相続手続きの費用はいくら?弁護士や専門家に相談のするときの相場を解説
身内の方が亡くなった後の相続手続きは、ただでさえ悲しい気持ちの中で、多くの事務作業と向き合わなければなりません。「一体いくらかかるんだろう?」「この費用、誰がいつ払うの?」と、費用面での不安は尽きないものです。
この記事では、相続手続きの概要だけでなく、様々なケースでの費用の違い、士業別の費用と業務内容など、相続手続きにかかる費用を徹底解説します。全体像を把握し、心の余裕を持って手続きを進められるよう、ぜひ参考にしてください。
相続手続き費用の全体像|誰が・いつ払うのか?
遺産相続の手続にかかる費用は、大きく「必須でかかる費用」と「必要に応じてかかる費用」の2つに分けられます。そして、最も気になる「誰が、いつ払うのか」についても詳しく見ていきましょう。
必須でかかる費用は、戸籍謄本や住民票などの各種証明書の取得費用、不動産の名義変更(相続登記)を行う際の登録免許税などが挙げられます。これらは、相続手続きに欠かせない費用と言えるでしょう。
一方、必要に応じてかかる費用には、弁護士や司法書士、税理士といった専門家への依頼費用、相続放棄の手続き費用、遺産分割調停にかかる費用などです。相続人同士の関係が良好で、財産もシンプルなケースでは、これらの費用を抑えることも可能でしょう。
忘れてはならないのが、相続税申告の期限で、これは相続開始から10ヶ月以内です。この期限を意識しながら、必要な手続きと費用を計画的に準備する必要があります。また、相続放棄を検討しているなら、相続開始を知った日から3ヶ月以内という期限があるため、早めの判断と手続きが求められます。
費用負担者は誰?いつ・どのように支払う?
相続手続きの費用負担について、「誰が払うべきなのだろう」と疑問に思われる方は少なくありません。法律上の明確な決まりはありませんが、一般的な慣例と実務上の流れがあります。
費用負担の基本的な考え方
原則として、相続手続きにかかる費用は相続財産から支出する、または相続人全員が相続分に応じて負担することになります。
最も多く見られるのは、相続手続きを進める代表相続人が一時的に立て替え、後から相続財産や他の相続人との間で精算するパターンです。例えば、長男が手続きの中心となって各種費用を支払い、遺産分割の際に他の相続人と按分する流れです。
ただし、相続人全員で費用分担することを事前に話し合って決めておくと、後々のトラブルを避けることができるでしょう。特に相続税の申告が必要な場合や、専門家への報酬が高額になる場合は、事前の取り決めが重要になります。
支払いのタイミングと注意点
支払いのタイミングは、費用の種類によって異なります。
- 戸籍謄本や登録免許税:手続きの都度支払いが必要です。
- 税理士や司法書士への報酬:契約時に着手金を支払い、手続き完了後に残金を支払うケースが一般的です。
- 相続税:申告期限である10ヶ月以内に現金で納付する必要があります。相続財産から支払うこともできますが、預貯金が凍結されている場合は、相続人が立て替える必要が生じることもあるでしょう。このような状況を避けるため、早めに金融機関での相続手続きを進めておくことが賢明です。
- 相続放棄の費用(収入印紙代800円程度):放棄をする相続人個人が負担するのが原則です。放棄により相続人でなくなるため、他の相続人に負担を求めることは適切ではありません。
相続手続きの費用の相場一覧表【早見表形式】
相続手続きでかかる主な費用を、わかりやすく表形式でまとめました。これらの金額は一般的な相場であり、地域や専門家によって差があることをご理解ください。
【必須でかかる費用】
項目 | 費用相場 | 備考 | 誰がいつ払う? |
戸籍謄本・除籍謄本 | 1通450~750円 | 被相続人分で5~10通程度必要 | 代表相続人が都度立て替え |
住民票・戸籍の附票 | 1通200~400円 | 相続人分も含めて数通必要 | 代表相続人が都度立て替え |
固定資産評価証明書 | 1通200~400円 | 不動産の個数分必要 | 代表相続人が都度立て替え |
不動産登記事項証明書 | 1通500~600円 | 不動産の個数分必要 | 代表相続人が都度立て替え |
登録免許税(所有権移転) | 固定資産税評価額の0.4% | 土地建物それぞれにかかる | 不動産を相続する人が登記申請時に |
相続税(該当する場合) | 相続財産・相続人数により変動 | 基礎控除:3,000万円+600万円×相続人数 | 相続人各々が申告期限までに現金納付 |
【専門家費用(依頼する場合)】
専門家 | 費用相場 | 対象業務 | 誰がいつ払う? |
司法書士 | 5~15万円 | 不動産名義変更、 | 契約時に着手金、完了後に残金を代表相続人が立て替え |
税理士 | 20~100万円 | 相続税申告(相続財産の規模により変動) | 契約時に着手金、申告完了後に残金を代表相続人が立て替え |
弁護士 | 20~50万円 | 遺産分割協議、 | 契約時に着手金、解決後に残金を代表相続人が立て替え |
行政書士 | 3~10万円 | 遺産分割協議書作成、各種手続き代行 | 契約時に着手金、完了後に残金を代表相続人が立て替え |
【その他の費用】
項目 | 費用相場 | 備考 | 誰がいつ払う? |
相続放棄申述 | 800円(収入印紙) | 家庭裁判所への申立て費用 | 放棄する相続人個人が申立て時に |
遺産分割調停 | 1,200円(収入印紙) | 話し合いがまとまらない場合 | 申立人が申立て時に |
不動産鑑定評価 | 20~40万円 | 相続税申告で必要な場合 | 代表相続人が不動産評価時に |
銀行での相続手続き | 無料~5,000円 | 金融機関により異なる | 相続人が手続き時に |
実際のケースとして、相続財産が預貯金1,000万円と自宅不動産(評価額2,000万円)、相続人が配偶者と子供2人という標準的な家庭の場合、司法書士への依頼を含めて総額15~25万円程度になることが多いでしょう。
一方、相続財産が5,000万円を超えて相続税の申告が必要になる場合は、税理士報酬を含めて50~80万円程度を見込んでおく必要があります。不動産が複数ある場合や相続人が多数にわたる場合は、さらに費用が増加する可能性も考えられます。
【4ステップで解説】相続費用の支払いタイミングと流れ
相続手続きの費用は、段階に応じて発生します。全体の流れを把握しておくことで、予期せぬ出費を避け、計画的に進められるでしょう。
【ステップ1:相続開始直後(~3ヶ月)】
- やること: 死亡届提出、各種証明書の収集、法定相続人・相続財産の概略把握、相続放棄の検討
- かかる費用: 各種証明書の取得費(約1~3万円)、相続放棄申述費用(約2,000円)
- 誰が払う?: 代表相続人が一時的に立て替えるのが一般的です。
この段階では比較的少額ですが、被相続人の出生から死亡までの戸籍を辿る必要があり、多くの証明書が必要になることもあります。相続放棄を検討している場合は、相続開始を知った日から3ヶ月以内という期限があるため、迅速な判断と手続きが必要です。
【ステップ2:財産調査・評価、専門家への依頼(2~4ヶ月)】
- やること: 相続財産の詳細調査・評価、遺産分割協議、必要に応じて専門家(司法書士・税理士など)へ相談・依頼
- かかる費用: 不動産鑑定評価費用(20~40万円)、専門家への着手金(報酬の30~50%程度)
- 誰が払う?: 不動産の評価が必要な場合は代表相続人が、専門家への着手金も代表相続人が立て替えることが多いでしょう。
相続財産の全容が明らかになってきたら、専門家への依頼を検討します。不動産の名義変更が必要なら司法書士に、相続税申告が必要なら税理士に相談するのが一般的です。
【ステップ3:手続き実行(4~8ヶ月)】
- やること: 遺産分割協議書の作成、不動産の相続登記、預貯金・株式の名義変更・解約
- かかる費用: 登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)、金融機関での手数料(無料~5,000円程度)
- 誰が払う?: 登録免許税は不動産を相続した人が法務局での登記申請時に支払います。金融機関の手数料は、手続きを行う相続人が都度支払うことになるでしょう。
遺産分割協議がまとまれば、具体的な手続きを進めます。例えば、評価額2,000万円の自宅を相続する場合、8万円の登録免許税がかかる計算です。銀行での相続手続きは無料のケースが多いですが、一部金融機関では手数料がかかることもあるため、確認が必要です。
【ステップ4:最終精算(8~10ヶ月)】
- やること: 相続税の申告・納付、専門家への報酬残金の支払い
- かかる費用: 相続税、専門家への残金(報酬の50~70%程度)
- 誰が払う?: 相続税は相続人各々が、申告期限である10ヶ月以内に現金で納めます。専門家への報酬残金は、手続き完了時に代表相続人が立て替え、後で相続財産から精算するのが一般的です。
相続税の申告には期限があり、原則現金納付です。専門家への報酬残金も、手続き完了時に支払うのが一般的でしょう。
【注意すべきポイント】
費用の支払いで最も注意すべきは、相続財産である預貯金が凍結されている期間中の資金調達です。金融機関での相続手続きが完了するまでは、相続人が立て替える必要があります。
また、相続人間での費用分担も、遺産分割協議の際に明確に取り決めておくことが重要です。「誰がいくら負担するか」で後からトラブルにならないよう、早い段階で話し合っておくと良いでしょう。
相続手続きの費用は決して安くありません。しかし、適切に進めることで相続人全員が納得できる結果を得られるはずです。不明な点や複雑な状況がある場合は、早めに司法書士や弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。
【ケース別】相続手続き費用の具体例
相続手続きの費用は、相続財産の種類や相続人の状況で大きく変わるものです。「実際にいくらかかるの?」という疑問にお答えするため、代表的なケースの費用シミュレーションをご紹介します。
不動産がある場合の費用シミュレーション
不動産相続では登記費用が発生するため、他の財産と比べて手続き費用が高額になる傾向があります。具体的な事例で見ていきましょう。
【事例】東京都内の戸建て住宅を相続するケース
- 不動産評価額:3,000万円
- 相続人:配偶者と子2人の計3名
- 遺産分割:配偶者が不動産を単独相続
この場合の主要費用は以下のとおりです。
- 登録免許税:120,000円(固定資産税評価額の0.4%)
固定資産税評価額3,000万円の場合、3,000万円×0.4%で計算されます。不動産を相続する配偶者が法務局での登記申請時に支払います。 - 戸籍謄本等の取得費用:5,000円程度
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、住民票などが必要です。代表相続人が都度立て替えます。 - 司法書士報酬:80,000円〜150,000円
不動産の登記手続きを司法書士に依頼する場合の一般的な報酬額です。物件数や相続関係の複雑さによって変動します。契約時に着手金を、完了後に残金を代表相続人が立て替えます。 - その他費用:10,000円程度
登記事項証明書、印鑑証明書などの取得費用です。代表相続人が都度立て替えます。
合計:約215,000円〜285,000円
ただし、不動産が複数ある場合や、相続登記と同時に抵当権抹消が必要な場合は、さらに費用が加算されることになります。
遺言書がある場合/ない場合の費用比較
遺言書の有無は、相続手続きの複雑さと費用に大きな影響を与えます。
【遺言書がある場合の費用】
公正証書遺言があるケースでは、家庭裁判所での検認手続きが不要となり、比較的スムーズに手続きが進みます。
- 遺言書の検索費用:500円程度(公証役場での検索)
- 遺言書の謄本取得:数千円
- 相続手続き全体:50,000円〜100,000円程度
遺言書に従って財産を分割できるため、相続人間での協議が不要となり、手続き期間も短縮されるでしょう。これらの費用は、遺言執行者または代表相続人が立て替えることが一般的です。
【遺言書がない場合の費用】
遺言書がない場合は、相続人全員での遺産分割協議が必要になります。
- 遺産分割協議書作成:10,000円〜30,000円(行政書士等に依頼の場合)
- 相続人調査:10,000円〜20,000円(戸籍収集が複雑になりがち)
- 相続手続き全体:80,000円〜200,000円程度
相続人が多い場合や、相続財産が複雑な場合は、さらに費用が増加する可能性があります。また、相続人間で意見が分かれた場合は、家庭裁判所での調停や審判が必要になることもあり、その際は追加で20万円〜50万円程度の費用が発生することもあるでしょう。これらの費用は、代表相続人が立て替えるか、相続人全員で分担するケースが多く見られます。
遺言書がある場合とない場合を比較すると、一般的には遺言書がある方が手続き費用を抑えられる傾向にあります。
相続人が複数いるときの費用分担と注意点
相続人が複数いる場合、「誰が費用を負担するのか」は重要な問題となります。法律上の原則と実務上の慣行を整理してみましょう。
【費用負担の法的原則】
相続手続きにかかる費用は、原則として「相続財産から支出する」または「相続人全員で相続分に応じて負担する」こととされています。ただし、明確な法的規定はないため、実際は相続人間での話し合いで決めるケースがほとんどです。
【実務上の費用分担パターン】
- パターン1:代表相続人が立替え後に精算
手続きを主導する相続人が一旦全額を負担し、遺産分割時に相続財産から差し引いて精算する方法です。最も一般的な方法といえるでしょう。 - パターン2:相続分に応じて事前分担
各相続人が法定相続分や遺産分割の割合に応じて費用を分担する方法です。配偶者が2分の1、子が各4分の1を相続する場合、費用もその割合で分担します。 - パターン3:受益者負担
不動産を単独で相続する人が登記費用を全額負担するなど、その手続きで利益を受ける人が費用を負担する考え方です。
【注意すべきポイント】
相続人間での費用分担でトラブルにならないよう、以下の点に十分な注意が必要です。
- 手続き開始前に費用分担方法を明確に決めておく
- 領収書や明細をしっかりと保管し、後で精算根拠を示せるようにする
- 専門家報酬は事前に見積もりを取り、相続人全員で確認する
特に相続人同士の関係が良好でない場合は、費用の透明性を保つことが重要です。「言った・言わない」のトラブルを避けるため、費用分担についても書面で合意しておくことをおすすめします。
自分で相続手続きを行う場合の費用の内訳
相続が発生したとき、専門家に依頼せず自分で手続きを進めることで費用を抑えたいと考える方も多いはずです。しかし、実際にどのような費用がどれくらいかかるのか、事前に把握しておくことが大切でしょう。
戸籍謄本や住民票などの証明書取得費用
相続手続きにおいて、最初に必要となるのが各種証明書の取得です。これらの書類は相続人の確定や被相続人の死亡確認のために欠かせません。各市区町村の役所で取得できるほか、書類によってはマイナンバーカードでコンビニで取得できることもあります。
【戸籍関係書類の費用】
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)は1通450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本は1通750円です。被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を収集する必要があるため、通常3~5通程度、多い場合は10通以上必要になることもあります。転籍を複数回行っている場合や高齢の方の場合、戸籍の収集だけで5,000円~15,000円程度かかることも珍しくないでしょう。
相続人全員の現在戸籍謄本も必要で、相続人が3人いる場合は450円×3通で1,350円となります。
これらの費用は、手続きを進める代表相続人が都度立て替えます。
【住民票関係書類の費用】
住民票の写しは1通300円程度(自治体により異なる)、被相続人の住民票除票も同様に300円程度です。相続人全員分が必要な場合もあり、人数分の費用がかかります。こちらも代表相続人が都度立て替えるでしょう。
【印鑑登録証明書の費用】
相続人全員の印鑑登録証明書が必要で、1通300円程度です。遺産分割協議書への押印で使用するため、相続人が多いほど費用は増加します。各相続人個人が取得時に支払うのが原則です。
郵送で取得する場合は、定額小為替の購入手数料(1枚100円)や郵送料も別途必要となるため、全体で5,000円~20,000円程度を見込んでおくと良いでしょう。
不動産・車両の名義変更にかかる費用【登録免許税・手数料詳細】
不動産や車両の名義変更では、登録免許税をはじめとする様々な費用が発生します。これらは資産の価値に応じて決まるため、事前にしっかりと計算しておくことが重要です。
【不動産の相続登記費用】
不動産の相続登記では、固定資産税評価額の0.4%の登録免許税がかかります。例えば、評価額3,000万円の土地・建物を相続する場合、3,000万円×0.4%=12万円の登録免許税が必要です。これは、不動産を相続した人が法務局での登記申請時に現金または印紙で支払います。
また、登記事項証明書(登記簿謄本)の取得に1通600円、固定資産税評価証明書の取得に1通300円程度かかります。複数の不動産がある場合は、それぞれについて書類取得費用が発生するでしょう。これらの書類取得費用は代表相続人が都度立て替えます。
【自動車の名義変更費用】
普通自動車の相続による名義の変更では、移転登録手数料として500円、新しい車検証交付手数料として300円がかかります。また、車庫証明書の取得に2,500円~3,000円程度(都道府県により異なる)、印紙代として500円程度が必要です。軽自動車の場合は、移転登録手数料が300円程度とやや安くなりますが、車庫証明(軽自動車では車庫届出)の費用は同程度かかります。
これらの費用は比較的少額ですが、複数台所有している場合は台数分必要となるため、事前に確認しておきましょう。車両を相続する人が、陸運局や警察署で手続き時に支払います。
預貯金・株式などの金融資産の名義変更費用【金融機関別】
金融資産の相続手続きでは、各金融機関で異なる手数料体系となっているため、口座を持つすべての機関での費用を確認する必要があります。
【銀行預金の相続手続き費用】
多くの銀行では、相続手続き自体に手数料はかかりませんが、残高証明書の発行に1通500円~1,000円程度、取引履歴の発行に1,000円~3,000円程度の費用がかかる場合があります。
ただし、相続人が多数いる場合や遺産分割協議書の内容確認に時間がかかる場合、一部の銀行では事務手数料として数千円を請求されることもあるでしょう。複数の銀行に口座がある場合は、それぞれで手続きが必要となり、費用も重複して発生します。これらの費用は、預金を受け取る相続人または代表相続人が手続き時に支払います。
【証券会社・株式の相続手続き費用】
証券会社での相続手続きでは、株式の移管手数料として1銘柄あたり500円~2,000円程度かかることが多いです。保有銘柄数が多い場合、この費用だけで数万円になることもあります。
また、相続時の株価評価証明書の発行に1,000円~3,000円程度、残高証明書の発行に500円~1,500円程度の費用がかかります。これらの費用は、株式を相続する人または代表相続人が手続き時に支払うでしょう。
【その他の金融商品】
投資信託や債券、外貨預金なども、それぞれ個別の手数料が設定されている場合があります。金融商品の種類や金額によって手数料が変動することもあるため、各金融機関に事前に確認することが大切です。
全体として、金融資産の相続手続きでは5,000円~30,000円程度の費用を見込んでおくと良いでしょう。
相続放棄手続きにかかる費用(必要な場合)|手続き期限に注意
相続財産に債務が多く含まれる場合や、相続に関わりたくない場合は、相続放棄の手続きが必要になります。この手続きには期限があるため、費用面も含めて早めに検討することが重要です。
【家庭裁判所への申立て費用】
相続放棄の申立てには、収入印紙800円と連絡用の郵便切手(通常1,000円程度)が必要です。申立人1人につきこれらの費用がかかるため、相続人全員が放棄する場合は人数分の費用が発生します。これらの費用は、放棄する相続人個人が家庭裁判所に申立て時に支払います。
【必要書類の取得費用】
相続放棄の申立てには、被相続人の住民票除票(300円程度)、死亡の記載のある戸籍謄本(450円)、申立人の戸籍謄本(450円)が必要です。また、被相続人との関係を証明するための戸籍謄本が追加で必要になる場合もあるでしょう。これらの書類取得費用も、放棄する相続人が都度立て替えることになります。
【手続き期限と注意点】
相続放棄は、自分が相続人であることを知った時から3か月以内に行う必要があります。この期限を過ぎると、原則として相続放棄はできなくなるため、債務の存在が判明した場合は迅速に手続きを進めることが大切です。
手続き費用は比較的少額ですが、期限内に適切な書類を収集し、正確な申立書を作成する必要があります。書類の不備があると再提出が必要になり、期限に間に合わない可能性もあるため、不安な場合は早めに専門家に相談することをおすすめします。
相続手続きは複雑で、自分で行う場合でも相当な時間と労力が必要です。費用を抑えることは大切ですが、手続きの間違いや期限の見落としがあると、より大きな問題に発展する可能性もあります。状況に応じて、専門家のアドバイスを受けながら進めることで、安心して相続手続きを完了できるでしょう。
専門家に依頼する場合の相続手続きの費用相場
相続が発生したとき、手続きの複雑さや専門知識の多さに戸惑う方は少なくないはずです。「自分で手続きするのは不安だけど、専門家に頼むとどれくらい費用がかかるの?」という疑問を持つのは当然のことでしょう。
相続手続きを専門家に依頼する際の費用は、依頼先や相続財産の内容によって大きく変わります。司法書士、行政書士、弁護士、税理士それぞれに専門分野があり、対応できる業務の範囲には制限があります。費用体系も異なるため、適切な専門家選びが重要です。
司法書士に依頼する場合の費用目安とサポート内容
司法書士は不動産の名義変更(相続登記)を中心に、相続手続き全般をサポートする専門家です。多くの司法書士事務所では、相続手続きをパッケージ化したサービスを提供しており、費用体系が比較的明確になっています。
【相続登記の基本報酬:5万円〜15万円】
この金額には、戸籍謄本等の収集、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成、登記申請書の作成・提出が含まれることが一般的です。ただし、相続人の人数や不動産の筆数、所在地の数によって加算料金が発生する場合もあるでしょう。この報酬は、契約時に着手金を、手続き完了後に残金を、代表相続人が立て替えることが多く見られます。
【相続手続きおまかせ丸ごとサポート(一例):15万円〜30万円】
預貯金の解約手続き、株式の名義変更、生命保険金の請求など、相続登記以外の手続きも含めた総合的なサポートサービスです。金融機関の数や相続財産の種類・金額によって費用が変動します。こちらも代表相続人が立て替えるのが一般的です。
司法書士に依頼するメリットは、法的な知識に基づく確実な手続きと、相続人全員の代理人として各種機関とのやり取りを一任できることです。特に、平日に金融機関や法務局に行く時間がない会社員の方にとっては、時間的なメリットが大きいと言えるでしょう。
また、司法書士は相続放棄の申述書作成や成年後見人の選任申立てなど、家庭裁判所への申立て手続きにも対応できます。複雑な相続案件でも一貫したサポートを受けられる安心感があるでしょう。
行政書士への依頼費用と得られるメリット
行政書士は、相続手続きの中でも特に戸籍収集や遺産分割協議書の作成を得意とする専門家です。司法書士と比べて費用が抑えられることが多く、相続登記が不要なケースでは最適な選択肢となります。
【戸籍収集・相続関係図作成:3万円〜8万円】
相続人調査から始まり、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本・住民票の収集、相続関係説明図の作成を行います。相続人の人数や戸籍の取得難易度によって費用が変動しますが、司法書士と比べて2〜3割程度安価に設定されていることが多いでしょう。この費用は、代表相続人が契約時に着手金を、完了後に残金を支払うのが一般的です。
【遺産分割協議書作成:5万円〜12万円】
相続財産の調査、財産目録の作成、遺産分割協議書の作成までをサポートします。不動産がない相続や、預貯金・株式のみの相続の場合は、行政書士への依頼が費用対効果の面で優れています。この費用も、代表相続人が契約時に着手金を、完了後に残金を支払うことが多いでしょう。
行政書士に依頼する最大のメリットは、コストパフォーマンスの良さです。相続登記が不要で、かつ相続人間に争いがないケースでは、必要なサポートを比較的低価格で受けることができます。
ただし、行政書士は登記申請や裁判所への申立てを行うことができないため、不動産登記が必要な相続や、相続放棄が必要なケースでは、最終的に司法書士や弁護士への依頼が必要になることもあります。依頼前に自分の相続における必要事項を整理し、適切な専門家を選ぶことが重要です。
弁護士に依頼すべきケースと費用の相場
弁護士への依頼は、相続人間で争いが生じている場合や、複雑な法的問題が絡む相続案件で必要になります。費用は他の専門家と比べて高額になりがちですが、法的トラブルの解決能力は他の専門家では代替できない強みがあります。
【遺産分割調停・審判:着手金30万円〜50万円、成功報酬10〜16%】
相続人間で遺産分割について合意できない場合の家庭裁判所での調停・審判手続きです。着手金は事件の複雑さや相続財産の金額によって決まり、成功報酬は獲得した財産の10〜16%程度が相場となっています。これらの費用は、依頼した相続人が契約時に着手金を、解決後に成功報酬を支払います。
【遺言無効確認訴訟:着手金50万円〜100万円】
遺言書の有効性に疑義がある場合の訴訟手続きです。医学的な鑑定や筆跡鑑定が必要になることもあり、これらの費用(10万円〜50万円)が別途発生する場合があります。こちらも依頼した相続人が支払う費用です。
【遺留分侵害額請求:着手金20万円〜40万円、成功報酬10〜16%】
遺留分を侵害された相続人が、侵害した相続人に対して金銭的な補償を求める手続きです。交渉から調停、訴訟まで段階的に進むことが多く、各段階で費用が発生します。費用は依頼した相続人が支払います。
弁護士に依頼すべきケースとしては、相続人の一部が行方不明で不在者財産管理人の選任が必要な場合、被相続人の借金が多く相続放棄を検討している場合、相続税の申告で税務署と争いが生じる可能性がある場合などでしょう。
また、被相続人が経営していた会社の株式承継や、農地の相続など、特殊な財産が含まれる相続でも弁護士の専門知識が重要になることがあります。費用はやや高くなりますが、トラブルを法的に解決できる唯一の専門家であることを考慮すると、必要な投資と言えるでしょう。また、事業承継を含む相続も、お早めのご相談をおすすめします。
税理士に相談した方がいい場合と費用の目安
相続税の申告が必要になるケース、または相続税がかかるかどうか判断が難しい場合には、税理士への相談が不可欠です。相続税をはじめ、贈与税、固定資産税など、相続に関連するさまざまな税金の計算は複雑で、適切な評価や特例の適用により税額に大きな差が生じることがあります。
【相続税申告書作成:30万円〜100万円】
相続財産の総額や財産の種類、相続人の人数によって費用が変動します。財産総額5,000万円以下の一般的な相続では30万円〜50万円程度、不動産や非上場株式が多く含まれる複雑な相続では80万円〜100万円程度が相場でしょう。この費用は、契約時に着手金を、申告書提出後に残金を、代表相続人が立て替えることが一般的です。
【財産評価・税額試算:10万円〜30万円】
相続税がかかるかどうかの判定や、概算税額の計算を行うサービスです。相続開始前に将来の相続税を試算したい場合や、遺産分割の方法を検討する際の下準備として活用できます。代表相続人が立て替えます。生前からの対策や、節税の観点から利用されることもあります。
【税務調査対応:20万円〜50万円】
相続税の申告後に税務署から調査が入った場合の対応費用です。申告を担当した税理士が対応する場合は比較的低額ですが、ほかの税理士が作成した申告書の税務調査対応では高額になる傾向があります。この費用も、代表相続人が支払うことが多いでしょう。
税理士に相談すべき基準としては、相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人数)を超える場合がです。ただし、基礎控除額以下でも、不動産の評価が複雑な場合や、生前贈与が多数ある場合は専門的な判断が必要になることもあるでしょう。
また、相続税の申告には期限(相続開始から10ヶ月以内)があるため、早めの相談が重要です。期限に間に合わない場合は延滞税や無申告加算税が課される可能性があり、結果的に多額の追加費用が発生してしまうかもしれません。
追加費用が発生するケースと確認すべきポイント【見積書チェック】
専門家に相続手続きを依頼する際、基本報酬以外に追加費用が発生するケースは珍しくありません。見積書の段階で確認すべきポイントを押さえておくことで、予想外の出費を避けることができます。
【実費・手数料の詳細確認】
戸籍謄本の取得費用(1通450円)、登記事項証明書(1通600円)、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)などの実費は、相続財産の内容や手続きの種類によって大きく変わります。特に、相続人が多い場合や不動産が複数ある場合は、実費だけで10万円を超えることもあるでしょう。
見積書では「実費別途」となっていることが多いため、概算金額を確認しておくことが大切です。また、金融機関への出張費や書類の郵送費なども実費として請求される場合があります。これらの費用は、代表相続人が立て替え、後から精算することになります。
【追加作業が発生する条件】
当初の想定と異なり追加作業が必要になった場合の費用体系も確認が必要です。例えば、戸籍調査の結果、認知した子や前妻の子など予想していなかった相続人が判明した場合、遺産分割協議のやり直しや追加の書類作成が必要になります。
また、金融機関によって相続手続きの必要書類が異なるため、想定より多くの金融機関での手続きが必要になった場合の加算料金についても確認しておきましょう。追加作業が発生した場合の費用は、代表相続人が立て替えるのが一般的です。
【期限に関する追加費用】
相続税の申告期限や相続登記の義務化(令和6年4月1日施行)により、期限間近での依頼では緊急対応費が加算される場合があります。また、平日に手続きできない場合の土日対応費用なども、事前に確認しておくべきポイントです。
【複数専門家の連携費用】
例えば、司法書士に依頼した相続手続きで相続税の申告も必要になった場合、税理士への引継ぎ作業や連携に関する費用が発生することがあります。最初から複数の専門家による連携が必要と分かっている場合は、総合的なサービスを提供する事務所を選ぶか、各専門家間の費用分担について明確にしておくことが重要です。
相続手続きは一人で抱え込まず、適切な専門家のサポートを受けることで、手続きを確実に進めるだけでなく、精神的な負担も軽減することができます。費用面での不安がある場合は、複数の事務所から見積もりを取得し、サービス内容と費用のバランスを比較検討することをおすすめします。多くの専門家は初回相談を無料で行っています。無料相談や公的機関のサービスを利用して、まずは現在の状況を整理し、最適な解決方法を見つけることから始めてみてください。
まとめ
相続手続きは、故人への最後のお別れの作業であるとともに、残されたご家族の新しいスタートを支える大切な手続きでもあります。費用面での不安や疑問を抱えたまま進めるのではなく、事前にしっかりと全体像を把握しておくことで、心の余裕を持って取り組めるでしょう。
相続手続きの費用は、相続財産の種類や規模、手続きの複雑さによって大きく変動します。戸籍謄本や印鑑証明書といった基本的な書類取得費用は数千円程度ですが、不動産の名義変更では登録免許税として固定資産税評価額の0.4%、預貯金の解約手続きでは金融機関ごとに数百円から数千円の手数料が発生します。また、相続税の申告が必要な場合は、税理士報酬として数十万円から数百万円の費用を見込んでおく必要があります。
これらの費用は原則として相続人全員で負担することになりますが、実際の支払いタイミングや分担方法については、相続人同士でよく話し合って決めることが重要です。特に、相続放棄を検討している方がいる場合や、相続人間で意見が分かれている場合は、費用負担の問題も含めて早めに専門家にご相談されることをおすすめします。
相続手続きは一生に何度も経験するものではありません。だからこそ、わからないことや不安に感じることがあるのは当然のことです。司法書士や弁護士、税理士といった専門家は、それぞれの専門分野において豊富な経験と知識を持っており、ご家族の状況に応じた最適な手続き方法や費用の見通しを提案してくれます。初回相談を無料で行っている事務所も多いため、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。