事項を記入しなければなりません。ここでは、申述書の入手方法から記入の流れ、具体的な記入例までを順を追って分かりやすく解説します。記入のポイントを押さえておけば、補正の手間を減らし、手続きをスムーズに進めやすくなるため、ぜひ参考にしてください。
申述書フォームの入手方法
相続放棄申述書は、裁判所が用意している公式書式を使用する必要があります。いずれも無料で入手でき、主な方法は次の3つです。
1.裁判所ウェブサイトからダウンロード
最高裁判所のウェブサイトにある「裁判所の手続案内」ページから、申述書のPDFファイルをダウンロードできます。
申述書は、
- 相続放棄申述書(成人用)
- 相続放棄申述書(未成年者用)
の2種類が用意されており、ご自身の状況に合ったものを選びます。未成年者の場合は、法定代理人(親権者など)が申述人として記入・署名します。
記入方法は、パソコンで入力して印刷する方法でも、手書きでも問題ありません。ただし、署名欄は原則として自署する必要があります。
2.家庭裁判所の窓口で直接入手
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所の窓口で、申述書の用紙を直接受け取ることも可能です。窓口では、提出先や書類の種類について簡単な案内を受けられる場合があります。
ただし、具体的な記載内容の指導や法律相談は行われないため、その点は理解しておきましょう。また、開庁時間は平日の日中(一般的に午前8時30分〜午後5時)に限られます。
3.郵送で取り寄せ
管轄の家庭裁判所に電話で問い合わせると、申述書を郵送で送付してもらえる場合があります。ただし、対応の可否や方法は裁判所ごとに異なるため、事前確認が必要です。返信用封筒や切手の同封を求められることもありますので、あわせて準備しておきましょう。
自宅で印刷できる環境がある場合は、ウェブサイトからのダウンロードが最も手軽で迅速です。一方、書類に不安がある方や直接確認したい方は、家庭裁判所の窓口で確認すると安心して進めることができます。
申述人・被相続人情報の記入方法
申述書には、申述人(あなた)と被相続人(亡くなった方)の情報を記入する欄があります。戸籍や住民票等の公的書類と表記を一致させるのが基本です。
申述人の情報欄(あなたの情報)
- 氏名:戸籍謄本どおりに正確に記入します。旧字体・異体字も可能な限り合わせましょう。
- 住所:原則として現住所を記入します(住民票と一致しているのが一般的です)。
- 本籍:戸籍謄本に記載された本籍をそのまま転記します。
- 電話番号:裁判所から連絡が取れる番号を記入します。携帯電話でも問題ありません。平日昼間につながりやすい番号だと補正対応がスムーズです。
被相続人の情報欄(亡くなった方の情報)
- 氏名・本籍:被相続人の戸籍等の記載に合わせて記入します。
- 最後の住所:住民票の除票や戸籍の附票に記載された内容と一致させます。
- 死亡年月日:戸籍等の記載どおりに正確に記載します。元号表記(令和〇年〇月〇日)で書く運用が多いですが、西暦でも様式に従いましょう。
「申述人と被相続人の関係(続柄)」の書き方(重要)
ここは申述人から見た続柄を記入します。
- 被相続人が父・母 → 申述人は 「子」(または「養子」等)
- 被相続人が祖父・祖母 → 「孫」
- 被相続人が兄弟姉妹 → 「兄」「姉」「弟」「妹」(様式により「兄弟姉妹」と書く場合も)
- 代襲相続(被相続人が叔父・叔母、申述人が甥・姪)→ 「甥」「姪」
続柄の記載が誤っていると、相続関係の確認に時間がかかり、補正を求められる原因になります。戸籍上の関係に合わせて慎重に確認しましょう。
放棄理由と相続財産概略の書き方
相続放棄申述書には、「放棄の理由」と「相続財産の概略」を記入する欄があります。ただし、相続放棄は理由の正当性を審査する制度ではありません。家庭裁判所は、主に申述が期限内か、本人の意思によるものか、相続財産を処分するなどの行為(単純承認)がないかを確認します。
放棄理由の選択と記入
申述書には、放棄理由としていくつかの選択肢が用意されています(裁判所の様式により表現は異なります)。一般的な例は次のとおりです。
- 相続財産より債務が多い
- 相続財産の内容が不明
- 特定の相続人に財産を取得させたい
- その他
該当する項目にチェックを入れ、「その他」を選ぶ場合は、簡潔に事実関係を記載すれば足ります。
例としては、
- 「被相続人との生前の交流が少なく、相続財産の内容が把握できないため」
- 「被相続人に借入があることが判明したため」
などで十分です。
理由を法律的に詳しく説明する必要はありません。虚偽の記載を避け、事実に基づいた簡潔な記載を心がけましょう。
相続財産の概略の記入
「相続財産の概略」欄には、申述時点で把握している範囲で、次のような項目を記載します。
- 不動産(有無・概算評価)
- 預貯金(有無・概算額)
- その他の財産
- 負債(借金)の有無・概算額
記入例
- 不動産:なし
- 預貯金:約○○万円(通帳確認済)
- 負債:消費者金融からの借入 約○○万円(通知書あり)
内容が不明な場合は、「不明」「調査中」と記載して差し支えありません。相続放棄は、財産の詳細が判明していない段階でも申述が可能な制度です。
ただし、明らかに把握している財産や負債を意図的に記載しないことは避けましょう。後日、虚偽申述と判断されると、トラブルの原因となる可能性があります。
実際の記入例とポイント解説
ケース例:父親が亡くなり、長男が相続放棄をする場合
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項目 |
記入例 |
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申述人情報 |
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氏名 |
山田 太郎 |
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生年月日 |
昭和55年4月10日 |
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住所 |
東京都新宿区西新宿1丁目2番3号 |
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本籍 |
東京都新宿区西新宿一丁目 |
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電話番号 |
090-1234-5678 |
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被相続人情報 |
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氏名 |
山田 一郎 |
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本籍 |
東京都新宿区西新宿一丁目 |
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最後の住所 |
東京都新宿区西新宿1丁目2番3号 |
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死亡年月日 |
令和6年12月1日 |
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申述人との続柄 |
子 |
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相続の開始を知った日 |
令和6年12月1日(死亡の事実を知った日) |
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放棄の理由 |
☑ 債務超過のため |
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具体的理由 |
被相続人に消費者金融からの借入があることが判明したため |
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相続財産の概略 |
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不動産 |
なし |
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預貯金 |
約50万円(A銀行普通預金) |
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有価証券 |
なし |
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その他 |
なし |
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負債 |
約300万円(消費者金融B社・C社) |
記入時の重要ポイント
氏名・住所
- 戸籍・住民票と完全一致させる
- 「1-2-3」ではなく「一丁目2番3号」など正式表記を推奨
相続開始を知った日
- 死亡日=知った日の場合はその日を記入
- 後日知った場合は「死亡を知った日」を記入
放棄理由
- 簡潔・事実ベースで十分
- 詳しく書きすぎない(管理行為と誤解されるリスクあり)
相続財産の概略
- 申述時点で把握している範囲のみ
- 不明な場合は「不明」「調査中」で可
署名・押印
- 署名は必ず自署
- 押印欄がある場合は 認印で可
- シャチハタは不可
よくある記入ミス
- 本籍と住所を混同する
- 住所を省略形で書く
- 「葬儀の日」「四十九日」を起算日にしてしまう
- 押印漏れ・シャチハタ使用
これらは補正対象になりやすいため、提出前に必ず確認しましょう。
申述書は必ずコピーを取って保管してください。
後日届く照会書への回答時や、受理証明書の請求時に非常に役立ちます。
家庭裁判所への提出手続きと費用
相続放棄の申述は家庭裁判所で行いますが、どの裁判所が管轄になるのか、提出方法は窓口と郵送のどちらがよいのか、必要な費用はいくらなのかを事前に把握しておくことで、手続きを落ち着いて進めることができます。費用自体は高額ではありませんが、収入印紙や郵便切手の準備など、細かな注意点もあります。
ここでは、管轄家庭裁判所の調べ方から、窓口・郵送それぞれの提出手順、実際にかかる費用の内訳について解説します。
管轄裁判所の調べ方
相続放棄の申述書は、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出します。申述人ご自身の住所地ではありませんので注意が必要です。
ここでいう「最後の住所」とは、民法上の住所を指しますが、実務上は住民票に記載されている住所地が基準とされることがほとんどです。そのため、まずは被相続人の住民票除票を取得し、記載されている住所を確認するとスムーズです。
たとえば、申述人が東京都に住んでいても、被相続人が大阪府に住民票を置いていた場合、提出先は大阪府を管轄する家庭裁判所となります。遠方の裁判所であっても、郵送による申述が可能なため、現地へ出向く必要はありません。
管轄裁判所を調べる主な方法
① 裁判所ウェブサイトで調べる
最高裁判所の公式サイトには、「裁判所の管轄区域」を調べられるページがあります。都道府県や市区町村を選択することで、対応する家庭裁判所名と所在地、連絡先を確認できます。スマートフォンからも利用でき、24時間いつでも確認できるため便利です。
② 家庭裁判所に電話で問い合わせる
インターネットでの確認が難しい場合や、住所地の判断に迷う場合は、最寄りの家庭裁判所や裁判所の案内窓口に電話で問い合わせる方法もあります。被相続人の住所を伝えれば、管轄裁判所の案内や提出方法、必要書類の一般的な説明を受けることができます。ただし、個別具体的な法律判断についての相談はできない点に注意しましょう。
住所判断に関する注意点
被相続人が施設入所中だった場合など、住民票上の住所と実際の生活拠点が異なるケースもあります。この場合でも、多くは住民票上の住所地が管轄の基準となりますが、状況によって判断が分かれることもあります。判断に迷う場合は、事前に家庭裁判所へ確認するか、専門家に相談すると安心です。
提出方法(窓口・郵送)と必要費用
管轄する家庭裁判所が分かったら、相続放棄申述書と必要書類を提出します。提出方法は、「窓口へ持参する方法」と「郵送する方法」の2通りがあり、ご自身の状況に応じて選択できます。
窓口での提出
裁判所が近い方や、書類の確認をしながら進めたい方は、窓口提出を選ぶことができます。家庭裁判所の受付窓口に書類一式を提出すると、形式的な不備について簡単な確認を受けられる場合があります。
ただし、記載内容の是非や法律的判断についての説明は受けられません。また、その場で全ての不備が指摘されるとは限らず、後日あらためて補正の連絡が来ることもあります。
受付時間は、通常平日の午前8時30分から午後5時までです(裁判所により異なる場合あり)。昼休み時間帯も受付していることが多いですが、混雑する場合があるため余裕をもって訪問しましょう。
郵送での提出
遠方にお住まいの方や、平日に裁判所へ行けない場合は、郵送による提出が可能です。普通郵便でも法的には問題ありませんが、到達確認ができる簡易書留やレターパックを利用すると安心です。
封筒には「相続放棄申述書在中」と明記し、以下の書類を同封します。
- 相続放棄申述書
- 戸籍謄本などの必要書類
- 収入印紙
- 返信用封筒(申述人の住所・氏名を記入し、裁判所指定額の切手を貼付)
返信用封筒は、照会書や受理通知書を受け取るために必要です。切手代は時期や裁判所により異なるため、事前に確認することをおすすめします。
郵送後、受理通知書が届くまでの期間は、おおむね1〜3週間程度が目安です。照会書が送付された場合は、回答後に受理となるため、さらに時間がかかることもあります。
必要費用の目安
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項目 |
費用(1人あたり) |
備考 |
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収入印紙 |
800円 |
申述書に貼付 |
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郵便切手 |
数百円程度 |
裁判所指定額(要確認) |
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戸籍謄本等取得費用 |
1通450円 |
必要通数により変動 |
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合計 |
2,000円前後 |
目安 |
相続放棄は、比較的少額の費用で行える手続きです。専門家へ依頼する場合と比べ、費用を抑えられる点が、ご自身で申述するメリットといえるでしょう。
申述後に届く照会書への対応と受理までの流れ
相続放棄の申述書を家庭裁判所へ提出したあと、必要に応じて裁判所から「照会書(しょうかいしょ)」が郵送されることがあります。これは、申述内容について事実確認を行い、相続放棄が本人の真意によるものか、法的に問題がないかを確認するための質問書です。照会書が届いても慌てず、正しく対応できるよう、以下の内容をぜひ参考にしてください。
家庭裁判所からの照会書とは
照会書とは、家庭裁判所が相続放棄の申述について確認するため、申述人(相続放棄をする人)に送付する質問形式の書面です。申述書を提出した後、必要に応じて送られてきます。到着時期は裁判所や事案によって異なりますが、提出後1〜3週間程度が目安です。
封筒には家庭裁判所名が記載されており、中には質問票(選択式・記述式)と、返信用封筒が同封されていることが多いです(同封物は裁判所によって異なる場合があります)。
照会書が送られてくる主な理由
照会書は「落とすためのもの」ではなく、相続放棄が適正に行われているかを確認するための手続きです。主に次の点が確認されます。
- 本人の意思と、単純承認にあたる行為がないかの確認
相続放棄は、受理されると原則として撤回できない重要な手続きです。そこで裁判所は、申述人が自分の意思で放棄しているか、また相続財産を処分するなど単純承認と評価され得る行為がないかを確認します。
例として、「被相続人の預金を引き出していないか」「遺産を処分していないか」などが問われることがあります。
- 申述期限(熟慮期間)に関する確認
相続放棄は原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります。照会書では、申述書に記載した「相続の開始を知った日」や、その経緯が具体的に確認されることがあります。
たとえば「疎遠で死亡したことを後から知った」「債務の存在を後から知った」などの場合、いつ・何をきっかけに知ったのかを事実ベースで説明できるようにしておくとスムーズです。
※3か月を大きく過ぎていると手続きが難しくなることもあるため、早めの対応が重要です。
- 未成年者・判断能力に配慮が必要な場合の確認
未成年者が申述する場合は、原則として法定代理人(親権者など)が手続きを行います。ただし、法定代理人自身も相続人であると、放棄の判断が利益相反になることがあり、特別代理人の選任が必要となるケースがあります。照会書で、こうした手続き面の整合性が確認されることもあります。
質問の分量
照会書の内容は家庭裁判所や事情によって異なりますが、一般的には10問前後の選択式・記述式で構成されます。平易な日本語で書かれていることが多いものの、慣れない言葉が出てくる場合もあります。焦らず、質問を一つずつ読み、事実に基づいて回答すれば大丈夫です。
受理通知書と受理証明書の取得
照会書への回答を返送した後、家庭裁判所による審査が行われ、問題がなければ相続放棄は「受理」されます。受理されると、申述人の住所宛に「相続放棄申述受理通知書」が、ハガキまたは封書で郵送されます。これは、相続放棄が正式に受理されたことを知らせる通知です。
受理通知書には、
- 受理年月日
- 事件番号(例:令和〇年(家)第〇〇〇号)
- 申述人の氏名
などが記載されています。
ただし、この受理通知書はあくまで裁判所からの通知であり、実務上、金融機関や債権者によっては「正式な証明書」として扱われないことがあります。
相続放棄を正式に証明する「受理証明書」
債権者など第三者に対して、相続放棄が受理された事実を正式に示すには、「相続放棄申述受理証明書」を別途取得する必要があります。
受理証明書は、家庭裁判所が発行する公的な証明書であり、相続放棄が受理された事実を第三者に対して客観的に証明できる書類です。
受理証明書の取得方法
- 申請書の作成
家庭裁判所所定の
「相続放棄申述受理証明書交付申請書」
を使用します。裁判所窓口で入手するか、裁判所のウェブサイトからダウンロードできます。
記載内容は、
- 申述人の氏名
- 被相続人の氏名
- 事件番号(受理通知書に記載)
などです。
- 手数料の準備
申請書1通につき、収入印紙150円分を貼付します。 - 申請方法
- 窓口申請:受理した家庭裁判所に提出。後日交付が原則(裁判所により即日可の場合もあり)。
- 郵送申請:申請書・収入印紙・返信用封筒を同封し郵送。1週間前後が目安。
受理証明書は何通必要?
受理証明書は必要な通数分を申請できます。債権者や金融機関が複数ある場合は、最初から必要通数をまとめて申請すると手間が省けます。
取得後は、債権者に提出することで「自分は相続放棄をしており、返済義務はない」という事実を正式に伝えることができます。
相続放棄は一度受理されると撤回できない重要な手続きです。照会書の回答内容や、受理証明書の取得方法に不安がある場合は、弁護士や司法書士に相談することで、より確実に手続きを進めることができます。
まとめ
相続放棄の申述書とは、亡くなった方(被相続人)の財産や借金を一切引き継がないという意思を、家庭裁判所に正式に届け出るための書類です。相続放棄は口頭や親族間の話し合いだけでは成立せず、必ず家庭裁判所での申述手続きを経る必要があります。
申述書には、申述人(相続放棄をする人)の氏名・住所・本籍、被相続人の氏名・最後の住所・死亡年月日、続柄などを正確に記載します。また、「相続開始を知った日」や「放棄の理由」「相続財産の概略」といった項目もあり、裁判所はこれらの内容をもとに、相続放棄が適法かどうかを審査します。
この申述書とあわせて提出が必要になるのが、戸籍謄本などの添付書類です。被相続人との関係性によって必要書類は異なりますが、一般的には、被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本や、申述人自身の戸籍謄本などが求められます。親や兄弟姉妹が相続人となるケースでは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になることもあります。
申述書の書式は家庭裁判所が定めたものがあり、裁判所の公式サイトから無料でダウンロード可能です。記入ミスや書類の不足があると補正を求められ、結果として手続きが長引く原因になります。相続放棄には原則3か月の期限があるため、申述書と必要書類を正確に準備することが、相続放棄を成功させる最大のポイントといえます。
伴法律事務所では、相続トラブルや遺産分割について、電話やメールでのご相談を無料で受付しております。初回相談は60分無料ですので、相続に悩みや不安がある方は、まずはお気軽にご相談いただきたいと思います。
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この記事の執筆者

弁護士 伴 広樹
経歴
神奈川県厚木市出身。1997年司法試験合格後、2000年に司法修習を修了(52期)し、弁護士登録。横浜市内の法律事務所に勤務後、2004年に伴法律事務所を開設。年間280件の相続の法律相談に対応している。
弁護士業務では①お客様の期待に沿う徹底した調査,②お客様が納得できる提案力,③お客様が安心して任せられる確実かつ迅速な処理の3つを心がけており、実際に業務に対しての評価も高い。
活動・公務など
・神奈川大学非常勤講師(2009年9月~2016年3月)
・明治大学リバティアカデミー(市民講座)講師(2015年~2016年)
・横浜弁護士会(現神奈川県弁護士会)常議員(2009年4月~2010年3月)
・一般社団法人神奈川健康生きがいづくりアドバイザー協議会神奈川健生成年後見センター運営委員会委員(2015年8月~)
・セミナー講師としての活動 川崎市役所,東京地方税理士会保土ヶ谷支部,神奈川県宅地建物取引業協会横浜中央支部,神奈川青年司法書士協議会など各種団体におけるセミナー講師を担当





