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相続の手続きとは?必要書類や種類ごとの特徴を解説

 

相続の手続きとは?必要書類や種類ごとの特徴を解説

相続の手続きは、故人の財産や権利を引き継ぐために欠かせない重要なものです。しかし、必要な書類や手順は複雑で、期限や順序を誤るとトラブルになることもあります。

事前に流れを理解し、必要書類を揃えておくことで、余計な手間や不安を減らすことができます。
この記事では、家族を亡くされた悲しみの中で、初めて相続手続きに向き合う方に向けて、必要な手続きを順序立ててわかりやすく解説します。事前に流れを理解し、必要書類を揃えておくことで、初めて相続を経験する方でも、余計な手間や不安を減らすことができるでしょう。

相続手続きの流れ:4つのステップでやるべきこととは?

大切な家族を亡くされた直後は、深い悲しみの中にありながらも、様々な手続きを進めなければなりません。相続手続きは複雑に感じられがちですが、一つずつ順序立てて進めていけば、必ず終えることができます。

相続手続きには法的に期限があるものも多く、特に相続放棄は3ヶ月以内、相続税の申告は10ヶ月以内で、これらの手続きの期限は重要なものです。しかし、慌てる必要はありません。まずは基本的な流れを把握し、一歩ずつ着実に進めていくことが大切です。

ここでは、相続手続きを4つのステップに分けて、それぞれで何をすべきか、どこに注意すべきかを具体的にご説明します。手続きの途中で不明な点が生じた場合は、専門家に相談することで、より確実に進めることができます。

ステップ1:死亡届の提出・役所で最初にやるべきこと

家族が亡くなった際に最初に行うべき手続きが、死亡届の提出です。これは相続手続きの第一歩であり、他の全ての手続きの前提となる重要な手続きとなります。

死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡した場合は3ヶ月以内)に提出しなければなりません。提出先は、死亡者の死亡地・本籍地・届出人の住所地のいずれかの市区町村役場です。病院で亡くなった場合は、その病院がある市区町村でも提出できます。

提出に必要な書類は、死亡診断書(死体検案書)と届出人の印鑑です。死亡診断書は、病院で亡くなった場合は医師が、自宅で亡くなった場合はかかりつけ医が作成します。この書類は1通しかもらえないため、提出前に必ず複数枚コピーを取っておきましょう。生命保険の請求や銀行手続きなど、様々な場面で必要になります。

死亡届を提出すると同時に、火葬許可申請も行います。これにより火葬許可証が交付され、葬儀を行うことができるようになります。また、この機会に住民票の除票や戸籍謄本なども併せて取得しておくと、後の相続手続きがスムーズに進むでしょう。

ステップ2:遺言書の有無を確認する具体的な方法

相続手続きを進める上で、遺言書の有無の確認は非常に重要です。遺言書がある場合とない場合では、相続の進め方が大きく異なるため、まずはこちらから確認していきましょう。

まず、故人の自宅で遺言書を探してみましょう。自筆証書遺言の場合、仏壇や金庫、机の引き出し、重要書類を保管していた場所などに保管されていることが多いです。また、故人が信頼していた人に預けている場合もあるため、親族や親しい友人に確認してみることも大切です。

公正証書遺言の場合は、全国の公証役場で検索できます。最寄りの公証役場に行き、遺言検索の申請を行えば、故人が公正証書遺言を作成していたかどうかを確認できるでしょう。この検索は、相続人であることを証明する戸籍謄本と身分証明書があれば可能です。

法務局に保管されている自筆証書遺言を確認する場合は、遺言書保管事実証明書の交付請求を行います。これは2020年から始まった制度で、故人が法務局に自筆証書遺言を預けていた場合に発見できるものです。

遺言書を発見した場合、自筆証書遺言であれば家庭裁判所での検認手続きが必要です。勝手に開封してはいけませんので、封がしてある場合はそのまま家庭裁判所に持参してください。公正証書遺言の場合は、検認手続きは不要で、そのまま相続手続きに使用できます。

ステップ3:相続人の確定と戸籍謄本の集め方

相続手続きを適切に進めるためには、相続人が誰であるかを正確に把握することが欠かせません。これは戸籍謄本を辿ることで確認でき、全ての相続人が明確になってはじめて、遺産分割協議などの次の手続きに進むことができます。この作業は少し手間がかかるかもしれませんが、相続を円滑に進めるための大切な第一歩です。

相続人の調査は、故人の最後の戸籍謄本(除籍謄本)から始めます。この戸籍謄本には、故人の配偶者や子供が記載されています。しかし、故人が過去に転籍や婚姻などで戸籍を移動している場合、一つの戸籍だけでは全ての相続人を把握できないこともあります。そのため、故人の出生から死亡まで全ての戸籍を取得する必要があるでしょう。

戸籍謄本の請求は、本籍地の市区町村役場で行います。遠方の場合は郵送でも請求可能です。郵送の場合、往復で1〜2週間程度かかることもありますので、時間に余裕を持って請求するのが賢明です。戸籍謄本を見ると、前の戸籍の記載があるため、それを頼りに古い戸籍も順次取得していきます。戸籍は法改正などで作り直されていることがあるため、「平成改製原戸籍(かいせいげんこせき)」や「昭和改製原戸籍」といった古いタイプの戸籍、また「除籍謄本」など、複数の種類を取得することになる、と覚えておきましょう。

相続人の確定作業では、認知した子供や養子、前妻・前夫との間の子供なども漏れなく調査することが大切です。また、相続人の中に既に亡くなっている方がいる場合は、代襲相続(亡くなった相続人の子が代わりに相続人になること)が発生するため、その方の子供(故人の孫)も相続人となります。このような複雑なケースでは、家系図を作成しながら整理すると分かりやすくなるでしょう。

相続人の確定が完了したら、各相続人の現在の戸籍謄本と住民票も取得します。これらの書類は、遺産分割協議書の作成や不動産の名義変更、銀行での手続きなどで必要となります。

ステップ4:相続財産の調査・リストアップのコツ

相続財産の調査は、相続人が適切な判断を行うために不可欠な手続きです。プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含めて正確に把握することで、相続するか相続放棄するかを適切に判断できるでしょう。この作業は多岐にわたるため、焦らず一つずつ確認していくことが大切です。

不動産については、まず固定資産税の納税通知書を確認しましょう。故人宛に毎年送付されているこの書類には、所有している不動産の一覧が記載されています。また、権利証(登記済証や登記識別情報といった不動産の権利を証明する書類)も重要な手がかりとなります。不動産の詳細な情報を知るためには、各不動産の登記事項証明書を法務局で取得し、現在の所有者や抵当権の設定状況などを確認してください。

預貯金については、故人が取引していた可能性のある金融機関に残高証明書の発行を依頼します。通帳やキャッシュカード、金融機関からの郵便物などから取引先を特定できますが、見落としがないよう丁寧に調査することが大切です。定期預金や積立預金なども忘れずに確認しましょう。

有価証券については、証券会社からの郵便物や取引明細書を確認します。株式や債券、投資信託などがある場合は、相続時点での評価額を証券会社に確認してもらってください。

生命保険については、保険証券や保険料の引き落とし記録から契約内容を確認します。受益者が故人以外に設定されている場合、その保険金は相続財産には含まれませんが、相続税の計算では考慮される場合がありますので注意が必要です。

借金などのマイナスの財産についても忘れずに調査しましょう。信用情報機関(CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センター)に情報開示請求を行うことで、故人の借入状況を確認できます。また、クレジットカードのリボ払いや住宅ローン、消費者金融からの借入なども含めて調査してください。

財産目録を作成する際は、プラスの財産とマイナスの財産を分けて整理し、それぞれの評価額も記載します。この作業により、相続税が発生するかどうかの判断や、相続放棄を検討すべきかどうかの判断が可能になります。複雑な財産構成の場合や評価が困難な財産がある場合は、司法書士や税理士などの専門家に相談することで、正確で漏れのない財産調査を行うことができ、安心して次の手続きに進むことができるでしょう。

相続手続きに必要な書類一覧とその集め方

相続手続きは、故人の財産を適切に引き継ぐために、法的に必要な手続きです。しかし、いざ手続きを始めようとすると、どんな書類が必要なのか、どこで取得すればよいのか、戸惑ってしまう方がほとんどではないでしょうか。

相続手続きでは、大きく分けて「相続人を確定するための書類」「財産を明らかにする書類」「各種手続き先で求められる書類」の3つのカテゴリーに分かれます。これらの書類は、手続きの種類や相続財産の内容によって必要なものが変わってくるため、事前にしっかりと把握しておくことが重要です。

特に注意すべきは、書類の有効期限です。戸籍謄本や印鑑証明書などは、発行から3か月以内のものを求められることが多く、手続きのタイミングを見計らって取得する必要があるでしょう。また、相続人が複数いる場合は、全員分の書類が必要になるケースもあるため、早めに相続人同士で連携を取り、計画的に準備を進めることをおすすめします。

書類の不備があると手続きが滞り、相続税の申告期限(10か月以内)に間に合わない可能性もあります。そのため、最初に全体像を把握し、優先順位をつけて効率的に書類収集を行うことが、スムーズな相続手続きのカギとなります。

相続人が準備すべき主な書類まとめ

相続手続きを開始する際に、まず準備すべき基本的な書類をご紹介します。これらは、ほぼすべての相続手続きで共通して必要となる重要な書類です。

故人に関する書類としては、以下のものがあります。

特に戸籍謄本は、故人の出生から死亡までの連続したものが求められるため、転籍を繰り返している場合は複数の市区町村から取り寄せる必要があるでしょう。これは相続人を漏れなく確定するための重要な書類で、手続きの基盤となるものです。

相続人全員に関する書類では、以下のものが基本となります。

相続人が配偶者と子供2人の場合、合計で戸籍謄本3通、住民票3通、印鑑証明書3通が必要になる計算です。遠方に住む相続人がいる場合は、郵送での取得に時間がかかることも考慮して、早めに依頼することが大切です。

財産関係の書類については、以下のようなものが該当します。

これらは相続財産の全容を明らかにし、適正な遺産分割を行うために不可欠です。特に故人が複数の金融機関と取引していた場合は、見落としがないよう注意深く調査する必要があるでしょう。

書類収集の際は、コピーと原本のどちらが必要であるか、事前に確認してください。金融機関によっては原本の提示を求められる場合もあれば、コピーで対応できる場合もあります。効率的に進めるため、各手続き先に必要書類の詳細を事前に問い合わせることをおすすめします。

銀行・金融機関の相続手続きで必要な書類と注意点

銀行で必要な相続の手続きは、「故人の口座凍結解除」と「預金の払い戻し」で、これらは、相続手続きの中でも特に重要なものです。各金融機関によって求められる書類が微妙に異なるため、事前の確認と準備がポイントとなります。

基本的な必要書類は、まず以下のものです。

これらがない場合でも手続きは可能ですが、本人確認により時間がかかる可能性があります。加えて、以下の書類も必要です。

特に注意すべきは、遺産分割協議書の扱いです。相続人全員の実印での押印と印鑑証明書の添付が必要で、一人でも欠けていると手続きができません。例えば、兄弟3人が相続人の場合、3人全員が協議書に署名・押印し、それぞれの印鑑証明書を添付する必要があるでしょう。遠方に住む兄弟がいる場合は、郵送でのやり取りに時間を要することも考慮しておきましょう。

金融機関特有の注意点として、定期預金の取り扱いがあります。定期預金は満期前の解約となるケースが多く、利息の計算方法が通常と異なる場合がありますので確認が必要です。また、投資信託や外貨預金などがある場合は、評価額の算定日や売却のタイミングについて事前に相談しておくと安心です。

手続きにかかる期間は、書類が完全に揃っていても、通常1〜2週間程度かかることが多いです。相続税の納付や生活費の確保など、急を要する事情がある場合は、その旨を金融機関に相談すると、優先的に処理してもらえる可能性があります。複数の金融機関で手続きを行う場合は、同じ書類を何度も取得することになるため、必要部数を事前に計算して一括取得することで、費用と時間の節約につながるでしょう。

不動産相続で必要な書類と登記の注意点

不動産の相続手続きは、法務局での相続登記という法的手続きが必要で、相続手続きの中でも特に専門性が高い分野です。2024年からは相続登記が義務化されたため、適切な期限内での手続きが求められることになります。少し難しく感じるかもしれませんが、重要なポイントを押さえていきましょう。

不動産相続登記の基本書類として、まず以下のものが必要です。

これらは法務局と市区町村役場でそれぞれ取得できます。登記事項証明書では故人が確実に所有者として記載されていることを確認し、固定資産評価証明書では登録免許税(不動産の登記をする際に国に納める税金)の計算に必要な評価額を把握します。

相続関係の証明書類については、他の相続手続きと同様に、以下の書類が基本となります。

ただし、不動産登記では「相続関係説明図」の作成が推奨されており、これを添付することで戸籍謄本の原本還付を受けることができます。複数の相続手続きで同じ戸籍謄本を使い回せるため、経済的にもメリットがあります。

登記申請特有の注意点として、まず登録免許税の計算があります。固定資産評価額の0.4%が基本的な税率で、例えば評価額3000万円の不動産であれば12万円の登録免許税がかかる計算です。この税金は現金または収入印紙で納付する必要があり、申請時に準備しておかなければなりません。

また、共有での相続を選択する場合は、将来の売却や活用を考慮した持分割合の設定が重要です。法定相続分通りに登記することも可能ですが、実際の使用状況や維持管理の負担を考えて、遺産分割協議で具体的な持分を決めることをおすすめします。

不動産登記は一度完了すると修正が困難なため、申請前の書類確認は慎重に行う必要があります。特に住所や氏名の記載ミス、添付書類の不備は手続きの遅延につながります。初回の相続登記で不安がある場合は、司法書士などの専門家に相談することで、確実かつ効率的な手続きが可能になるでしょう。専門家に依頼することで、複雑な戸籍の収集から登記申請まで一括してサポートを受けられ、相続人の負担を大幅に軽減できます。

相続方法は3種類|状況に合わせた選び方

相続が開始されると、相続人は故人の財産をどのように受け継ぐかを決める必要があります。相続には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」という3つの方法があり、それぞれに特徴と注意点があります。

この選択は一度決定すると原則として変更できないため、慎重に検討することが大切です。

単純承認の流れと注意点

「単純承認」とは、故人のプラス財産もマイナス財産も含めて、すべてを無条件で相続する方法です。最も一般的な相続の形態で、特別な手続きを行わない限り、自動的に単純承認が成立すると考えてよいでしょう。

相続開始から3か月以内に限定承認や相続放棄の手続きを行わなかった場合、または相続財産を処分したり、使用したりした場合には、単純承認が成立します。たとえば、故人の預金口座からお金を引き出して葬儀費用に充てたり、不動産を売却したりすると、単純承認したものとみなされることがあります。

注意すべき点は、故人に借金や保証債務があった場合、相続人がその責任を負うことになることです。相続財産だけでは債務を支払えない場合、相続人の個人財産からも支払う必要が生じます。これは「無限責任(相続した以上の責任を負うこと)」と呼ばれ、相続人にとって大きなリスクとなり得ます。

単純承認を選択する場合は、事前に故人の財産状況を可能な限り詳しく調査することが重要です。銀行口座や不動産だけでなく、クレジットカードの残債や保証債務の有無についても確認しておきましょう。もし調査の過程で多額の債務が判明した場合は、相続開始から3か月以内であれば、相続放棄に方針を変更することも可能です。

「相続放棄」の手続きを解説

「相続放棄」は、故人の財産と債務をすべて放棄し、最初から相続人ではなかったものとして扱われる手続きです。借金が財産を上回る場合や、相続トラブルに巻き込まれたくない場合に選択されることが多い方法です。もし借金が多くて悩んでいるなら、この選択肢も検討してみてください。

相続放棄の手続きは、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述書を提出することで行います。まず必要書類を準備しましょう。申述書、故人の戸籍謄本、申述人の戸籍謄本、収入印紙800円分、連絡用の郵便切手などが基本的な必要書類です。相続人の順位によっては、追加の戸籍謄本が必要になる場合もあります。

申述書には、相続放棄をする理由を記載する必要があるでしょう。「債務超過のため」「相続財産が少額で、相続手続きにかかる費用の方が高くなるため」などが一般的な理由です。家庭裁判所に書類を提出後、通常1〜2週間程度で照会書が送られてきます。この照会書に回答して返送すると、さらに1〜2週間程度で相続放棄申述受理証明書が発行され、手続きが完了します。

相続放棄を行う際の重要な注意点として、「相続財産に一切手を付けてはいけない」ということがあります。故人の預金を使用したり、不動産を処分したりすると、単純承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があるため、十分注意しましょう。ただし、社会通念上相当な範囲の葬儀費用の支払いや、相続財産の管理に必要な行為は認められる場合があります。

限定承認のメリット・デメリット

「限定承認」は、相続財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ方法です。つまり、プラス財産がマイナス財産を上回る場合はその差額を相続し、マイナス財産の方が多い場合でも相続人の個人財産には影響しません。財産の内容がはっきりしない、でも大切なものは守りたい、という場合に検討できる選択肢です。

限定承認の最大のメリットは、リスクを限定できることです。たとえば、故人が事業を営んでいて財産状況が複雑な場合や、将来価値が上がる可能性のある不動産があるものの、現時点では債務の方が多い場合などに有効でしょう。また、家宝や思い出の品など、金銭的価値以外の意味で手放したくない財産がある場合、先買権(他の債権者に優先して買い取る権利)を行使して取得できる可能性もあります。

一方で、限定承認にはデメリットも存在します。最も大きな問題は手続きの複雑さです。相続人全員が共同で申述する必要があり、一人でも反対者がいると手続きができません。また、相続財産の調査、債権者への公告、財産の換価、債務の弁済など、多くの手続きが必要で、完了まで1年以上かかることも珍しくありません。

さらに、限定承認には税務上のデメリットもあります。故人が不動産などの財産を時価で売却したものとみなされ、含み益がある場合は準確定申告(亡くなった方の所得を計算して行う確定申告)で所得税を納める必要があるでしょう。手続きの複雑さから、多くの場合で弁護士や司法書士などの専門家に依頼することになり、その費用も考慮する必要があります。

相続は人生で何度も経験するものではないため、どの方法を選ぶべきか判断に迷うことは当然です。財産状況の調査や法的手続きには専門的な知識が必要な場面も多く、間違った選択をすると取り返しのつかない結果になる可能性もあります。そのような不安を感じられた際は、相続に詳しい弁護士や司法書士に相談することで、ご自身の状況に最も適した選択肢を見つけることができるでしょう。

【相続の3つの方法比較表】

種類

特徴

メリット

デメリット

期限

単純承認

プラス・マイナス全ての財産を無条件に相続

手続き不要、最も一般的

借金も引き継ぐ(無限責任)

特になし(3ヶ月以内に何もしない場合)

限定承認

プラス財産の範囲内で債務を引き継ぐ

リスク限定、大切な財産を残せる可能性

手続きが複雑、相続人全員の同意が必要、税金発生の可能性

相続開始を知ってから3ヶ月以内

相続放棄

全ての財産と債務を放棄する

借金を引き継がない、相続トラブルから解放される

一切の財産を受け取れない、次の相続人に影響

相続開始を知ってから3ヶ月以内

 

遺産分割協議と遺言書がある場合の対応法

相続が発生すると、遺言書の有無によって手続きの進め方が大きく変わります。遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、遺言書がある場合はその内容に従って手続きを進めることが基本です。しかし、実際の現場では様々な複雑な状況が生じることが多く、適切な対応を取ることが家族の絆を守る上でも重要になります。

遺産分割協議の進め方:トラブルを回避するために

「遺産分割協議」とは、相続人全員が参加して遺産の分け方を決める話し合いのことです。「法定相続分」という基準はありますが、相続人全員が合意すれば、その割合に関係なく自由に分割することができます。

協議を円滑に進めるためには、まず相続人と相続財産の確定が欠かせません。戸籍謄本を取得して相続人を正確に把握し、預金通帳や不動産登記簿謄本、株券などから財産目録を作成します。この段階で漏れがあると、後から新たな相続人や財産が判明してやり直しになる可能性がありますので注意が必要です。

話し合いの場では、感情的にならず客観的な視点を保つことが重要です。特に実家の不動産や思い出のある品物については、金銭的価値以外の感情的な価値も考慮する必要があるでしょう。例えば、長男が実家を相続する代わりに他の相続人に現金を支払う「代償分割(だいしょうぶんかつ)」といった方法もあります。

失敗例として多いのは、口約束だけで済ませてしまうケースです。
ある家族では「長男が実家を、次男が預金を相続する」と話し合いで決まったものの、書面を作成していませんでした。数年後、次男が亡くなり、その配偶者から「正式な協議書がないので分割をやり直したい」と申し出があり、大きなトラブルに発展しました。遺産分割協議書を作成しなかったために、このような問題が生じることがあるのです。

また、一部の相続人を除外して協議を進める失敗例もあります。遠方に住む相続人を「連絡が取りにくいから」という理由で除外して協議を行った方は、その相続人から異議申し立てがあり、協議が無効となってしまいました。相続人全員の参加と合意が絶対条件であることを忘れてはいけません。

協議書の作り方と例文

遺産分割協議書は、話し合いの結果を正式に記録する重要な書類です。この書類があることで、不動産の名義変更や銀行預金の解約手続きがスムーズに行えます。

協議書に必要な項目は、以下の通りです。

財産の記載は正確性が求められるため、不動産は登記簿謄本の記載通りに、預金は金融機関名・支店名・口座番号まで詳細に記載します。

協議書のサンプル例文

遺産分割協議書

被相続人:田中太郎(昭和30年3月15日生、令和5年10月20日死亡、最後の住所:東京都○○区○○町1-2-3)

上記被相続人の相続に関し、相続人全員で協議した結果、下記のとおり分割することに合意した。

第1条 相続人田中花子は、下記の不動産を相続する。

所在:東京都○○区○○町1丁目

地番:2番3

地目:宅地

地積:120.50平方メートル

所在:東京都○○区○○町1丁目2番地3

家屋番号:2番3

種類:居宅

構造:木造瓦葺2階建

床面積:1階65.20平方メートル、2階58.30平方メートル

第2条 相続人田中次郎は、下記の預金債権を相続する。

○○銀行△△支店 普通預金 口座番号1234567

預金残高:300万円(令和5年10月20日現在)

令和5年12月10日

相続人 田中花子 実印

住所:東京都○○区○○町1-2-3

相続人 田中次郎 実印  

住所:大阪府○○市○○町4-5-6

作成時の注意点として、相続人全員が実印で署名押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。また、財産の記載漏れがないよう、「その他一切の財産は相続人○○が相続する」という包括条項を入れることも重要です。

遺言書がある場合の特別な手続き

遺言書がある場合、基本的にはその内容に従って相続手続きを進めます。ただし、遺言書の種類や保管場所によって、必要な手続きが異なることに注意が必要です。遺言書が見つかって「これで安心」と思っても、確認すべき点がいくつかあります。

自筆証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所での「検認(けんにん)」という手続きが必要です。これは遺言書の存在と内容を確認し、偽造や変造を防ぐための手続きです。検認を受けずに遺言を執行したり、封印のある遺言書を勝手に開封すると、5万円以下の過料が科せられる可能性がありますので、必ず守るようにしましょう。

一方、公正証書遺言の場合は検認が不要で、すぐに相続手続きを開始できます。また、令和2年7月から始まった自筆証書遺言の法務局保管制度を利用した遺言書についても、検認は不要とされています。

遺言書があっても遺産分割協議が必要になるケースもあります。
例えば、遺言書で指定されていない財産がある場合や、遺言書の内容が不明確で解釈に争いがある場合です。また、相続人全員が合意すれば、遺言書の内容と異なる分割を行うことも可能です。

遺言執行者が指定されている場合は、その人が中心となって手続きを進めます。遺言執行者には相続財産の管理や各種手続きの権限があるため、他の相続人は勝手に財産を処分することができません。遺言執行者が指定されていない場合は、家庭裁判所に申し立てて選任してもらうことも可能です。

しかし、遺言書の内容に不満がある相続人がいる場合、「遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)」という制度を利用して一定の財産を取り戻すことができる場合があります。遺留分とは、配偶者や子など一定の相続人に法律上保障された最低限の相続分のことです。

相続手続きは一度行うと後から修正が困難なことが多く、法的な知識も必要とされる複雑な分野です。特に遺産分割協議や遺言書の解釈で争いが生じそうな場合、早めに弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、家族間の関係を大切にしながら、法的にも正しい形で手続きを進められます。

相続手続きの費用相場と専門家選びのコツ

身近な方を亡くされた中での相続手続きは、費用面での不安も大きいものです。自分でできることと、専門家に頼むべきことを整理して、より良い選択をしていきましょう。

自分で手続きする場合の費用・必要経費と注意点

相続手続きを自分で進める場合、主な費用は戸籍謄本や印鑑証明書などの書類取得費用です。一般的な相続では、戸籍謄本が1通450円、除籍謄本や改製原戸籍(戸籍が作り直された古い戸籍)が1通750円程度かかります。被相続人の出生から死亡までの戸籍を全て集めようとすると、本籍地の移転回数によっては10通以上必要になることもあり、書類代だけで1万円程度になることも考えられます。

その他にも、不動産の登記事項証明書が1通600円、相続税申告が必要な場合の固定資産評価証明書が1通300円程度必要です。郵送で取り寄せる場合は、小為替手数料や郵送料も別途かかるでしょう。

ただし、自分で手続きを進める際の最大のリスクは時間と労力、そして間違いによる再手続きです。例えば、相続登記では法定相続情報一覧図(相続関係を公的に証明する書類)を作成する際に、戸籍の読み取りミスや相続関係の整理ミスがあると、後から大幅な修正が必要になることがあります。平日の日中に各役所を回る必要もあるため、仕事を休んだり有給休暇を消化したりする間接的なコストも考慮する必要があるでしょう。

また、相続税の申告期限は10か月以内と決まっており、書類不備で期限を過ぎてしまうと延滞税が発生するリスクもあります。手続きに慣れていない場合、想定以上に時間がかかることが多く、結果的に専門家に依頼し直すケースも少なくありません。

司法書士・専門家に依頼する費用相場とありがちな失敗

相続手続きを専門家に依頼する場合の費用は、手続きの内容や相続財産の規模によって大きく変わります。相続登記のみを司法書士に依頼する場合、報酬は5万円から10万円程度が相場です。これに登録免許税(不動産の登記をする際に国に納める税金)や書類取得費用が別途必要になります。

相続税申告を税理士に依頼する場合は、相続財産の総額によって報酬が決まることが多く、一般的には財産総額の0.5%から1%程度が目安です。例えば、5000万円の相続財産があるケースでは、25万円から50万円程度の報酬となるでしょう。

しかし、専門家選びでよくある失敗として、「安さだけで選んでしまう」「業務範囲を十分に確認しない」といったことがあります。極端に安い報酬を提示する事務所の中には、基本的な登記手続きのみで、戸籍収集や遺産分割協議書作成を別料金にしているところもあります。結果的に追加費用が重なり、最初の見積もりより大幅に高額になってしまうケースも散見されます。

また、相続手続きには期限があるものも多いため、「手続きが遅い」「連絡が取りにくい」といった事務所を選んでしまうと、期限を過ぎてペナルティが発生するリスクもあります。特に相続税申告では、期限後申告になると延滞税だけでなく、各種特例の適用を受けられなくなる可能性もあるため注意が必要です。

専門家選びで失敗しない3つのコツ

専門家選びで最も重要なのは、「業務範囲と費用の明確化」です。相続手続きは弁護士をはじめ、司法書士、税理士、行政書士など複数の専門家が関わることがありますが、どこまでの業務を誰が担当するのか、費用の内訳はどうなっているのかを最初に明確にしてもらいましょう。見積書は必ず書面でもらい、「○○一式」といった曖昧な表記ではなく、具体的な業務内容と金額が記載されているかチェックしてみてください。

二つ目のコツは、「相続案件の実績と専門性の確認」です。同じ司法書士でも、相続登記を年に数件しか扱わない事務所と、相続専門で月に何十件も手がける事務所では、スピードや対応力に大きな差があります。ホームページで相続案件の実績を確認したり、初回相談で「年間どの程度の相続案件を扱っているか」を直接聞いてみることをおすすめします。

三つ目は、「コミュニケーションの取りやすさ」です。相続手続きでは、途中で新たな財産が見つかったり、相続人間で意見の相違が生じたりすることがあります。そうした状況変化に対応してもらうためには、連絡が取りやすく、説明が分かりやすい専門家を選ぶことが大切です。初回相談の際の対応や説明の仕方、質問に対する答え方などから、その後のやり取りがスムーズに進みそうかを判断してみてください。

無料相談のかしこい使い方

多くの司法書士事務所や税理士事務所では、初回の相談を無料で行っています。この無料相談を効果的に活用するためには、事前準備が重要です。まず、被相続人の財産や債務の概要をメモにまとめ、分からない点や不安な点を具体的にリストアップしておきましょう。

無料相談では、「自分のケースではどのような手続きが必要か」「費用の概算はいくらぐらいか」「手続きにかかる期間はどの程度か」といった基本的な情報を確認できます。また、複数の事務所に相談することで、対応の違いや費用の相場感を把握することも可能です。ただし、相談の際は守秘義務のある専門家を選び、個人情報の取り扱いについても確認しておくことが大切です。

地方自治体が開催する相続相談会や、司法書士会・税理士会の無料相談会なども積極的に活用してみてください。これらの相談会では、複数の専門家から客観的なアドバイスを受けることができます。ただし、時間が限られていることが多いため、質問を事前に整理し、重要度の高いものから聞くようにしましょう。

相続手続きは一度きりの経験になることが多く、適切な判断をするのは簡単ではありません。無料相談を通じて信頼できる専門家を見つけることで、費用面での不安を軽減しつつ、確実に手続きを進めることができます。一人で悩まず、まずは専門家に状況を整理してもらうことから始めてみることをお勧めします。

【自分で手続き vs 専門家に依頼】

項目

自分で手続きする場合

専門家に依頼する場合

費用

書類取得費・郵送費など実費のみ

専門家報酬 + 実費

時間・手間

大変かかる(平日の役所訪問、書類作成など)

大幅に削減できる

専門知識

必要(自分で調べる)

不要(専門家が対応)

正確性

ミスの可能性あり、再手続きのリスク

高い(プロが対応)

トラブル対応

自分で対応(困難な場合あり)

専門家がアドバイス・仲介

手続き完了までの期間

長くなる傾向

短縮できる傾向

 

まとめ

相続手続きは一生のうちでそう何度も経験することではありませんから、最初は戸惑ったり不安に感じたりするのは当然のことです。戸籍の取得から遺産分割協議書の作成、各種名義変更まで、やるべきことの多さに圧倒されてしまう方も少なくありません。

しかし、焦る必要はありません。相続手続きには法的な期限があるものもありますが、一つずつ順序立てて進めていけば必ず終えることができます。特に相続放棄や準確定申告のように期限が決められているものを最初に確認し、その後で時間をかけて取り組める手続きに着手するなど、計画的に進めるとよいでしょう。

手続きの過程で分からないことや判断に迷うことが出てきたら、一人で抱え込まずに専門家に相談することをおすすめします。弁護士をはじめ、司法書士や行政書士、税理士といった専門家は、それぞれの分野で豊富な経験を持っており、あなたの状況に応じた最適な進め方を提案してくれるはずです。

相談というと敷居が高く感じられるかもしれませんが、多くの専門家は初回相談を無料で行っていたり、電話での簡単な質問に答えてくれたりします。「こんなことを聞いても大丈夫だろうか」と心配する必要はありません。むしろ、早めに相談することで手続きをスムーズに進められ、結果的に時間も費用も節約できることが多いものです。

故人への思いを大切にしながら、残されたご家族が安心して次の歩みを進められるよう、スムーズに相続手続きを完了させていただければと思います。

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