相続登記の義務化とは?期限と罰則について解説
2024年4月(令和6年)から、法改正により相続登記が義務化されました。以前は曖昧だった「いつまでに登記をするべきか?」が明確化され、正当な理由なく期限を過ぎると過料の可能性もあります。この記事では、相続登記の義務化についての制度の内容、期限や対象、放置した場合のリスクについて解説します。不動産を相続したら何をすべきか、今のうちに把握しておきましょう。ぜひ参考にしてください。
【2024年義務化】相続登記の期限はいつ?3年ルールを解説
相続登記が義務化され、それに伴い不動産を相続した場合には原則として3年以内に登記手続きを完了させなければならない、という制度ができました。この制度は、長年放置されがちだった相続登記を促進し、所有者不明土地問題を解決するために導入されました。これまで任意だった手続きが法的義務となったことで、もし期限内に対応しなかった場合は、10万円以下の過料(ペナルティ:罰金のようなもの)が科される可能性があります。この「3年ルール」について、具体的な計算方法や判定基準を詳しく見ていきましょう。
相続登記の期限「3年以内」起算日の計算方法と判定基準
相続登記とは、亡くなった人(被相続人)が所有していた土地・建物などの不動産を、相続人の名義へ変更するための手続きです。法務局で「登記申請」を行い、正式に相続人が所有者として登録されることで、不動産の売却や担保設定が可能になります。これまでは登記に期限がなく、長期間放置されるケースも多く、所有者不明土地の増加が社会問題となっていました。そのため、2024年4月からは相続登記が義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が必要となりました。
相続登記の「3年以内」という期限は、「相続によって不動産を取得したことを知った日」から数え始めます。ここでのポイントは「知った日」という表現です。単純に、亡くなられた方(被相続人)が亡くなった日とは限りません。
具体的には、次の2つの条件が揃った日から3年間が期限になります。
- 相続が開始したことを知った日
- 自分が不動産を相続したことを知った日
この2つの条件が満たされた日が起算日となります。
たとえば、お父様が亡くなられたことはすぐに知っていても、実家以外に山林を所有していたことを後から知ったケースを考えてみましょう。この場合、山林については「山林を相続したことを知った日」から3年間が期限となるわけです。
判定が難しい事例もあります。相続人が複数いて遺産分割協議がなかなかまとまらないとき、誰が何を相続するかが確定していない状態が続くことも考えられます。このような場合でも、法定相続分(法律で定められた相続の割合)に応じた相続登記を行う義務が発生するため、注意が必要です。
また、相続放棄や限定承認を検討している期間であっても、3年の期限は進行します。家庭裁判所への相続放棄の申述期限(3か月)と、相続登記の義務化期限(3年)は別々の制度として動いているため、混同しないようにしましょう。
過去の相続も対象!あなたの期限はいつまで?
相続登記義務化の大切なポイントの一つが、過去に発生した相続にも遡って適用されることです。つまり、制度開始の2024年4月1日より前に発生した相続についても、登記義務が生じることになります。
過去の相続については、特別な経過措置が設けられています。2024年4月1日時点で既に相続が発生しており、まだ相続登記が済んでいない不動産がある場合は、2027年3月31日までに登記を完了させる必要があります。
例えば、2020年にお母様が亡くなり、実家を相続することになったものの、まだ登記手続きを行っていない場合を考えてみてください。本来であれば2023年までに登記すべきでしたが、制度開始前だったため義務違反にはなりません。しかし、2024年4月1日以降は、2027年3月31日までに登記を完了させる必要があります。
さらに複雑なケースも考えられます。昭和や平成の早い時期に発生した相続で、祖父母名義のままになっている不動産がある場合です。このような場合でも、現在の相続人は2027年3月31日までに適切な相続登記を行う義務を負います。
数次相続(相続人がさらに亡くなっている状態)が発生している場合は、手続きが非常に複雑になりがちです。必要な戸籍の謄本の収集だけでも膨大になり、時間がかかることが多いため、早めに着手することが重要です。特に、相続人の中に行方不明者がいる場合や、海外に住んでいる方がいる場合は、さらに多くの時間を要するかもしれません。
期限が延長される正当な事由
相続登記の3年という期限は、決して絶対的なものではありません。正当な事由が認められる場合は、期限の延長が可能です。ただし、どのような事情が「正当な事由」として認められるかについては、個別の判断が必要となります。
法務省が例として挙げている正当な事由には、以下のようなケースがあります。
- 自然災害による被害: 地震、台風、洪水などの自然災害により、相続人が長期間にわたって登記手続きを行うことが困難になった場合です。災害の影響が解消された後、合理的な期間内に手続きを行えば義務違反とはされません。
- 重篤な疾病: 相続人ご自身が重病により長期入院を余儀なくされ、登記手続きを行うことが現実的に困難な場合です。ただし、単に忙しいといった理由や軽微な体調不良では認められません。
- 相続人間での紛争: 遺産分割協議が長期化し、家庭裁判所での調停や審判が必要になった場合、その期間中は正当な事由と認められる可能性があります。ただし、単に話し合いがまとまらないというだけでは不十分で、具体的な法的手続きが進行していなければなりません。
- その他: 相続人の数が極めて多い場合や、相続財産の範囲や評価について専門的な調査が必要な場合なども考慮されることがあります。
もし正当な事由に該当する可能性がある場合は、早めに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。事情によっては、期限内に法定相続分での相続登記を行い、後から正式な遺産分割に基づいて変更登記をするという方法も選択肢の一つとなります。専門家と相談することで、ご自身の状況に最も適した対応方法を見つけることができるはずです。
期限を過ぎるとどうなる?10万円の過料と緊急の対処法
2024年(令和6年)4月から始まった相続登記の義務化により、相続を知った日から3年以内に登記手続きを行わなければ、最大10万円の過料が科される可能性があります。しかし、この制度の詳細を正確に理解している方は意外と少なく、「いつから適用されるのか」「本当に10万円払わなければいけないの?」といった疑問をお持ちの方も多いことでしょう。以下、詳しく解説していきます。
10万円の過料はいつから?適用されるタイミングと金額の決め方
相続登記の義務化は2024年(令和6年)4月1日から施行されましたが、過料の適用については経過措置があります。2024年(令和6年)4月1日より前に発生した相続については、同日から3年間の猶予期間が設けられているため、実質的には2027年(令和9年)4月1日までに登記を完了すれば過料が科される心配はありません。
一方、2024年(令和6年)4月1日以降に発生した相続については、相続を知った日から3年以内に登記を行う必要があります。この「相続を知った日」というのがポイントで、必ずしも亡くなられた方(被相続人)が亡くなった日ではありません。例えば、疎遠だった親族の相続で、死亡の事実を後から知った場合は、その知った日が起算点となります。
過料の金額についても、必ず10万円というわけではありません。法務局は違反の程度や期間、義務者の経済状況、正当な理由の有無などを総合的に考慮して金額を決定すると言われています。初回の違反で期間も短い場合は、数万円程度になることもありますし、悪質性が高いと判断されれば満額の10万円が科される可能性もあるでしょう。
大切なのは、単に過料を避けることだけではありません。相続登記を適切に行うことで、将来的なトラブルを未然に防ぐことにつながります。登記をしないまま放置すると、相続人が増えて手続きが複雑になったり、不動産の売却ができなくなったりするデメリットがあるからです。また、固定資産税の支払い責任も曖昧になり、思わぬ問題に発展する可能性も否定できません。
期限超過が確定した場合の対応と相談先
もし期限を過ぎてしまった場合でも、慌てる必要はありません。まだ法務局から催告を受けていない段階であれば、速やかに相続登記の手続きを行うことで、過料を回避できる可能性が高いといえるでしょう。実際に、義務化が始まってから多くの方が登記手続きを行っており、法務局側も一定の配慮をしながら制度を運用しているのが現状です。
ただし、すでに法務局から催告書が届いている場合は、より慎重な対応が必要です。催告書には回答期限が設定されていますから、この期限内に適切な対応を取らなければ、過料の手続きが開始されてしまう可能性があります。この段階では、正当な理由を明確に説明し、可能な限り早期に登記手続きを完了させることが重要です。
期限が延長される正当な事由について、もしご自身が該当すると思われる場合は、それを適切に証明し、法務局に理解してもらう必要があります。こうした複雑な状況では、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
期限内に確実に完了させるにはどうする?
相続登記を期限内に確実に完了させるためには、事前の準備と計画的な進行が欠かせません。意外と時間と手間がかかるものですから、余裕を持って取り組むことが大切です。特に、必要書類の収集だけでも数週間を要する場合がありますので、早めに取りかかりましょう。
相続登記に必要な書類一覧と入手先
相続登記を進める上で最も重要なのが、必要書類の準備です。書類が一つでも不足していると、申請が受理されずに期限に間に合わない可能性もありますので、一つずつ確認していきましょう。
書類名 | 入手先 | 取得のポイント・注意点 |
亡くなられた方に関する書類 | ||
戸籍謄本等(出生から死亡まで連続したもの) | 本籍地の市区町村役場 | 転籍を繰り返している場合は複数の自治体から取り寄せる必要があります。郵送請求の場合、往復で1週間〜2週間程度かかることもあります。 |
住民票の除票または戸籍の附票の除票 | 最後の住所地の市区町村役場 | 保存期間が5年間のため、取得できない場合は権利証や固定資産税納税通知書などで代替することになります。 |
相続人に関する書類 | ||
相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 | 亡くなられた方との続柄を証明するため、相続開始後に取得したものでなければなりません。 |
不動産を取得する相続人の住民票 | 現住所地の市区町村役場 | 発行から3か月以内のものを用意しましょう。 |
遺産分割協議書と印鑑証明書 | ||
遺産分割協議書 | 相続人全員で作成 | 法定相続分と異なる割合で相続する場合や、特定の相続人が不動産を単独で相続する場合に必要です。 |
相続人全員の印鑑証明書 | 各相続人の住所地の市区町村役場 | 遺産分割協議書に押印した実印のもので、発行から3か月以内のものを使用します。 |
不動産に関する書類 | ||
固定資産評価証明書 | 不動産の所在地を管轄する市区町村役場 | 登録免許税の計算に必要な書類です。相続開始年度のものを用意しましょう。 |
申請から完了まで:実際の手続きの流れ
相続登記の申請から完了までの流れを理解しておきましょう。スムーズに手続きを進めることができるはずです。
- 必要書類の収集
まずは上記でご紹介した書類を全て揃えることから始めます。特に戸籍謄本類は時間がかかることが多いので、早めに着手してください。 - 相続登記申請書の作成
必要書類が揃ったら、相続登記申請書を作成します。不動産の表示、亡くなられた方と相続人の情報、相続の原因と年月日などを正確に記載しましょう。法務局のウェブサイトでひな型を入手できますが、記載方法に不安がある場合は、事前に法務局や専門家へ相談することをおすすめします。 - 法務局への申請
申請先は、不動産の所在地を管轄する法務局です。窓口での直接申請のほか、郵送やオンライン申請も利用できます。オンライン申請の場合は、事前にシステムでの利用者登録が必要です。 - 法務局での審査期間
申請書を提出すると、法務局での審査が始まります。審査期間は通常1〜2週間程度ですが、申請が集中する時期や複雑な案件の場合は、さらに長くかかることもあります。 - 補正対応(必要に応じて)
審査中に記載漏れや書類の不備が見つかった場合は、法務局から「補正指示」の連絡が入ります。指定された期限内に補正を行わないと申請が却下されてしまうため、連絡を受けたら速やかに対応することが重要です。 - 完了証の受け取り
審査が完了すると、登記識別情報通知書(従来の権利証に相当する大切な書類)が発行されます。窓口で直接受け取るか、郵送での交付を選択可能です。この書類は不動産の権利を証明する非常に重要なものですから、大切に保管してくださいね。 - 費用の支払い(登録免許税)
相続登記には登録免許税がかかります。税額は固定資産評価額の0.4%です。例えば、評価額が1000万円の不動産であれば、4万円の登録免許税が必要になります。現金で納付するか、収入印紙を申請書に貼付して支払うことになります。
期限まで時間がない場合の効率的な進め方
相続登記の期限が迫っていて「もう間に合わないかも…」と焦っている場合でも、効率的に進めれば間に合わせることは可能です。
書類収集の優先順位づけ
時間が限られている場合は、書類集めに優先順位をつけることが何よりも重要です。まず、時間のかかる戸籍謄本等の収集から始めましょう。特に、亡くなられた方の出生から死亡までの連続した戸籍を集める作業は、予想以上に手間がかかる場合があります。複数の自治体から戸籍を取り寄せる必要がある場合は、並行して請求することで時間を短縮できます。また、速達での郵送請求や、可能であれば直接窓口まで出向くことも検討してみてください。住民票や印鑑証明書など、比較的簡単に取得できる書類は後回しにして構いません。ただし、有効期限があることを忘れずに、適切なタイミングで取得するようにしましょう。
専門家への相談も選択肢の一つ
「期限が迫っていて一人で全てを進めるのは難しい」と感じることもあるでしょう。そのような時は、司法書士などの専門家に相談することも大切です。専門家に依頼すれば、書類の収集から申請まで専門家が代行することができます。複雑な相続関係がある場合や、遺産分割協議がまとまらない場合でも、適切なアドバイスを受けながら手続きを進めてくれます。費用はかかりますが(司法書士への報酬は10万円~20万円程度が目安ですが、事案の複雑さで変動します)、期限に間に合わせることができ、何より精神的な負担を大きく軽減することが可能です。
こんな時はどうする?知っておきたいポイント
相続登記の義務化により、多くの方が初めて直面する手続きに戸惑いを感じていらっしゃるのではないでしょうか。同じ「相続登記」の手続きでも、「気づいたら期限が過ぎていた」「相続人の一人が海外に住んでいて連絡が取れない」など、状況は人によってそれぞれ違います。ここでは、よくある困った状況とその対処法について解説していきます。
「期限を知らなかった」「相続人が海外」など困った時の対処法
相続登記の義務化について知らずに期限を過ぎてしまった場合でも、法務省は、義務化の周知が十分でなかった事情を考慮し、即座に過料を科すのではなく、まずは登記申請を促す方針を示しています。
期限を過ぎた場合の対処法として、まず法務局に相談することが重要です。その際、期限を知らなかった正当な理由があることを説明し、速やかに手続きを進める意思を示すことで、罰則の適用を回避できる可能性があります。例えば、相続が発生した時期が義務化前であった場合や、相続人の方が高齢で制度を知る機会がなかったといった事情は、正当な理由として考慮される場合があります。
相続人の中に海外にいる方がいる場合は、さらに複雑な手続きが必要になります。海外に住んでいる相続人からは、日本の印鑑証明書の代わりに「サイン証明書」や「宣誓供述書」が必要となります。これらは現地の日本領事館で取得することが一般的です。また、時差や言語の問題もあり、連絡を取るだけでも時間がかかることがあるはずです。
こうした状況では、国際関係や外国に関連する相続に詳しい司法書士に依頼することをおすすめします。海外に住んでいる相続人との連絡方法や必要書類の取得方法など、適切なサポートを受けることで、複雑な手続きでも確実に完了させることができるはずです。
また、相続人の中に行方不明者がいる場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる必要があります。この手続きも専門的な知識が必要で、個人で対応するのは非常に困難なケースが多いものです。このような場合も、まずは専門家に相談されることをおすすめします。
期限と費用の関係|早めに済ませるメリット
相続登記を早めに済ませることには、費用面でも大きなメリットがあります。まず、登録免許税は不動産の固定資産税評価額の0.4%ですが、この評価額は3年ごとに見直されます。一般的に不動産価格が上昇傾向にある現在、早めに手続きを済ませておくことで、将来的な税負担の増加を避けることができます。
例えば、固定資産税評価額が1000万円の不動産の場合、現在の登録免許税は4万円ですが、3年後に評価額が1200万円に上がれば、税額も4万8000円となり、8000円の差額が生じます。相続する不動産が複数ある場合や、評価額が高い場合は、この差額はさらに大きくなる可能性も否定できません。
また、時間が経過すると、相続関係が複雑になるリスクも高くなります。相続人の中に新たに相続が発生すると、相続人の数が増え、合意形成が困難になるケースも少なくありません。相続人が10人いる場合と5人の場合では、必要書類の取得や連絡調整にかかる時間と費用が大幅に異なります。司法書士への報酬も、手続きの複雑さに応じて高くなる傾向があります。
さらに、早期に手続きを済ませることで、不動産の売買や活用の選択肢も広がります。相続登記が完了していない不動産は売却できませんから、市場価格が好調な時期を逃してしまう可能性も出てきます。特に、立地条件の良い不動産や収益物件の場合、早めに名義変更を完了させておくことで、適切なタイミングでの売却や賃貸経営による財産の活用が可能になります。
過料のリスクを避けるという観点以外の面でも、早期対応は重要です。相続登記の手続きで困った時は、一人で悩まずに司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
相続登記の義務化の背景には、所有者不明土地の増加という深刻な社会問題があります。長期間放置された相続登記によって土地の所有者が分からなくなり、公共事業の妨げや地域の活性化阻害といった問題が全国各地で発生していました。全国で所有者不明の土地は、国土の約20%とも言われています。義務化は、こうした問題の根本的な解決を目指しています。
確かに、これまで任意だった手続きが義務となることで、「知らなかった」では済まされない状況が生まれました。正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性もあります。しかし、この制度は決して国民を困らせるためのものではありません。むしろ、相続人の権利関係を明確にし、将来的な法的トラブルからご自身やご家族を守るための仕組みと捉えることができます。
相続登記を進めるにあたっては、遺言書の有無や法定相続人がすぐに特定できるかどうか、遺産分割協議がスムーズに進められるかどうか等、状況はさまざまです。争いに発展し、裁判所への申立てが必要となるケースもありますので、相続については、生前から早めに対策をされることをおすすめします。
横浜にある伴法律事務所は、遺産分割や遺留分、相続トラブルについて、豊富な実績と経験があります。メールや電話で24時間、また初回相談は無料でご相談いただくことができます。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1.相続登記の期限である3年を過ぎると、どうなってしまうのですか?
相続登記を3年以内に行わずに放置すると、「正当な理由」がない限り10万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります。また、期限を過ぎても登記手続ができなくなるわけではありませんが、必要書類の取得が難しくなったり、相続人の死亡や連絡不能により手続きが大幅に複雑化することもあります。結果として、手続きの負担や費用が増える恐れがあるため、期限内の申請を強くおすすめします。
Q2. 相続した不動産の価値がわからず、登記費用の方が高くつくのではと心配です。
確かに登録免許税(固定資産評価額の0.4%)や司法書士報酬などの費用はかかりますが、登記をしないことで生じる将来的なリスクと比較して判断することが大切です。たとえば築年数が古いご実家で評価額が500万円の場合、登録免許税は2万円程度です。司法書士に依頼しても、事案の複雑さにもよりますが、相場は総額で10万円前後です。また、相続税が発生する場合には、さらに計算が複雑であるため、税金に関連する業務は税理士に相談すると安心です。
Q3. 相続人が多くて意見がまとまりません。期限に間に合わないとどうなりますか?
相続人間での協議が難航している場合は、一時的な対応策として、まず「相続人申告登記」という制度を活用されてはいかがでしょうか。これは、ご自身が相続人であることを法務局に申告するだけの簡易的な手続きで、3年の義務期限を満たすことができます。必要な書類も戸籍謄本など最小限で済み、登録免許税も不要です。その後、時間をかけて遺産分割協議を行い、話がまとまったら改めて正式な相続登記を行う流れとなります。
Q4. 認知症の母名義の不動産があります。どうすれば良いでしょうか?
認知症などで判断能力が不十分な方が相続人に含まれる場合、成年後見制度を利用する必要があります。家庭裁判所に後見人選任の申立てを行い、選任された後見人が代理で遺産分割協議に参加することになります。
この手続きには数か月かかることが多いですから、早めの対応が重要です。また、後見人にはご親族が選任される場合と、司法書士や弁護士、行政書士などの専門家が選任される場合があります。後見制度の利用には費用もかかりますので、まずは家庭裁判所や地域包括支援センター、法律の専門家に相談して、最適な方法を検討されることをおすすめします。





