相手が遺産分割調停に欠席しそう
1 非協力的な相続人がいるケースはよくある。
共同相続人の中に、遺産分割に非協力的な相続人がおり、手紙を送っても返事を貰えないというケースがあります。関心がないのか、関わり合いたくないのか、連絡をしても無視されてしまい、遺産分割を全く進めることができません。このような場合、まずは弁護士に依頼し、弁護士からその相続人に連絡を取ります。弁護士からの連絡を無視すれば、遺産分割調停などの法的手続になる可能性があるので、かえって面倒だと感じ、遺産分割協議に協力するようになる場合があります。
2 遺産分割調停の申立
弁護士に依頼して手紙を送ったり、電話をしても、無視をする相続人もいます。このような場合には、遺産分割調停の申立をします。
しかし、遺産分割調停の申立をしても、相手が欠席する場合があります。
正当な理由がないのに調停に出席しない場合、法律上は5万円の過料に命じることができるという規定がるのですが(家事事件手続法258条1項、51条3項)、実務ではこのペナルティが科されることはほとんどありません。
しかし、相手方が遺産分割調停に出席しない場合でも、遺産分割を進めることは可能です。
3 審判手続
相手が欠席し、調停が成立する見込みがない場合、家庭裁判所は調停を不成立で終了させることができます。そして、遺産分割調停が不成立になると、自動的に遺産分割審判手続に移行します。
審判手続において、家庭裁判所は、当事者の主張を考慮のうえ、遺産分割の方法について決定(審判)を出します。この審判が確定すれば、裁判所の審判に基づいて、不動産の名義の変更や預金の解約ができるようになります。
この審判の際、家庭裁判所は、当事者の主張の内容を考慮します。欠席した当事者が裁判所に何の主張書面も提出しないと、出席した当事者が提出した主張書面だけが考慮されることになるので、有利な審判をもらいやすい場合があります。
4 調停に代わる審判
調停を不成立とせずに、裁判所が、調停に代わる審判をして解決する場合もあります。家事事件手続法284条1項は、家庭裁判所が相当と認めるとき、双方の衡平及び一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のために必要な審判(調停に代わる審判といいます)をすることができると定めています。この調停に代わる審判は、2週間以内に異議がないと確定して効力を生じるので、これにより遺産分割を完了させることができます。
ただ、調停に代わる審判に対して2週間以内に異議申立があると審判の効力なくなってしまうので、裁判所は当事者の態度などを考慮して、異議がでることが想定される場合に、調停に代わる審判をしないのが普通です。
5 事務所の解決事例
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