遺産相続の手続きの期限はいつまで?過ぎてしまった場合の対処法も解説
ご家族が亡くなると、深い悲しみの中で「何を、いつまでに進めればいいのだろう」と途方に暮れてしまう方は少なくありません。相続の手続きは専門的な内容も多く、慣れないことばかりで、どこから手をつけていいか分からなくなるものです。
この記事では、相続の手続きの期限と優先順位を分かりやすく整理して解説します。焦らずスムーズに進めるため、まずは全体像を把握し、ご自身の状況で進めるべき手続きから確認していきましょう。
相続手続きの概要と期限一覧
親族が亡くなった後、遺産相続の手続きには、法律で定められた期限があるものと、特に期限がないものの大きく2種類に分けられます。まず大切なのは、期限が短いものから優先して対応する意識を持つことです。
相続手続きの全体像
相続手続きをいつまでに、何を行うべきか、まずは以下の表で全体像を把握してみましょう。
時期 | 期限 | 手続き内容 | 主な提出先 | 注意点 |
死亡直後 | 7日以内 | 死亡届の提出、火葬許可申請 | 市区町村役場 | 葬儀準備と並行して。法的義務 |
14日以内 | 年金受給停止、健康保険・介護保険の資格喪失届 | 年金事務所、市区町村役場 | 返還請求発生の可能性あり | |
相続開始後 | 3ヶ月以内 | 相続放棄・限定承認 | 家庭裁判所 | 熟慮期間。借金が多い場合は特に検討が必要 |
4ヶ月以内 | 所得税準確定申告 | 税務署 | 亡くなった年の所得に対する申告。遅れると延滞税も | |
10ヶ月以内 | 相続税申告・納税 | 税務署 | 基礎控除を超える場合に必要。特例適用には期限内申告が必須 | |
1年以内 | 遺留分侵害額請求 | 相手方(内容証明郵便)、家庭裁判所 | 遺言書の内容に不公平がある場合に。時効消滅に注意 | |
3年以内 | 不動産の相続登記 | 法務局 | 2024年4月より義務化。過料の可能性あり | |
期限なし | 随時 | 遺産分割協議 | 相続人全員 | 長期放置は後々問題に。法改正による影響も考慮が必要 |
随時 | 金融機関・公共料金等の名義変更 | 各金融機関、各事業者 | 日常生活に直結。戸籍謄本などが必要となる場面も |
相続手続きは、まず死亡直後の7日以内に行う役所への届出や葬儀の準備から始まり、次に14日以内の年金・健康保険の手続きへと進みます。その後、金融機関や不動産の名義変更など、比較的時間がかかる手続きを順に進めていく流れとなるでしょう。
これらの手続きは互いに関連し合っているため、全体の流れを把握してから取り組むことで、二度手間を避けることができます。例えば、銀行口座の凍結解除には戸籍謄本が必要ですが、この戸籍謄本は他の多くの手続きでも使用します。そのため、事前に必要部数を把握し、まとめて取得しておくと効率的です。
また、手続きの中には平日の昼間しか対応できないものが少なくありません。お仕事をされている方は、あらかじめ休暇の調整も必要になるかもしれません。ご家族の間で役割分担を決めておくと、よりスムーズに進められるはずです。
7日以内|死亡後すぐに必要な手続き
死亡から7日以内に行わなければならない手続きで、死亡届の提出が、最も重要な手続きとなるでしょう。法的な義務があるため最優先で対応が必要です。
病院で亡くなられた場合は医師が、ご自宅で亡くなられた場合はかかりつけ医が死亡診断書を作成します。この死亡診断書と一体になっている死亡届を、故人の本籍地・死亡地・届出人の住所地のいずれかの市区町村役場に提出しましょう。土日祝日でも24時間受け付けていますので、平日に時間が取れない方でも対応できます。
死亡届と同時に火葬許可申請書も提出するとよいでしょう。これにより火葬許可証が発行され、葬儀社がこの許可証を火葬場に提出することで火葬が可能となります。
この時期は、葬儀の準備も並行して進める必要があります。葬儀社との打ち合わせ、参列者への連絡、お寺や神社との調整など、感情的にも物理的にも非常に大変な時期であることはお察しいたします。しかし、これらの手続きを怠ると法的な問題が生じる可能性もあるため、ご家族や親族で協力して確実に進めていきましょう。
14日以内に行う年金・健康保険の手続き
死亡から14日以内に行う手続きは、主に社会保険関係が中心となります。これらの手続きを怠ると、後々の処理が複雑になったり、場合によっては年金の返還請求が発生したりする可能性もあるため、注意が必要です。
国民健康保険の資格喪失届は、故人が国民健康保険に加入していた場合に必要です。市区町村役場の国民健康保険担当窓口で手続きを行い、保険証を返還します。会社員だった場合は、勤務先を通じて健康保険組合への資格喪失手続きを進めることになります。
国民年金の受給停止手続きも重要です。年金を受給していた方が亡くなった場合、年金事務所または市区町村役場で受給停止の手続きを行いましょう。この手続きを怠ると、死後も年金が支給され続け、後日返還しなければならなくなります。厚生年金を受給していた場合も同様に手続きが必要なことは変わりません。
介護保険の資格喪失届は、65歳以上の方や40歳以上で要介護認定を受けていた方が亡くなった場合に必要です。介護保険証とともに市区町村役場に提出してください。
これらの手続きには、死亡届を提出した際に発行される「死亡届受理証明書」や戸籍謄本が必要になる場合があります。事前に必要書類を確認し、複数部取得しておくと効率的です。
3か月以内|相続放棄・限定承認
相続放棄・限定承認については、ご自身が相続人になったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所での手続きを完了させなければなりません。この3ヶ月という期間は「熟慮期間」と呼ばれ、相続人が相続すべきかどうかをじっくり考えるための期間です。
相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産も借金も、一切引き継がないという手続きです。たとえば、被相続人に多額の借金があった場合、相続放棄をすることでこの借金を支払う義務から完全に免れることができます。一方、限定承認は、相続した財産の範囲内でのみ借金を支払う手続き。例えば、財産が1,000万円で借金が1,500万円だった場合、1,000万円分だけ支払い、残りの500万円は支払う必要がなくなる、というものです。
もしも被相続人が連帯保証人になっていた場合も、相続放棄をしなければその義務まで引き継ぐことになります。そのため、財産調査の際には、借金の有無だけでなく、連帯保証債務がないかも確認しておくと安心です。財産調査が複雑で時間がかかる場合は、家庭裁判所に申し立てることで熟慮期間を延長してもらうことも可能です。
何もせずに3か月が経過すると、「単純承認」したものとみなされ、借金を含めてすべての財産を相続することになってしまうため、十分ご注意ください。借金が多額で支払えない場合でも、この時点ではもう逃れることができなくなってしまいます。
4か月以内|所得税準確定申告
所得税の準確定申告は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署へ申告・納税を行わなければなりません。
準確定申告とは、亡くなった方の代わりに相続人が行う所得税の確定申告のことです。通常の確定申告は1月1日から12月31日までの1年間の所得を翌年3月15日までに申告しますが、準確定申告では1月1日から亡くなった日までの所得を対象とします。
この手続きが必要になるのは、被相続人が自営業者だった場合や、年金収入が400万円を超えていた場合、給与所得者でも副収入があった場合などです。また、医療費控除や住宅ローン控除などで還付を受けられる可能性がある場合は、申告することで税金が戻ってくるかもしれません。
相続人が複数いる場合は、各相続人が連署により申告書を提出するか、他の相続人の氏名を付記してそれぞれが別々に申告することも可能です。準確定申告を忘れていても後から申告はできますが、期限を過ぎると延滞税や加算税が課される可能性があるため、早めの対応をおすすめします。
10か月以内|相続税申告・納税
相続税の申告・納税は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。被相続人の住所地を管轄する税務署に申告書を提出し、同時に相続税を納めましょう。
相続税には基礎控除があり、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超える財産がある場合にのみ申告が必要です。たとえば、相続人が配偶者と子ども2人の計3人だった場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となります。相続財産がこれを超えなければ申告は不要です。
しかし、相続財産の評価は複雑です。不動産や土地の評価額の算定、被相続人名義の預金口座の把握、生命保険金の取り扱いなど、専門的な知識が必要な場面も多いことでしょう。また、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、適用することで税額が大幅に軽減される制度もありますが、これらの特例を受けるためには期限内に申告することが前提となります。これらの特例を適用するには、原則として遺産分割協議が完了している必要があることも、覚えておきたいポイントです。
期限を過ぎてしまうと、本来受けられるはずの特例が使えなくなり、結果として多額の税金を支払うことになってしまう可能性があります。無申告加算税や延滞税も課されるため、経済的な負担はさらに重くなることでしょう。
1年以内|遺留分侵害額請求
遺留分侵害額請求権は、相続開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年以内に行使しなければなりません。この期限を過ぎると、時効により請求権が消滅してしまいます。
遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された、相続財産の最低限の取り分のことです。たとえば、被相続人が「全財産を長男に相続させる」という遺言を残していた場合でも、配偶者や他の子どもは遺留分として一定の財産を取得する権利があります。配偶者や子どもの遺留分は相続財産の2分の1、親(直系尊属)のみが相続人の場合は3分の1となるのが一般的です。
遺留分侵害額請求は、以前は「遺留分減殺請求」と呼ばれていましたが、2019年7月の相続法改正により現在の制度に変わりました。改正後は、不動産などの現物を取り戻すのではなく、金銭での請求が可能となり、より実務的に扱いやすくなっています。
この請求を行う際は、まず遺留分を侵害している相手方(多くは他の相続人)に対して内容証明郵便で請求の意思表示を行いましょう。それでも解決しない場合は、家庭裁判所での調停や審判の手続きに進むことになります。
ただし、1年という期限は非常に短く、相続の詳細な調査や法的な検討を行っているうちに過ぎてしまうリスクも考えられます。特に自筆証書遺言の場合で、遺言の内容に疑問を感じたときは、早めに専門家へ相談しましょう。また、生前の対策として遺言の作成を検討している場合は、このような観点から公正証書遺言として作成されることをおすすめします。
3年以内|不動産の相続登記の義務化
不動産の相続登記は、2024年4月から義務化されました。相続を知った日から3年以内に手続きを完了させる必要があります。
法務局で登記簿謄本を取得し、相続人を確定した上で、遺産分割協議書や相続関係説明図とともに相続登記申請を行いましょう。不動産の評価額によって登録免許税が発生しますので、事前に税額を確認しておくことも重要です。期限内に登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性があるため、忘れずに手続きを進めてください。
市区町村役場・金融機関での諸手続き
市区町村役場での手続きは、住民票関連から各種証明書の取得まで多岐にわたります。これらの多くは相続手続き全体の基盤となる、重要な書類を取得するための手続きです。
- 戸籍謄本・除籍謄本の取得: 相続手続きの最も基本的な作業です。相続人を確定するために、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要になります。これは本籍地の市区町村役場で取得しますが、転籍している場合は複数の役場での手続きが必要になることもあります。相続人全員の現在戸籍謄本も併せて取得しておきましょう。
- 住民票の除票: 故人が最後に住民登録をしていた住所地の市区町村役場で取得します。不動産の相続登記や銀行の相続手続きで必要となる重要な書類です。
金融機関での手続きは、まず口座の凍結確認と相続手続きの開始から始まります。銀行は死亡の事実を知ると直ちに口座を凍結するため、ATMでの引き出しや自動引き落としができなくなるためご注意ください。各金融機関で相続手続きの書類を受け取り、必要書類を準備して提出を進めましょう。
証券会社や保険会社での手続きも同様に重要です。株式や投資信託、生命保険などの相続手続きにも、戸籍謄本や遺産分割協議書などの書類が必要になります。これらの手続きには時間がかかる場合が多いため、早めに各社に連絡を取り、必要書類や手続きの流れを確認しておくことをおすすめします。
不動産・口座・公共料金など名義変更リスト
名義変更手続きは、期限に比較的余裕があるものの、日常生活への影響を考慮して計画的に進めることが大切です。
- 公共料金の名義変更: 生活に直結するため、優先的に対応したい手続きの一つです。電気・ガス・水道・電話・インターネットなどの契約名義を相続人に変更しましょう。多くの場合、電話での申し込みが可能で、後日必要書類を郵送する形となります。故人名義のクレジットカードで支払いをしていた場合は、支払い方法の変更も必要です。
- 自動車の相続手続き: 運輸支局または自動車検査登録事務所で行います。自動車検査証、故人の戸籍謄本、相続人の印鑑証明書、遺産分割協議書などが必要になります。自動車保険の名義変更も忘れずに行いましょう。
- その他の契約関係: 携帯電話、クレジットカード、各種会員サービスなどの解約や名義変更手続きも必要です。故人宛に届く郵便物を確認しながら、契約関係を把握し、それぞれに連絡を取って手続きを進めていくのがおすすめです。
これらの手続きは数が多く複雑ですが、一つ一つ確実に進めることで、故人の遺産を適切に整理し、相続人の皆さまが安心して新しい生活を始めることができるでしょう。
遺産分割協議の期限と放置した場合のリスク
親族が亡くなり、相続人となったあなたには、様々な手続きが待っています。しかし、「遺産分割協議っていつまでにしなければいけないの?」と不安を感じていませんか。実は、遺産分割協議には法的に期限が存在し、放置すると思わぬリスクが待っています。
遺産分割協議の法的に定められた期限
相続が発生すると、相続人は遺産をどのように分けるかを話し合う「遺産分割協議」を行う必要があります。しかし、家族間の感情的な対立や手続きの複雑さから、つい先延ばしにしてしまうケースも少なくありません。
従来、遺産分割協議自体には法的な期限は定められていませんでした。つまり、相続が発生してから何年経過しても、相続人全員が合意すれば遺産分割協議を行うことが可能でした。
しかし、この「期限なし」という状況が実務上さまざまな問題を引き起こしていたため、2023年4月1日施行の民法改正により新たなルールが設けられました。具体的には、「相続開始から10年を経過した場合」には、特別受益や寄与分の主張が原則としてできなくなり、法定相続分または指定相続分に従って機械的な分割しかできなくなります。このため、「いつでも協議できる」という認識で遺産分割を長期間放置することは、結果的に各相続人が不利になる可能性があります。特に、それまでに協議がまとまらなかった場合、寄与分などを考慮した柔軟な分割ができなくなるなど、予想外の不利益を被る可能性が高まっています。
民法改正(10年ルール)が実務にもたらす影響
2023年4月1日施行の民法改正により、遺産分割協議に「10年ルール」が導入され、相続実務に大きな変化が生じました。従来は遺産分割について明確な期限がなかったため、協議が長期間行われなかった場合でも、相続人全員の合意があれば特別受益や寄与分などを主張することが可能でした。しかし改正後は、相続開始から10年が経過すると、遺産分割において寄与分や特別受益の主張が原則できなくなり、法定相続分もしくは指定相続分による分割に限定されます。
このルールは、長期間にわたる協議の先延ばしが、不動産の所有者不明化や、相続人の世代交代による紛争複雑化、協議自体の困難化など実務上の深刻な問題を引き起こしてきたことが背景にあります。10年ルールの導入により、相続人は以前よりも早期に分割協議や手続を進める必要性が生じました。
寄与分とは、相続人が被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした場合に、法定相続分を超えて遺産を受け取ることができる権利です。たとえば、長男が親の介護を一手に引き受けていた場合や家業を手伝って事業を発展させた場合などが該当します。一方、特別受益とは、生前に被相続人から特別な利益を受けていた相続人の相続分を調整する制度です。
これらの権利は相続人間の公平性を図るための重要な仕組みですが、10年を経過すると家庭裁判所の調停や審判でもこれらの主張が認められず、たとえ親の世話をしていても、不公平な生前贈与があった場合でも、原則として法定相続分で分割することになってしまうケースがあります。特に、ほかの相続人が合意に応じず協議に進展がみられない場合でも、10年を過ぎれば法定分割での強制的な解決が図られるため、寄与分主張による取得割合の増加などができなくなることは大きなデメリットです。
一方、不動産などの共有資産については、共有者の一部が不明・連絡不能な場合や協議が長引いた場合に、10年ルールのおかげで比較的迅速に分割処理が可能となり、不動産管理や価値維持にも資する制度となっています。
なお、例外的に次のケースでは10年を過ぎても寄与分や特別受益等を考慮した分割が認められます。
- 10年経過前に家庭裁判所へ遺産分割請求をしていた場合
- 10年の満了前6ヵ月以内にやむを得ない事情(行方不明など)があった場合、その事情消滅から6ヵ月以内の請求
- 相続人全員の合意により具体的相続分での分割に同意した場合。
この期間の計算は「相続開始時(死亡時)」から始まります。相続の発生を知らなかった場合でも、10年が経過してしまうと主張できないため、長期間疎遠だった親族の死亡を後から知った場合には、すでに期限が過ぎている可能性も考えられます。
また、遺産の調査や相続人の確定、話し合いの準備などには時間がかかることがあり、相続人が多数いる場合や遺産の内容が複雑な場合は10年という期限も決して十分とはいえないケースがあります。早めに遺産分割協議を進めることが重要です。3年以内に相続登記が義務化されたことと関連して、遺産分割協議も3年以内を目処に進めるのが望ましいでしょう。
期限を過ぎてしまった場合の対処法とペナルティ
親族が亡くなり、突然相続人となった方の中には「手続きの期限を過ぎてしまった」と慌てている方も少なくないかもしれません。確かに相続には様々な期限が設けられており、それぞれ異なるペナルティやリスクが存在します。しかし、期限を過ぎてしまった、それ以降でも適切な対処により問題を解決できるケースは多いのです。まず落ち着いて、どの手続きの期限を過ぎているのかを整理することが重要です。
相続放棄の期限|3ヶ月
相続放棄の手続は3ヶ月を過ぎた場合、原則として相続を承認したものとみなされ、被相続人の借金も含めてすべての財産を相続することになります。ただし、相続財産の存在を知らなかったなど、正当な理由があれば期限の起算点が変わる可能性もあります。例えば、疎遠だった親族の借金を後から知った場合や、遺品整理中に多額の債務が判明したケースなどが該当します。
準確定申告の期限|4ヶ月
準確定申告の期限は4ヶ月です。これを過ぎると、延滞税や無申告加算税が課税される場合があります。延滞税は年率約2.4~8.7%(令和5年現在)で日割り計算されるため、遅れるほど負担が重くなります。また、税務署から指摘を受ける前に自主的に申告すれば、無申告加算税が軽減される可能性があります。
相続税申告の期限|10ヶ月
相続税の申告期限は10ヶ月です。これを過ぎた場合のペナルティは特に重く、無申告加算税(15~20%)や延滞税に加え、配偶者控除や小規模宅地等の特例が適用できなくなるリスクがあります。これらの特例を使えなくなると、本来なら非課税だった相続が突然高額な税額になることもあるため、早急な対応が必要です。
遺産分割については法的な期限はありませんが、長期間放置すると相続人が増えて手続きが複雑になったり、不動産の名義変更ができずに売却等に支障をきたしたりします。令和6年4月からは相続登記が義務化されており、3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。
今からでもできる対処法と相談先
期限を過ぎてしまった場合でも、諦める必要はありません。それぞれの手続きに応じた対処法があります。
相続放棄について
期限を過ぎても「相続財産の存在を知った時から3ヶ月以内」という解釈で申し立てが認められるケースがあります。家庭裁判所に事情を詳しく説明し、なぜ期限内に手続きできなかったのかを証明する資料を提出することで、受理される可能性もあるでしょう。ただし、すでに相続財産を処分したり、債務の一部を支払ったりしていると、単純承認したものとみなされる場合があるため注意が必要です。
税務関連の手続き|準確定申告、相続税申告
税務関連の手続きは、まず管轄の税務署に相談することから始めましょう。準確定申告や相続税申告が遅れている場合、速やかに申告書を提出することで、延滞税や加算税を最小限に抑えることができます。特に相続税については、期限後申告でも一定の条件下で配偶者控除等の適用を受けられる場合があるため、税理士と相談しながら最適な申告方法を検討することが重要です。
遺産分割がまとまらない場合
遺産分割がまとまらない場合は、家庭裁判所での調停や審判手続を検討しましょう。相続人同士で話し合いがつかない状況でも、裁判所が間に入ることで公平な解決を図ることが可能です。また、相続登記については、法務局に相談窓口が設けられており、手続き方法について詳しく説明を受けることができます。
専門家(弁護士や司法書士・税理士等)に相談すべきケース
複数の期限を同時に過ぎている場合や、相続財産の内容が複雑な場合は、専門家への相談を強くおすすめします。特に以下のような状況では、早急に専門家のサポートを受けることで、より良い解決策を見つけることができるでしょう。
相続放棄を検討しているが期限を過ぎている場合
弁護士や司法書士に相談することで、申述が認められる可能性や必要な証拠について的確なアドバイスを受けられます。相続債務が多額で、放棄が認められないと生活に深刻な影響を与える場合は、特に専門家の判断が重要となります。
税務関連で、相続税の申告が必要な規模の相続や、事業承継が絡む複雑なケース
税理士の専門知識が不可欠です。期限後申告でも適用できる特例があるか、どのような書類が必要かなど、個別の状況に応じた最適な対応を提案してもらえます。また、税務調査のリスクを最小限に抑えるためにも、正確な申告書の作成が重要です。特に、会社など事業をされていた方が亡くなった場合は、承継の手続きも含めて専門家に相談されることをおすすめします。
相続人間で意見が対立している場合や、遺言書の有効性に疑問がある場合
弁護士への相談が適しています。法的な争いに発展する前に、適切な解決方針を立てることで、時間的・経済的負担を軽減できる可能性があります。
専門家に相談する際は、これまでの経緯や手続きの状況を整理し、関連する書類を持参すると、より具体的で実効性のあるアドバイスを受けることができるでしょう。一人で抱え込まずに、専門家と一緒に状況に応じた適切な選択肢を見つけることで、現在の困難な状況を乗り越えられるはずです。
まとめ
相続手続きは複雑で時間もかかるものですが、一つずつ着実に進めていけば必ず完了できます。戸籍収集から遺産分割協議まで、それぞれの段階で必要な書類や手続きが異なるため、事前に全体像を把握しておくことで、スムーズに進められるでしょう。
特に重要なのは、相続人全員での合意形成です。感情的な対立が生まれやすい場面だからこそ、冷静に話し合いを重ね、お互いの事情を理解し合うことが大切です。また、相続税の申告が必要な場合は10ヶ月という期限があるため、早めの行動を心がけてください。
手続きの途中で「これで合っているのだろうか」「他に必要なものはないだろうか」と不安になることもあるかもしれません。そんな時は、一人で悩まず、相続に詳しい弁護士や司法書士、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、見落としていた点に気付くことができるだけでなく、より効率的に進めることができるでしょう。
相続は人生で何度も経験するものではないため、わからないことがあるのは当然です。適切なサポートを受けながら、故人への想いを大切にしつつ、新しいスタートを切っていただければ幸いです。





